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Uターン転職で最も多くがつまずく転職先探し
■「どうせ地元にキャリアを活かせる仕事なんてない」から転職活動が始まる
Uターン転職で最もつまずく人が多いのが「情報収集」や「企業選定」のステップです。転職活動の入口でつまずくと先に進めないため、まずはここをクリアする必要があります。
そもそも地方に転職する人たちの意識の根底に、「地元に期待していない」というのがあります。どうせ自分のキャリアを活かせる求人なんてないという諦めモードからスタートする人が多いのです。
もっと率直にいうと、都会でバリバリ仕事をして人からも頼られるポジションにいた人にとって、地元にはまともな仕事が一つもないというのが正直なイメージです。
私も転職セミナーなどで参加者に、「あなたの地元で知っている企業を10社挙げてみてください」といった問い掛けをすることがありますが、たいてい有名どころの企業が数社挙がって終わりです。中小企業になると絶望的な認知度です。
例えば、東京で出版社に勤めていた編集者が故郷にUターン転職しようとする場合に、名前を挙げることができる出版社は多くありません。地方でも活躍している出版社はありますが、まず会社名を知りません。それに、「飲食店のクーポン雑誌やタウン情報誌を作っている零細企業」といった認識で、広告を取って来るのが主だろうから自分がやりたい仕事ではないと思ってしまいます。
自分の今の仕事や経験をそのまま活かせる職種をUターン先でも探そうとするので、求人はなかなか見つかりません。そのため、どうせ地元に自分の仕事なんてないと悲観的になってしまうのです。
■地方企業の求人票は大手転職サイトには集まりにくい
自分のキャリアを活かせる仕事がないという問題は、大手の転職サイトしか利用していない人に起こりがちです。
「地方×転職」「県名×転職」のキーワードで検索して求人サイトを上から見ていき、求人情報が多く集まっていそうな有名どころのサイトに会員登録して条件検索をしてみるというのがおおよその流れです。
しかしながら、大手の転職サイトは30代からのUターン転職にはあまり向いていません。
大手転職サイトの情報提供の方法は、全国にいるクライアント企業から上がってくる求人票を集めて、サイトに掲載するという仕組みになっています。当然、掲載料を多く払ってくれる企業や人気の高い有名企業や一流企業、全国に支店があって大量募集をする企業などの求人票を大きく扱うことになり、小さな企業の求人は埋もれてしまいます。
地方企業のほうでも大手サイトに掲載するには費用面の負担が大きく、掲載しても応募が来ないなどの空振り感があってなかなか利用できないという事情があります。
つまり大手サイトに地方企業の求人情報がないわけではないのですが、母数がかなり少なくなってしまうのです。
さらに、大手は基本的に年収、勤務地、雇用形態などの条件でしかマッチングしません。会員が入力した条件と外れているものは自動的に候補から外されてしまうため、たくさんの候補のなかから少数を絞り込むには便利です。しかし、候補の母数がもともと少ないなかで、さらに振り落とされていくと、検索結果がゼロ件になってしまうことも出てくるのです。
大手の一社がだめでもほかの大手なら違う求人票があるかもしれないと期待して、複数のサイトに登録する人は一定数います。しかし、どこも仕組みが同じで、出てくる情報もよく似ています。
大手の転職エージェントはどうかというと、確かにサイトには出ない非公開の求人情報ももっています。また、求職者の条件に合わせて詳細な検索もしてくれます。しかしながら、基本的に大都市圏にあるエージェントは扱っている求人票も大都市圏の企業のものが多いため、地方への転職は手薄になってしまいます。
今都内で働いていて、同じ都内で転職したい人と地方へ転職したい人、どちらが多いかといえば圧倒的に前者が多くなります。転職エージェントもニーズの高いほうに力を入れますから、どうしても地方の転職相談は難しくなってしまうのです。
こうした背景を知らないと、転職先が見つけられない場合、「これだけ情報が集まっている大手で探して全滅なら、これ以上探しても無駄だろう」「やっぱり地元には働き口がないんだ」と思って諦めてしまうケースが多いのです。