突然起こる「心不全」…「悪化する人、しない人」の分かれ目 (※写真はイメージです/PIXTA)

これまで心臓病など既往歴のなかった人が、突然心不全を起こすことがあり、これを「急性心不全」といいます。心不全は、一度発症したら完治しない病気です。悪化させないためには、どうすればよいのでしょうか? “心疾患・心臓リハビリ”の専門医・大堀克己医師が解説します。

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急性心不全の症状、慢性心不全の症状

[図表1]心不全の分類(急性、慢性)

 

急性心不全の場合はまず、短期間のうちに激しい呼吸困難や胸の痛み、動悸、咳き込みなどが現れます。それから、顔面や手足が真っ白になったり冷たくなったり、全身に冷や汗をかいたりします。

 

発作が続くとゼーゼーと苦しい息づかいになり、全身に浮腫が現れることもあります。

 

横になるとますます息が苦しくなるので、もしこうした発作が起きたら、椅子に座った姿勢を保ちます。そして、急性肺水腫やショックを起こして処置が遅れると死亡することもあるので、一刻も早く医師の治療を受ける必要があります。

 

一方、慢性心不全の場合、症状は主に(1)心臓のポンプ機能が低下したため、全身の臓器に十分な血液が流れないことから起こるものと、(2)全身の血液が心臓に戻りにくく、うっ滞することによって起こるものに分けることができます。

 

(1)の症状としては、心臓から送られる血液量が少なくなるため筋力が低下し、疲れやすくなったり、脱力感を覚えたりします。また、体の末端部分にまで血液が行きにくいため、頬、耳たぶ、手足の指先が冷たく、青白くなってきます。

 

(2)の症状としては、血液中の水分が血管から肺へ染み出すようになると、軽い運動でも息切れするようになります。また、うっ滞した静脈から水分が染み出ることでむくみが起こったり、体重が急に増えたり、睡眠中に息苦しさを感じたりします。

症状が安定していても油断禁物

これまで心臓病など既往歴のなかった人が、突然心不全を起こすことがあり、これを「急性心不全」といいます。なんらかの原因により、短期間のうちに急激な呼吸困難などの症状が現れるため、症状の度合いによっては突然死につながることもあります。

 

一方、「慢性心不全」とは文字どおり、心不全が「慢性化」した状態のことです。日常的に心臓の機能が低下していますが、動悸や息切れなどの症状は比較的安定しています。

 

しかし、安定しているからといって油断していると、突然、心不全が増悪することがあります。この状態を慢性心不全の急性増悪と呼び、これを繰り返すことによって、心機能は徐々に低下していくと考えられています。

 

図表2を見ても分かるとおり、心不全はいったん発症したら、完治することはありません。急性心不全の症状が落ちついたあとは、慢性心不全へ移行します。もちろん、その時点で生活習慣を見直したり、心不全を招くリスク要因をきちんと解決したりすることができれば、増悪することなく何年も安定した状態をキープすることができるはずです。

 

しかし、そうでなければ急激な増悪を繰り返し、やがて難治性心不全、終末期緩和医療へと移行していくのです。

 

Goodlin SJ. J Am Coll cardiol 2009:54:386-96、倉敷中央病院心臓病センターHPより一部改変
[図表2]時間の経過に伴う心不全の変化 Goodlin SJ. J Am Coll cardiol 2009:54:386-96、倉敷中央病院心臓病センターHPより一部改変

増悪を起こす人、起こさない人の違いとは?

慢性心不全に移行しても安定した状態のままキープできている人もいれば、何度も増悪を繰り返してしまう人もいます。

 

生活習慣病が原因の心不全は自己管理の優劣で再発率が異なります。これ以外の原因の心不全は自己管理だけでは防げませんが、自己管理が大切であることは押さえておくべきです。

 

つまり多くの場合、心不全は「これまでの生活習慣の集積」が大きく影響しているので、「生活習慣を改善すれば、増悪を回避することができる」のです。

 

しかし、特に男性患者の場合はそれがなかなか難しいようです。妻や母親に自分の生活を丸ごと任せ食事は気の向くまま、お酒もタバコも思いどおり、睡眠時間も不規則で仕事ではストレスだらけ、健康診断で要注意のマークが付いても面倒だからと放置している、そんな人は少なくないと思います。

 

一方、多くの女性は血圧が上がらないよう毎日の食事を工夫するなど柔軟な人が多いように思います。実際に私の病院でも、主体的に食生活や運動習慣などを見直し、自分の健康について真面目に考えようと意識を変革した人ほど治療成績が良くなっています。

 

心不全の増悪を何度も繰り返すと、やがて難治性の心不全に至ります。いってみれば、心臓のポンプ機能と代償機転(ポンプ機能を維持しようとする身体の反応)が完全に破綻してしまっている状態です。

 

さらに症状が悪化すれば、心臓移植や人工心臓による治療を行わなければ生きられなくなってしまいます。しかし現在、日本で心臓移植を行うことはとても困難です。2019年に施行された心臓移植は、わずかに84件です。2018年に比べて29件も伸びているものの、まだドナーを探すのが難しく、重症の心不全患者のすべてをまかなうことはできません。

 

心臓移植までのつなぎ役として人工心臓が用いられることもありますが、技術の進化により非常に優れた人工心臓が開発されているものの、長期間、安心して使えるようになるには、まだ多くの時間を必要とすると思います。

 

 

大堀 克己

社会医療法人北海道循環器病院 理事長

 

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社会医療法人北海道循環器病院 理事長 日本胸部外科学会指導医
日本外科学会認定医
日本医師会認定産業医

1968年、札幌医科大学胸部外科(現心臓血管外科)に所属して以来、今日まで一貫して心臓血管系と呼吸器の疾患に対する外科療法に携わり、現在はドイツのハンブルク心臓リハビリテーション協会と連携しつつ虚血性心疾患に対する心臓リハビリテーションに取り組んでいる。

著者紹介

連載心不全に負けない完全治療マニュアル

本記事は、大堀克己著『心不全と診断されたら最初に読む本』(幻冬舎MC)を抜粋・再編集したものです。

心不全と診断されたら最初に読む本

心不全と診断されたら最初に読む本

大堀 克己

幻冬舎メディアコンサルティング

心不全と診断されても諦めてはいけない! 一生「心臓機能」を維持するためのリハビリテーションと再発予防策とは? “心疾患・心臓リハビリ”の専門医が、押さえておきたい最新の治療とリハビリテーションを解説します。

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