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問診で身体症状、生活習慣を細かくチェック
心不全かどうか診断するためにはまず、問診を行います。そこでは息切れや動悸など、心不全で一般的に見られる症状がないかを確認します。また、むくみや夜間頻尿、食欲不振、倦怠感などがないかも確認しながら心不全の可能性を探ります。
さらに、身体症状だけでなく生活習慣も細かくチェックします。心不全の発症において、生活習慣は極めて重要な要素であるからです。具体的には、次のようなことを尋ねます。
●症状が出るまでにどんな食事をしていたか?
●症状が出るまでにどんな薬を飲んでいたか?
●喫煙や飲酒の習慣はあるか?
●心臓に限らず、持病はあるか?
●家族に似たような症状の人はいるか?
●どんなときに症状が起こるか、症状は一定か?
●症状はどのタイミングで悪化するか?
心不全の原因はさまざまですが、心臓病の原因となる糖尿病や高血圧などほかの疾患が隠れていることが珍しくありません。現在の健康状態を医師と共有することは、診断を下す際や治療方針を決める際にとても大切になってきます。
■意外かもしれないが…「体重の増減」も重要な診断ポイント
また、心不全が悪化すると急に体重が増えることがあります。なぜなら、心機能が低下することによって血液循環が悪くなり、尿の量が減って体内に水分が溜まるからです。
反対に、倦怠感や食欲不振が続く場合は体重が減少することもあります。体重の変化がある場合はその経過を医師へきちんと伝える必要があります。
心不全の診断に必要な検査とは?
問診に続き、聴診、胸部X線検査、心電図検査、心エコー検査、血液検査などさまざまな検査を行います。
聴診では、聴診器で心臓の音を聴き、心雑音がないか確認します。聴診器を通して聴こえる心臓の音は、Ⅰ音からⅣ音までの4種類に分類されます。
Ⅰ音は心臓の収縮が始まるタイミングで、Ⅱ音は心臓の拡張が始まるタイミングで、それぞれ弁が閉じることで聴こえる音なので問題ありませんが、Ⅲ音とⅣ音は過剰心音といい、特にⅢ音は心不全かどうかの判定にとても重要な音です。
Ⅲ音は心室が拡張する初期に血液が充満することで起こる音で、馬の駆け足音のように聴こえることからギャロップとも呼ばれます。これが聴こえると、高い確率で心不全であることが分かっています。
「胸部X線検査」では、心臓が拡大していないか、肺血管にうっ血がないか、肺に水が溜まっていないかなどを調べます。健康な人の場合、心臓の大きさは肺の大きさの50%以内であり、それより大きいと心臓の拡大が疑われます。
「心電図検査」は1903年にドイツで生まれた、非常に歴史のある検査です。心臓は電気が流れて拍動しており、その電気信号を測定し、記録したものが心電図です。これにより、心筋梗塞や不整脈などの有無が分かります。
「心エコー検査」は、超音波を胸の外から当てて心臓の動きや形状、壁の厚さ、弁の状態、ポンプ機能などを調べる検査です。高齢者に多い「収縮機能が保たれた心不全」の診断でも、とても重要な役割を果たします。
また、心不全診療では「血液検査」も重要です。血液検査でチェックする項目はいくつかありますが、特に重要なのがBNP(Brain Natriuretic Peptide:脳性ナトリウム利尿ペプチド)やNT-proBNPです。
BNPには「尿を増やす」「血管を広げる」などの作用があり、このBNPの働きにより、心臓は楽に血液を送り出せるようになって負担が減ります。しかし、心不全が進むと心臓を楽にしようとBNPが増えるため、心不全患者はBNPの数値が上昇します。
このように、「症状」「身体所見」「スクリーニング検査」を経て、心不全と診断されます【図表】。心不全の原因を明らかにするために、運動負荷試験や心臓カテーテル検査、冠動脈造影検査など、さらなる検査が必要になることもあります。
大堀 克己
社会医療法人北海道循環器病院 理事長
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