(※写真はイメージです/PIXTA)

ある日、家族を突然の不幸が襲います。働き盛りの夫が急死し、残されたのは妻と小学生の子どもがひとり…。未成年の子を含む遺産相続の手続きは、どのように行うことになるのでしょうか。多数の相続問題の解決の実績を持つ司法書士の近藤崇氏が解説します。

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相続人は妻と未成年の子、遺産分割の方法がわからない

 相談内容 

 

横浜市在住の専業主婦です。先日夫が急死し、相続が発生しました。

 

相続人は妻である私と、小学生で10歳の子どもの2人です。

 

相続人に未成年が含まれる相続では、どのような手続きが必要になるのでしょうか?

家庭裁判所に「特別代理人」を申し立てる

 回 答 

 

相続人に未成年者が含まれる場合、未成年者の代理人として「特別代理人」が遺産分割協議を行うことになります。

 

ただし実際には、特別代理人の選任を管轄する家庭裁判所申し立てる際、遺産分割協議書のドラフト案も一緒に送ります。

 

そのため実際には、あらかじめ予定した内容をもとに、特別代理人が遺産分割協議書に捺印するケースが多いのです。

 

そもそも、これらの遺産分割協議書では、未成年者に不利益な遺産分割協議を成立させることはむずかしくなります。

 

しかし、被相続人の相続財産が、被相続人所有や、配偶者と共有の自宅不動産しかない場合は、未成年の子どもが実際に不動産管理を行うのは不可能であり、相続財産である自宅不動産を親権者である配偶者に相続させるほうがよい場合もあります。

 

そういったケースにおいては、家庭裁判所への申立書や別紙に「子供の養護養育などのため、すべてを配偶者に相続させる」といった記載を付し、家庭裁判所に申し立てることもあります。

 

上記のような場合、遺産分割協議書には、相続人全員が署名・押印し、印鑑証明書を添付する必要があります。未成年者については特別代理人が署名・押印し、印鑑証明書も特別代理人のものを添付することになります。

 

◆遺産分割協議書における「特別代理人」の選任とは?

遺産分割協議では、親権者も遺産分割協議書に参加することが多くあります。今回の事例のように、父親が亡くなり、母親と子ども1名(未成年)が相続人となるといったケースです。その場合、母と子どもは「利益相反」となります。

 

未成年者のための特別代理人選任が必要となるのは、親権者・未成年者ともに相続人であるようなケースです。

 

母親が子どもを代理した場合、未成年の子と親権者の母で遺産分割協議を行うものの、実質は母親1人で実施されると想定されるため、子どもと母親の利益が相反する利益相反行為と見なされます。

 

そのため、母に代わる未成年の特別代理人の選任を、家庭裁判所へ申し立てることになります。

 

特別代理人は恒久的に付くものでなく、遺産分割協議書のみに対しての、いわゆるピンチヒッター的な存在です。弁護士や司法書士等の専門職が就く場合もありますし、たとえば親権者である母親の父母(子どもの祖父母)、あるいは子どものおじおば等がなる場合もあります。

 

特別代理人を選任する際は、一般的な戸籍等のほか、上述したように遺産分割協議書の原案を添付する事がしばしばあります。

 

子どもが幼い場合、すべて親権者の母にするような遺産分割協議書を添付することも多く、これは裁判所から「待った」がかかることがあります。特別代理人はあくまで「子の利益」を守るためのもので、母と子ども1名(未成年)の遺産分割協議書の場合、母と子ども1名(未成年)で等分にすることを求められるケースが多いのです。

 

ただし、財産構成がほぼ不動産のみといった場合は、不動産は母親名義とし、その半額にあたる対価を子に代償金として支払うとした遺産分割協議書の作成例も散見されます。

 

子どもが5歳未満と幼く、実質的にお金の管理が無理なため、母が全財産を取得する代わり、子どもの教育や福祉、養育に全責任をもって使うということを誓約し、「全財産を母親に」とした遺産分割協議書を作成し、特別代理人として選任してもらった例もあります。

 

というのも、相続税がかかる場合、配偶者である母親(故人の妻)は1億6000万円まで非課税で相続財産を取得できるのに対し、子どもが相続した金銭対価(代償金など)については、課税されることもありますので(逆に、未成年者控除もあります。『国税庁:No.4164 未成年者の税額控除』参照)、相続税の状況から推察すると、すべて母親が相続したほうがいいケースもあるからです。

 

 

近藤 崇
司法書士法人近藤事務所 代表司法書士

 

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本記事は、司法書士法人 近藤事務所が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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