(※写真はイメージです/PIXTA)

健診結果で必ずチェックすべきは「有所見率」です。なんらかの所見(異常や疑い)が見つかった社員がどれくらいいるかを表す数値です。各検査項目で平均と比べて有所見率が高いところが、その職場の健康リスクです。産業医の富田崇由氏がコストゼロからできる健康経営について解説します。

健診後の「事後措置」のやり方

ケース③ 胸部X線の有所見率が高い

胸部X線でわかるのは肺がん、結核、肺炎、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの肺や気管などの呼吸器の異常です。喫煙との関連が深く、喫煙本数の多い人、喫煙歴の長い人ほど発症の可能性は高くなります。やはりいちばんの対策は禁煙です。喫煙は肺がんだけでなく多くのがんや、脳・心臓疾患のリスクを上昇させるため、職場での禁煙や分煙、受動喫煙対策はしっかりと行う必要があります。

 

また胸部X線では、心肥大や胸部大動脈瘤などの異常(疑い)がわかることもあります。命に関わることもある症状ですので、異常所見のあった人には必ず二次検査を受けてもらうようにします。心臓の働きが大きく低下しているときは、医師の指示により、運転や心身の負荷が高い業務をできないこともあります。

 

ケース④ 貧血検査の有所見率が高い

貧血検査で異常を指摘される人も、わずかですが増加傾向にあります。働く女性が増え、過多月経や子宮内膜症などの婦人科疾患が貧血の原因になっている可能性があります。保育施設や美容室などの女性が多い職場では、月経や婦人科の不調が多いと体調不良による欠勤や早退が増えます。貧血が重症になると、めまいによる事故やけがのリスクも高まります。貧血がある場合は内科や婦人科を受診して必要な治療を受けるように促すことが大切です。

 

ケース⑤ 聴力・視力の有所見率が高い

聴力の検査は、業務に基づく騒音性の難聴や加齢による難聴がないかどうかを調べます。私の経験でも常時大きい音がしているプレス工場で、従業員の聴力低下が進んでいた例がありました。騒音対策で耳栓をつけるのが規則でしたが、長時間つけていると耳が痛くなるとのことで、外してしまっている人が多いのが原因でした。長時間装着しても耳が痛くならないイヤーマフに変更するなど、無理なく継続できる対策を考えていくことが重要です。

 

加齢性の難聴では、聞こえづらいことで業務上のミスやトラブルが増える、本人の意欲や認知機能の低下が進みやすいといったことが課題になります。必要なときには補聴器の使用を検討してもらうのも一つの選択肢です。

 

視力検査で視力低下が急に進んでいるときは、パソコンなどのディスプレイに向かう場所や姿勢、作業する部屋の照明の明るさといった作業環境面にも問題がないか、点検が必要です。

 

■健診後の「事後措置」は、医師や保健師の協力も得て行う

 

健診後のデータ集計、結果分析と併せて行うものが⑥事後措置です。

 

事後措置とは厳密にいえば健診結果と医師の意見や指導をもとに、業務内容や労働時間
が適切か、治療・療養のために休職が必要かといったことを判断し、就業上の措置を行う
ことです。

 

健診結果が届いたあと会社としてすべきことは、判定がC(要再検査・生活改善)やD
(要精密検査・治療)の人にできるだけ早く受診をするように促すことです。

 

血圧と血中脂質、血糖検査、腹囲(またはBMI)のすべてに異常があった人が再検
査・精密検査をするときは、労災保険の二次健康診断等給付が受けられます。これは雇用
保険・労災保険に加入している会社であれば申請ができます。会社を通じて申請をする
と、条件に当てはまる社員は労災病院や指定の医療機関で、無料で二次健康診断を受ける
ことができます。労災保険からの給付ですから、会社の費用負担もありません。

 

この給付では、特定保健指導(栄養指導、運動指導、生活指導)も受けられます。A
(異常なし)の人は対象にはなりませんが、B(軽度異常)も含めて所定の検査項目で異
常があった人は利用できますから、このような公的なサポートを積極的に活用していくこ
とができます。

 

事後措置のなかでも就業上の措置が必要かどうかという部分は、医師による判断が必要
になります。産業医を選任している職場であれば産業医が判断することになりますが、選
任していない小規模事業所でも、定期健診を受けた医療機関の担当医師に相談をしてみた
り、あるいは、すでに治療中の社員であれば本人の許可を得て主治医に相談したりする方
法などが考えられます。

 

また現在は、従業員50人未満の小規模事業所の産業保健をサポートする「地域産業保健
センター」が全国各地に設置されています。ここでは産業医や保健師に原則として無料で
相談ができます。定期健診後の就業上の措置のほか、長時間労働者の面接指導や保健指導
などについても相談できますから、こうした外部資源を活用することもできます。

 

富田 崇由

セイルズ産業医事務所

 

 

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※本連載は、富田崇由氏の著書『コストゼロで作る小さな会社の健康な職場』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

コストゼロでつくる小さな会社の健康な職場

コストゼロでつくる小さな会社の健康な職場

富田 崇由

幻冬舎メディアコンサルティング

働く人の健康問題に注目が集まっていますが、組織として健康増進に取り組んでいる企業は多くありません。 「健康経営」や「従業員の健康づくり」は必ずしも産業医がいなければできないものではなく、小さな会社でもコストを掛…

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