飯田屋の目的は目の前のお客様を喜ばせること。

多くの企業では従業員に実力より高い目標を与え、能力を上げながら売上を伸ばそうとします。しかし、ときとして売上目標は目の前のお客様に真摯になれない一瞬を生みます。なぜ売り上げ目標をやめたら売上が3倍増、客単価は2倍になったのでしょうか。飯田屋6代目店主が著書『浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟』(プレジデント社)で解説します。

そもそも「小さい」ことは弱みではない

小さい店にコンプレックスを感じることもやめました。

 

かっぱ橋道具街には飯田屋より大きな店はいくらでもあり、何をしても勝てないと以前は思っていました。飯田屋の弱さは「狭いから」「商品数が少ないから」と、自分の未熟さや知識不足には目をつぶって、店が物理的に小さいことにすべての責任をなすりつけていたのです。

 

しかし、今は小さくてよかったと心から思うのです。

 

小さいからこそ、店内を見渡すのに多くの時間がかかりません。もし、大規模店であったら見るのも億劫で、すぐに店を出てしまうかもしれません。

 

小さいからこそ、多くのお客様が入店できません。だから、少人数でも運営できます。小さいからこそ、入店されるお客様の数も限られます。20名も入ろうものなら大混雑して通路が歩けなくなるほどですから、一人ひとりに濃度の高い接客ができます。もし大規模店であったら、僕の意見を従業員に伝えるのも一苦労でしょう。

 

小さいからこそ、僕たちが大切に思うことを大切にできます。店を大きくすれば、料理道具以外もたくさん扱えるかもしれません。しかし、「料理道具も、扱っている」と「料理道具だけを扱っている」では、まったく意味が違います。

 

その小さな店舗面積で、宝箱のように料理道具だけを扱っているからこそ、何よりも重要なわかりやすさが増し、お客様を喜ばせることができるのです。

 

大きなホームセンターなどで店員さんの姿を見つけられず、欲しいものが見つからない経験をしたことはありませんか。飯田屋のように小さな店では、店員は後ろを振り返ればすぐに見つかります。小さいので置ける品数は限られますが、選び抜いたおすすめ商品を置くことができます。

 

かつて飯田屋の弱みと思っていたことは、弱みではありませんでした。視点と行動を変えてみれば、お客様を惹きつけてくれる飯田屋の強みだったのです。

 

飯田 結太
飯田屋 6代目店主

 

 

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※本連載は飯田結太氏の著書『浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟』(プレジデント社)を抜粋し、再編集したものです。

浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

飯田 結太

プレジデント社

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