(※写真はイメージです/PIXTA)

近年、専門的な技術や知識を持つ外国籍の人々は高度人材と呼ばれ、政府の出入国在留管理でも受け入れを促進する施策を行っています。しかし、決して多くの高度人材が定着しているとは言えない現実があります。それはなぜでしょうか。渡瀬裕哉氏が著書『無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス)で解説します。

シリコンバレーは外国人を積極活用

これは日本にやって来る外国の人たちの身になって考えてみると分かります。たとえば、私たちがまったくの異国の地に住んだとしましょう。食文化や生活習慣の違いはすぐに思いつくことですが、何よりも一番不安なのは、病気になったときのことです。

 

現地で病気になり、現地の医療機関を受診しなければならなくなったとき、現地の医者に現地の言語で自分の病状を説明することはなかなか難しいものです。英語が通じればまだしも、それも難しい環境であったら、仮に給料が高くても現地に住みたいと思うかどうか。

 

日本の今の医療環境は、外国人にとってこうした状況にあります。外国の医科大学や医学部を卒業した人が日本の医師免許を取得するための制度はもちろんあります。順天堂大学のように「国際医療人養成プログラム」を設け、日本国内の医療ニーズに対応できる外国人医師の日本の医師免許取得支援や、逆に国際的な共同研究に対応できる日本人医師の育成を行っている教育機関もあります。

 

厚生労働省が行っている審査では日本語能力も審査要件となっており、日本の医師免許を取る外国人は、日本人を診療するものだという前提です。

 

そうした取り組み以外にも、できることがあります。日本の医療が高い水準にあることは外国でも知られている事実ですが、それと受診者の不安は別です。現地の医師しかおらず現地語しか通じないことを、自身の身に引きつけて考えれば分かります。

 

規制緩和のひとつの要件として、外国人の医師が外国の人に向けて医療サービスを提供するなど細かな工夫の余地があるのです。工夫を阻害しているのが業界を守るための規制である場合は特に、細かなことひとつひとつに目配りして環境を整えることなしに、優れた人材は日本に入って来ないのです。

 

その前提として、なぜ外国人の人材を受け入れなくてはいけないのかと思う人もいるでしょう。外国人人材の受け入れに対する日本人の一般的なイメージは、少し時代遅れなところがあります。「外国人を受け入れ=単純労働者として受け入れ」というイメージです。給料の高い仕事には日本人が就き、言葉の問題がある(であろう)外国人は単純労働者という固定観念です。いわゆるホワイトカラーとブルーカラーのイメージです。

 

今は異なるスタイルが主流となっています。たとえば、アメリカのシリコンバレーでは、本当に付加価値の高い商品やサービスを作っている人たちは、実は外国の人材です。ところが優れた技術者がいるからといって、それだけでサービスや産業が成り立つわけではありません。そこで彼らを支えるホワイトカラーの人たちが必要となるのです。具体的には、法務や広報などの分野で、国や地域によってローカルな慣習や運用のある部分です。シリコンバレーでは、この部分をアメリカ人が担います。

 

誤解を恐れずに分かりやすく言えば、高度人材を活用するのは鵜匠のようなものです。魚を上手に獲ってきてくれるような鵜を雇い、環境を整えて働いてもらう。その手綱を握るのが有権者である国民です。高度人材に高い給料を払ったとしても、良いサービスを作り、全世界に通用するビジネスを起こしてもらうのですから、彼らを支える良い環境やサービスを国民が提供し、ビジネスが生み出す富や雇用を享受するという、ある種の割り切りもあります。

 

その一方で、シリコンバレーの例に見るように、日本国民にしかできない仕事というのもあるのです。

 

これは同時に、日本国内でも雇用やビジネスの慣習に変化をもたらすことが考えられます。年功序列や年次で評価する給与体系から、仕事に応じた正当な給料が払われるジョブ型雇用への変化です。求められている分野で必要とされるサービスが提供できるのかが重要であって、その組織に何年いるのかに関係なく若手の優秀な人材には、どんどん仕事に見合う給料を支払っていくのは当たり前のことなのです。

 

次ページ日本人もまた国際社会と伍して戦う

※本連載は渡瀬裕哉氏の著書『無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス)から一部を抜粋し、再編集したものです。

無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和

無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和

渡瀬 裕哉

ワニブックス

現在の日本の政治や経済のムードを変えていくにはどうしたらよいのでしょうか。 タックスペイヤー(納税者)やリスクを取って挑戦する人を大事にする政治を作っていくことが求められているといいいます。 本書には「世の中に…

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