(※写真はイメージです/PIXTA)

本記事は、フィデリティ投信株式会社が提供するマーケット情報『マーケットを語らず』から転載したものです。※いかなる目的であれ、当資料の一部又は全部の無断での使用・複製は固くお断りいたします。

【関連記事】25年間の慢性デフレの正体…誰が日本の経済成長を止めたのか

FRBの選択は「売却」か「償還」か

米連邦準備制度理事会(FRB)は、5月に量的引き締め(QT)を開始する見込みです。

 

QTのスケジュールについて、FRBは当面、保有する米国債とMBS(住宅ローン担保証券)の売却は行わず、満期償還や繰り上げ償還に任せる方針です。「今回は、金融市場で資産を売却するわけではないから、影響はない」というわけではありません。

 

米連邦政府は財政赤字です。すなわち、今年の歳出を執行するための歳入(おもに税収)が足りないため、差額は新規国債の発行でまかないます。まして、過去に発行した国債の満期償還分をまかなうお金はないので、その分は借り換え国債を発行することで、返済を「先延ばし」にするしかありません。

 

FRBの保有分が満期償還されると、借り換え国債が発行され、それは金融市場で消化される必要があります(→いままではFRBが、保有資産の残高を維持するために買い入れてきました)。借り換え国債の発行年限はおおむね現状並みです。

 

まとめると、

 

A.FRBが「売却」を選択する場合、保有債券の残存年限ごとにまんべんなく売却していきます。

B.FRBが「償還」を選択する場合、財務省が各年限でまんべんなく借り換え国債を発行していきます。

 

ですから、どちらでも効果は同じです。

 

[図表1]財務省とFRBを合わせた国債の純供給金額(青とオレンジのネット合計値)
[図表1]財務省とFRBを合わせた国債の純供給金額(青とオレンジのネット合計値)

逆イールドの解消は「安心材料」か

FRBによるQT開始は、6日の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨公表で確認されました。長めの金利が大幅に上昇し、先週検討した「2年-10年金利差」は再びプラスに戻っています。とはいえ、安心とはいきません。

 

なぜなら、長めの金利が上昇して「逆イールド」が解消している背景は、「景気がさらによくなる」との見通しからきているわけではなく、「金融引き締めが前倒しされる」or「債券市場の需給が緩む」との見通しがあるためです。すなわち、「逆イールドの解消は、(長短金利両方からの)引き締め強化」を意味します。

 

債券市場の需給が緩むと、①金利が上昇することで、もしくは②資産市場全体の需給が緩むことで、リスク資産のバリュエーションが低下します。実際、それこそが現実に起きていることであり、「逆イールド解消に対する金融市場の反応」です。

 

次ページ難しいのは、インフレが読めないこと

【ご注意】
•当資料は、情報提供を目的としたものであり、ファンドの推奨(有価証券の勧誘)を目的としたものではありません。
•当資料は、信頼できる情報をもとにフィデリティ投信が作成しておりますが、その正確性・完全性について当社が責任を負うものではありません。
•当資料に記載の情報は、作成時点のものであり、市場の環境やその他の状況によって予告なく変更することがあります。また、いずれも将来の傾向、数値、運用成果等を保証もしくは示唆するものではありません。
•当資料にかかわる一切の権利は引用部分を除き作成者に属し、いかなる目的であれ当資料の一部又は全部の無断での使用・複製は固くお断りいたします。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録