(写真はイメージです/PIXTA)

賃貸経営において、ときに家賃滞納が発生してしまうときがあります。そもそもなぜ、家賃滞納は起きてしまうのでしょうか。不動産法務に詳しいAuthense法律事務所の森田雅也弁護士が、家賃滞納の理由と防止法、さらに万が一家賃滞納が発生してしまった時の対処法を解説します。

家賃滞納への法的手段には次の3つの方法がある

家賃滞納への法的手段としては、主に次の3つが存在します。それぞれ一長一短がありますので、不動産法務に詳しい弁護士へ相談をして最適な手段を検討しましょう。

 

少額訴訟

少額訴訟とは、60万円以下の金銭の支払を求める場合に限って利用することができる特別な訴訟手続きです。

 

1回の期日のみで審理を終えて判決をすることを原則としています。一般的にイメージする法廷などではなく、裁判官とともにラウンドテーブルに着席する形式で審理が進められます。判決書や和解調書にもとづいて、強制執行を申し立てることが可能です。

 

支払督促

支払督促とは、金銭の支払など限られた効果を求める場合に限って利用することができる簡易的な手続きです。書類審査のみであるため、訴訟の場合のように審理のために裁判所へ出向く必要はありません。

 

入居者側が支払督促を受け取って2週間以内に異議を出さず、請求に理由があると認められれば、裁判所から滞納をしている入居者に対して仮執行宣言の付いた支払督促が発せられます。賃貸物件オーナーは、この仮執行宣言付き支払督促にもとづいて強制執行の申立てをすることが可能です。

 

明け渡し訴訟

明け渡し訴訟とは、賃貸借契約の終了などを理由として、入居者に建物から立ち退いてもらうための訴訟のことです。家賃滞納によって賃貸借契約を解除したにも関わらず、入居者が部屋から出て行かないからといって、賃貸物件オーナー自らが勝手に鍵を変えたり入居者の家具を運び出したりすることはできません。

 

日本の法令では、自力救済は禁じられているためです。勝手に荷物を運び出すなどの行為をしてしまえば、むしろ賃貸物件オーナー側が損害賠償請求などにより法的責任を追求されてしまいかねません。


そのため、自ら立ち退かない入居者に出て行ってもらうためには、明け渡し訴訟を行うことが必要です。ただし、訴訟で明け渡しが命じられたからといって、すぐに強制執行ができるわけではありません。

 

訴訟で明け渡しが命じられてもなお入居者が居座る場合や、荷物を置いたまま行方不明になってしまった場合などには、裁判所に対して改めて明け渡しの強制執行を申し立てることが必要です。

 

これが認められれば、ようやく強制執行をしてもらうことが可能となります。明け渡しの強制執行までには時間がかかるため、できるだけ任意で立ち退いてもらうよう交渉しましょう。

 

◆まとめ

家賃滞納は、賃貸物件オーナーにとって非常に悩ましい問題です。
できる限りの予防策を講じ、家賃滞納が起きないように対策をしておきましょう。また、家賃滞納が生じてしまった際には、できるだけ早期に対応をすることが重要です。

 

森田 雅也

Authense法律事務所 弁護士
 

 

 

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本記事はAuthense不動産法務のブログ・コラムを転載したものです。

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