大手ではなく、中小の地元転職サイトを探せ
■大手の地方支社だからといってUターン転職に強いとは限らない
大手転職エージェントには地方支社をおいているところもあります。そういう大手の地方支社なら地元の転職に強いかというと、そうともいえません。求人情報は東京本社で集めたものが地方にも供給されるので、扱っている情報は基本的にあまり変わらないからです。
どちらかというと、県内で紹介できるのはこれだけだが都内なら年収アップができるところも多いとか、新幹線であれば通勤も可能などと言われてしまうことが多いです。
東京は雇用のマーケット自体が巨大で人材を惹きつける磁力が強いので、おのずとそういう話の方向になってしまいます。
そもそも都内の転職なら年収800万円の人が900万円や1000万円に昇給する転職先も複数あります。エージェントは転職が成功すれば年収の30%を報酬として受け取れるので、900万円の転職を成立させれば270万円の売上になります。
一方、地方への転職では年収が下がることもあるので、仮に600万円のところに転職をさせたら報酬は180万円です。経済合理性を考えたときに、都内の企業と地方の企業のどちらに力点をおいて紹介したくなるかは明らかです。
これは大手が利益主義だからだめという話では全然なく、そういうビジネスモデルなのです。大手が提供する転職サービスのおかげで、多くの転職希望者が迅速かつグローバルに職探しをすることができます。
大手には大手の良さがあり、地方の小さなエージェントにはそれなりの良さがあります。要は目的に応じて使い分けることが大事だという話です。
■地元特化型の転職エージェントにはお宝が眠っている
大手転職エージェントの強みが、情報量が多いため大都市での職探しが効率的にできる点なら、地方の小さなエージェントの強みは地元に特化した職探しができる点と、地元に眠っている求人ニーズを掘り起こすことができる点です。
地元に特化しているというのは、地元の求人票を多く扱っているという意味です。私の会社の場合でいうと、クライアント企業の9割が地元に本社をおいています。全国的な知名度はなくても、知る人ぞ知る優良企業も少なくありません。
眠っている求人ニーズを掘り起こすというのは、表には出てこないけれども潜在的にある求人を見つけて来ることです。キャリアコンサルタントが地元の企業を1件ずつ回って、どこの会社がどういう人材を欲しがっているかをリサーチします。あるいは「こういう人材がUターンしたがっているのですが、御社ではお役に立てませんか?」というように採用をもちかけて、雇用そのものを創り出すこともあります。
地方の中小企業では常に人手が足りないのですが、それが常態化していることもあって求人票を出していないところも実は多いのです。仕事が回らないほどの人材不足なら当然求人票を出しますが、今のところなんとか回ってはいるので求人票までは出していないことのほか、出したものの応募がないというケースもたくさんあります。
そういうところの社長に話を聞くと、良い人材がいたらいつでも採用したいのでうちの会社に合いそうな人がいたら紹介してほしいといった、ざっくりとした希望を言われる場合が多々あります。そうした眠っているニーズを掘り起こすのが、地方特化型エージェントの得意分野です。
地方の小さなエージェントがどこも私の会社と同じやり方をしているかは分かりませんが、Uターン転職に実績のあるエージェントなら、おおむねこれに近いやり方をしているところが多いのではないかと思います。
このように、実は大手には出ない求人というのが地元にはたくさん埋まっているのです。「大手を探したのにない」のではなく、「大手しか探さないから(本当はあるのに)ない」というのが真実です。
江口 勝彦
株式会社エンリージョン 代表取締役
キャリアコンサルタント