(※写真はイメージです/PIXTA)

中小企業庁の『事業承継マニュアル』によれば、廃業を予定している中小企業のうち、約3割は廃業の理由に「後継者の確保が難しい」を挙げています。事業承継のトレンドが「親族内承継」から「第三者承継」へとシフトしつつある今、社外で後継者を確保し、スムーズに事業承継を行うためのポイントを見ていきましょう。

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近年「第三者承継」が増えつつあるが…

中小企業オーナーにとって後継者探しは頭の痛い問題です。日本では昔から親族内承継が当たり前で、それができなくても社内承継で何とか事業を続けて来られました。そのため社外に承継するという考え方そのものが日本では馴染みが薄く、オーナーと社外の後継者候補を結びつけるサービスがまだ十分には整備されていません。

 

とはいえ行政も事業承継に力を入れており、20年前よりも相談先は増えてきています。また、民間のサービスも少しずつできてきました。コロナ禍をきっかけに優秀な人材が地方にUターンで戻ってくる事例も増えており、後継者のいない中小企業が外部招聘で事業承継をするのに有利な潮流が来ています。

 

■社外で後継者候補を探す方法

後継者探しの相談先や出会いの場には、さまざまなものがあります。

 

●各都道府県・各地区の商工会議所

⇒中小企業のオーナーにとって最も身近な相談先の一つです。事業承継のセミナーや診断を行って、必要な専門家を紹介・斡旋してくれます。後継者探しの相談にも乗ってくれます。

 

●各都道府県の事業引継ぎセンター

⇒センター内にある後継者人材バンクに登録することで、後継者を探している企業と後継者候補とのマッチングをサポートしています。

 

●金融機関

⇒メガバンクや都市銀行は大手企業に対応していることが多いですが、地方銀行は中小企業の相談にも対応しています。

 

●弁護士、税理士、公認会計士など

⇒事業承継を専門にしている士業は、他の士業とのネットワークを使って後継者探しをサポートしてくれます。

 

●後継者の人材紹介サービス

⇒経営経験のある人材や経営者教育を受けた人材を、中小企業の後継者として紹介する人材紹介サービスがあります。

 

●後継者の募集サイト

⇒経営者になりたい人たちが利用する転職サイトがあります。大手ではリクルートやリクナビなどが提供しています。それ以外の転職サイトでも募集条件を後継者向けにすることで、後継者の募集ができます。

 

●後継者を育てるスクールなど

⇒後継者候補が多く集まるプラットフォームとして、起業したい人を対象とした経営塾や後継者育成用のスクールなど民間の団体がいくつかあります。

 

●異業種交流会

⇒経営者、起業を目指す人、ビジネスチャンスを広げたい人、大学生など様々な人が集まる異業種交流会が盛んに行われています。若手経営者や後継者候補が集まる交流会や就農したい若者が集う交流会などもあります。

 

●SNSでの情報発信

⇒インターネットやスマートフォンが普及する前は、社外で後継者探しをしようと思うと、人材紹介サービスや身近な人の紹介くらいしか方法がありませんでしたが、今はインターネットが普及したことで出会いのチャンスが増えています。SNSを活用して自社の情報や「こんな後継者に来てほしい」などのメッセージを発信するのも出会いのチャンスを広げるのに役立ちます。

後継者を探すには、理念や熱意を語るのが効果的

事業承継をする前に、会社の業績を少しでも良くしてから後継者に渡したいと仰る社長がいますが、実際のところ難しいと思います。これまで十分に頑張ってきた結果が今なので、気力体力も落ちて来る中で業績を改善するというのは現実的でありません。

 

それよりも「今のままでも継ぎたい」と言ってくれる相手を探すほうが話が早いです。赤字でもいいと言ってもらうためには、オーナーがしっかり自社の魅力を発信することが大切です。

 

SNSや交流会など後継者探しの場に出ていき、事業に対する熱い想いを語ると効果的です。

 

今の会社をなぜ興したのか、どんな思いで事業を行ってきたのか、これから会社がどうなってほしいのかなどを語ることで「この会社、素敵だな」「この社長、いいな」と思ってもらえます。

 

交流会やSNSで知り合った人が後継者候補を紹介してくれることもあるかもしれません。特にSNSがもつ情報発信力は絶大です。世界中に向けて無料で発信でき、人々の目に留まれば、あっという間に拡散していきます。

 

事業承継の相談先でもアピールすればビジネスライクな相談員でも心が動くはずです。「この会社は他とは違う」「この社長の力になりたい」と思ってもらえれば勝ちです。

 

「語ることがない」と思うかもしれませんが決してそんなことはありません。30年40年と続いてきた会社は、オーナーや先代、従業員など様々な人の想いが詰まっています。事業がうまく行かなかったとき、どうやって乗り越えたのかなどのドラマがきっとあるはずです。

 

そもそもお金儲けのために作った会社は長続きしないものです。歴史のある会社は社会的役割も果たし、多くの人に愛されてきたことは間違いありません。熱く思いの丈を語ることで共鳴してくれる人が増えていきます。

 

 

宮部 康弘

株式会社南星 代表取締役社長

 

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※本連載は、宮部康弘氏の著書『オーナー社長の最強引退術』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

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宮部 康弘

幻冬舎メディアコンサルティング

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