「巷の健康情報」には誤解や嘘がたくさんある
■試す前に、一度「これは本当だろうか?」と疑問を持つことが大切
私が今回の記事で最も伝えたいことは、食材が原因で体調不良を起こす場合でも、一生それらの食材を食べられないということではないということです。正しい治療をすれば、摂取制限をしなくても体調が良くなる場合があるということ。さらに、健康な人はなおさら過度な摂取制限など必要ないということです。
食材によって体調が悪くなる人でも、原因を食材のせいにするのではなく、自身の腸内環境や消化機能、マイクロバイオータの状態が影響している可能性を考慮することが大切なのです。これまで特定の食材を食べられなかった人、食べると体調を崩していた人が、腸内の状態が整うことで食べても平気になったという例がたくさんあることを知っていただきたいと思います。
私は決して、健常人はいくら小麦やグルテンを摂っても問題ないということを言いたいのではありません。小麦には、今回触れた以外にも、プレハーベストやポストハーベスト(収穫前や収穫後の農薬散布の問題)や遺伝子組み換え小麦の問題などもあります。これらについてはきっちりとした監視や検証が必要だと思います。
ただ、いずれにしてもグルテンフリーを推奨する有名人の話や、グルテンフリーの商品を作っている会社の宣伝文句を、無批判的に信じるのではなく、自分の心の中で、「これは本当だろうか?」と疑問を持ってみることは大切だと思います。これは何も「グルテンフリー」だけに限りません。健康に関する情報の中には、たくさんの誤解や医学的根拠の乏しい嘘が混じっているということを知っていただきたいのです。
最後に、医療関係の方にお願いがあります。食材によって、私たちの健康状態が大きな影響を受ける場合があるということは、まだまだ一般の医療の世界では知られていないと思います。この記事を読んでくださった医療関係者の方が、一人でも多くこのような病態に興味を持ち、患者さんの診察に当たってくださることを心から願っています。
<参考図書>
宮澤賢史著『医者が教える「あなたのサプリが効かない理由」』(イースト・プレス、2018年7月刊行)
※前回の記事および本稿は、「健常人ではグルテンフリーを行ったほうが、長期的に考えても健康にいい」ということを示したエビデンスはないという趣旨で書かせていただいています。私が調べた限りでは、そういうエビデンスは見つけることができませんでした。
読者の中できっちりと示したエビデンスを示した研究論文を見つけられた方は、ぜひ、編集部にご一報ください。
次回は、高血糖がなぜ身体に悪いのかについて話をします。さらには、最近耳にすることが多くなってきた「血糖スパイク」や「機能性血糖調節障害(機能性低血糖症)」、「糖質制限」についても触れていく予定です。
小西 康弘
医療法人全人会 小西統合医療内科 院長
総合内科専門医、医学博士
藤井 祐介
株式会社イームス 代表取締役社長
メタジェニックス株式会社 取締役
株式会社MSS 製品開発最高責任者
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