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4つの事例を通じ、解決プロセスを具体的に理解する
現場に深く入り込んだうえで課題を抽出し、クライアント企業と一緒になって課題解決をしていくコンサルティング手法「ハンズオン型」コンサルティングでは、中小企業の課題を解決するにあたり、中小企業が成長の踊り場へと至る典型的なパターンを前提としています。
「モグラたたき」パターン
「悪しき平等主義」パターン
「笛吹けど踊らず」パターン
「迷走する組織」パターン
(※ 詳細は『中小企業が伸び悩む典型的な4パターン「モグラたたき」「悪しき平等主義」「笛吹けど踊らず」「迷走する組織」』参照)
「迷走する組織」パターン、危険が顕在化すると…
「迷走する組織」パターンでは、組織の弱体化に危機感を覚えた経営者が組織改革を実行し、成果がなかなか上がらない場合には、処遇面の抑制や責任者クラスの中途採用を積極的に行うといった対策を取るようになります。
しかし、そこで従業員のやる気喪失等の問題が発生すると、経営者への情報伝達の問題が生じ、組織は迷走をはじめます。(『中小企業の経営危機…末期症状「組織の迷走」はなぜ起こるのか』参照)。
優秀な社員や面倒見のいい社員が姿を消す
組織が完全に迷走の段階に突入したとき、優秀な社員や良い意味でのおせっかいな社員は軒並み会社から姿を消しています。
おせっかいな社員が辞めていく原因は、会社が悪い意味で変化してしまう点にあります。
良い意味でのおせっかいとは、例えば給料とは関係なしに新しく入ってきた人の面倒を見てあげることであったり、本来の仕事とは関係なく備品が足りなくなったときには自ら注文することであったり、汚れたホワイトボードを毎日きれいにするなどを進んでやったりすることです。そんな「雑務」を一生懸命やったからといって、給料が上がるわけではありません。
もちろん本人も、それを望んでいるわけではありません。何よりも自分が満足していること、さらにそうした自分を承認し感謝してくれる仲間がいること。それがおせっかいのエネルギーになっています。
しかし組織が大きくなってくると、そのようなおせっかいに対する感謝がなくなります。多くの場合、それは人事制度の導入や改訂に起因しています。「パッケージ型」が推奨する人事制度は、基本的には各社員の役割を事前に明確化し、それらに対するKPIを設定し、その達成度を数字で測るという仕組みになっています。
こうした仕組みに、先ほどのようなおせっかいが入り込む余地は微塵もありません。
最初の頃は、「評価につながらないから、その仕事はやらなくていいよ」だったのが、やがて「役割として与えられていない仕事はしてはいけない」に解釈が変わっていきます。本人は評価を求めているわけではないため、そのまま任せておくこともできるのに、ルールという名のもとにこのような判断が下されてしまいます。
その結果、やる気どころか自らの存在意義をも見失ったおせっかいな社員は、会社を辞めるという決断へと至ります。言葉を選ばずにいえば、少なくとも本人の認識のなかでは、会社から不要な社員との烙印を押されてしまったわけです。
テコ入れのつもりが、既存事業の利益が食いつぶされ…
こうした制度変更による危険の顕在化に加えて、分社化などの組織変更によって危険が明らかになるといった場合もあります。これに関して1つ、実際に起こった事例について簡単に紹介します。
筆者が課題解決に関わったある会社では、経営者が中堅のコンサルティング会社に相談し、それまでにはなかった「地域貢献」を理念に書き加え、そのための部署を新たに設置して、イエスマンの役員がその責任者に就任しました。
その背景には、既存の事業だけでは優秀な社員を確保できないとの、不正確な現状分析に基づく判断がありました。さらに、そうした判断へと至った理由としては、イエスマンから正確な情報が届いていないという事態が続いていた点を挙げることができます。
新たな部門の責任者に就任したイエスマンは、社長が直々に決断した新規事業だからと、仕事のできる社員を集めるよう社長に進言しました。社長はそれが組織にとって全体最適であると考え、その提案を採用してしまいました。
その結果、何をおいてもまずは新規事業が優先され、マーケティングという名目のもとに多額のコストが投入されたのです。外部の広告会社からも高額な費用が請求されました。「地域貢献」という事業の性格から、大きな利益を望むことができないのは明らかです。
これまで何とか利益を生み出してきた既存事業の利益が食いつぶされ、新規事業に力を入れれば入れるほど、会社の全体最適が損なわれるという矛盾が顕在化しました。
異動させられた社員を含め、組織全体に不満が蔓延していきます。ただでさえ、やる気の大部分を失い、処遇に対する不満を隠しながら、会社にぶら下がっている状態でやってきたメンバーです。
テコ入れのはずが組織の迷走という事態を招き、さらに不満をもった社員たちが、物事を前向きにとらえられる可能性などゼロに等しいというべきです。業績はさらに悪化し、会社は踊り場から下りの方向へと進み始めました。
このケースでは分社化というところまでは至っていませんでしたが、そうした決断を下す経営者も少なくありません。もちろん分社化がすべて悪ということではなく、それがさらに大きな成果を生み出すケースもあります。
ですが、組織が迷走している状態で分社化してしまうと、ほとんどの場合、かえって事態を悪化させることになります。それは前提として「悪しき平等主義」や「モグラたたき」がはびこっている場合で、分社化によって成果に差が出てもそれが処遇には反映されず、むしろ不満を大きくしてしまう結果につながります。
株式会社ココチカ
代表取締役社長 山中 一浩
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