(※写真はイメージです/PIXTA)

出会いの場の多様化などの理由から近年減少傾向にある職場結婚。とはいえ、ひと昔前までは「お膳立て」があるなど、割と多いケースでした。職場結婚は共通の話題や価値観を持ちやすく、理解し合えるパートナーとして良い面も多くありますが、老後においては特有のリスクも……。本記事では、井田さん(仮名)の事例とともに、「実家」を火種とした相続トラブルについてFP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が解説します。

職場結婚、世帯年収2,000万円超の夫婦

井田義男さん(仮名/65歳男性)は都内で長年住んだマンションで妻の聖子さん(仮名/65歳)と暮らしています。井田さん夫婦は中堅の建築会社の営業職としてともに働いており、20代のころに職場で出会い結婚しました。2人とも営業成績は上位のほうで、現役のころの世帯年収は2,000万円を超え。

 

50代半ばで3人の子供たちは全員独立。夫婦は子育てから解放され、これまで子供たちの教育費等で支出を制限していた分、日々の生活で少しだけ贅沢を楽しむように。子供たちが独立したのにあまりお金が貯まらない状態ではありましたが、「2人分の退職金が入るし……」と楽観的に考えていました。

 

しかし、それから月日が流れて63歳の定年まであと1年とちょっとというタイミングで、大事件が起きてしまったのです。

勤務先の倒産

井田さん夫婦は60歳を過ぎたころには管理職になっていて、井田さんは営業マンのマネジメントを、聖子さんは不動産事業のマネージャーになっていました。

 

そんなある日、出勤すると会社のドアの前には社員が集まり、なにやら騒がしい様子でした。

 

「何事だ?」井田さんが集まっている社員に尋ねると、社員からは張り紙を見るようにいわれました。

 

すると、張り紙には「会社の倒産」という信じがたい言葉が……。その後、総務担当からこれまで働いた賃金を支払う旨と、失業給付についての説明があり、収入は減ってしまうものの定年退職までは失業給付を受けることができると知り、ひとまずは安堵。しかし、老後の資金にとアテにしていた退職金3,000万円は受け取れないことに。

 

急いで節約を試みるも、現役時代から続いた支出のペース、特に固定費を抑えることがなかなかできません。もともと2人で高い収入を得ていた時期ですら都内で子ども3人を大学まで学費を支払い続けてきたことから、ほとんど貯蓄ができない状態でした。失業給付を受けて収入が減ってしまうと状況はより深刻に。日々の支払いが足りないときには、クレジットカードの分割払いを多用するようになってしまったのです。

 

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