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FRBの選択は「売却」か「償還」か
米連邦準備制度理事会(FRB)は、5月に量的引き締め(QT)を開始する見込みです。
QTのスケジュールについて、FRBは当面、保有する米国債とMBS(住宅ローン担保証券)の売却は行わず、満期償還や繰り上げ償還に任せる方針です。「今回は、金融市場で資産を売却するわけではないから、影響はない」というわけではありません。
米連邦政府は財政赤字です。すなわち、今年の歳出を執行するための歳入(おもに税収)が足りないため、差額は新規国債の発行でまかないます。まして、過去に発行した国債の満期償還分をまかなうお金はないので、その分は借り換え国債を発行することで、返済を「先延ばし」にするしかありません。
FRBの保有分が満期償還されると、借り換え国債が発行され、それは金融市場で消化される必要があります(→いままではFRBが、保有資産の残高を維持するために買い入れてきました)。借り換え国債の発行年限はおおむね現状並みです。
まとめると、
A.FRBが「売却」を選択する場合、保有債券の残存年限ごとにまんべんなく売却していきます。
B.FRBが「償還」を選択する場合、財務省が各年限でまんべんなく借り換え国債を発行していきます。
ですから、どちらでも効果は同じです。
逆イールドの解消は「安心材料」か
FRBによるQT開始は、6日の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨公表で確認されました。長めの金利が大幅に上昇し、先週検討した「2年-10年金利差」は再びプラスに戻っています。とはいえ、安心とはいきません。
なぜなら、長めの金利が上昇して「逆イールド」が解消している背景は、「景気がさらによくなる」との見通しからきているわけではなく、「金融引き締めが前倒しされる」or「債券市場の需給が緩む」との見通しがあるためです。すなわち、「逆イールドの解消は、(長短金利両方からの)引き締め強化」を意味します。
債券市場の需給が緩むと、①金利が上昇することで、もしくは②資産市場全体の需給が緩むことで、リスク資産のバリュエーションが低下します。実際、それこそが現実に起きていることであり、「逆イールド解消に対する金融市場の反応」です。