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4つの事例を通じ、解決プロセスを具体的に理解する
現場に深く入り込んだうえで課題を抽出し、クライアント企業と一緒になって課題解決をしていくコンサルティング手法「ハンズオン型」コンサルティングでは、中小企業の課題を解決するにあたり、中小企業が成長の踊り場へと至る典型的なパターンを前提としています。
「モグラたたき」パターン
「悪しき平等主義」パターン
「笛吹けど踊らず」パターン
「迷走する組織」パターン
(※ 詳細は『中小企業が伸び悩む典型的な4パターン「モグラたたき」「悪しき平等主義」「笛吹けど踊らず」「迷走する組織」』参照)
「笛吹けど踊らず」パターン、危険が顕在化すると…
「笛吹けど踊らず」パターンは、さらに「陰で文句」「やっているふり」「どんより」という3つの型に分類することができます(『経営者、戦慄…社員のウラの顔「文句タラタラ・やっているふり・どんより無気力」』参照)。
「陰で文句」型
↓
「やっているふり」型
↓
「どんより」型
この順番で、事態は悪化していくことになります。社員が陰で文句を口にしている予兆を感じたならば、そのときに適切に対処することで、組織としての傷は最も浅く済みます。
しかし、批判的な社員が存在するという事実は、ある意味では組織が健全な状態にあると見ることもでき、それを危険の予兆ととらえるのは、非常に難しいといわざるを得ません。
これとは逆に、「どんより」型までいってしまうと「何かがおかしい」と感じる可能性が高くなります。しかし、組織としてはこのパターンの危機が顕在化する一歩手前まで事態が悪化しているということになり、別の意味の難しさが存在します。
こうした「笛吹けど踊らず」パターンへと陥る最大の原因は、会社の成長に社員の成長が追いつかず、それに気づかない経営者が部下に仕事を任せてしまう点にあります。任される仕事のレベルが上がっているにもかかわらず、そのレベルに対応できる実力は身についていないのです。
この傾向はイエスマンである幹部社員に特に強くなります。経営者からの指示を実行に移すのにはかなりの手間がかかる。そして、それを克服するだけの能力がない。だから何もできない。このような心の流れが組織全体へと広がることによって、経営者の笛が聞こえなくなります。
言われたことだけを黙々とこなしていた日々から、言われたことを黙々とこなすことさえできなくなる(しなくなる)日々に変わってしまうわけです。これは明らかに、危険と呼んで差し支えありません。
「目標を示し、達成するよう告げるだけ」の経営者
このパターンの危険が顕在化するということは、「できてない」という実態が白日の下に晒されることを意味しています。多くのケースでは、幹部社員等の対応にしびれを切らした経営者が直接確認に赴き、「できていない」事実を発見します。そして「できていない」の原因とは、おおむね次のような事情によっています。
組織としての一般的な指揮命令系統にしたがって、経営者は責任者に方向性を指示し仕事を任せます。ほとんどの場合、この責任者にイエスマンが就いています。そしてイエスマンは、自分の直下の部下に対して、社長の方向性を基に指示を出すわけですが、このときの指示の出し方に大きな問題があります。
基本的には、ただ目標を示して、それを達成するように告げるだけ。野球に例えるならば、ただ「ホームランを打ってこい」とだけ指示するコーチのようなものです。いちばんの問題は、これではまったく指示になっていないという点です。
部下に、一を言えば十を理解する力は備わっていません。具体的な内容まで指示しなければ、実際の行動に移ることができません。当然ながら結果を出すことができず、部門の責任者をはじめ現場の社員はどんどん疲弊し、やる気を失っていきます。
そして、具体的な内容を示さない会社に対する不満を募らせていきます。ここから残っているエネルギーの量にしたがって、3つの型に分かれていくことになります。
しかし、今の論理には重大な1つの誤りが含まれています。
具体的な方向性を示すのは、本来は責任者の役割です。少なくとも社長は責任者にそうした役割発揮を期待しています。
さらに問題なのは、結果が出ないことにイライラした社長が問いただしたとき、イエスマンは「部下にはちゃんと指示している」と答える点です。
他方、部下に対しては「社長からの指示が曖昧なんだ」というスタンスで臨み、自らの責任を回避しようと試みます。イエスマンのこうした動きによって、社員のやる気はどんどん失われていき、社長からの指示を受けて真摯に取り組むといった気持ちがなくなり、会社は踊り場へと至ってしまうわけです。
このパターンにはまった中小企業の現場に入ると、多くの社員が「うちの社長は現場を知らないので」と口にします。しかし、実際に阻害要因となっているのは社長ではなく、イエスマンとしての責任者である場合がほとんどなのです。
初めからイエスマンに悪意があるケースは非常に少ないのです。社長の指示を忠実に実行することが得意なイエスマンは社長が示した内容を具体化して、部下に伝える業務が苦手なわけです。
つまりイエスマン自身が「笛吹けど踊らない」という意志決定を行っているに等しく、そしてそれが組織全体に伝播していくという流れになっているともいえます。
ハンズオン型以外のコンサルティングが、このように複雑な事例の真因を分析し、適切に対処できる可能性は低くなります。社員に簡単なヒアリングを実施しただけでは、経営者自身に課題があるという結論しか導き出すことができず、「経営者のやり方を変える」という方向性をさらに強化する結果にしかなりません。現場に深く入り込み、日々の実情を精緻に観察し、その結果とヒアリング内容とを突き合わせ、現状を正しく分析する。このようなプロセスを用いることでしか、課題の真相を特定することができません。
つまり、いったん顕在化した危険をただ表面的になぞるだけでは、正しい現状掌握および分析には決して至らないということです。
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代表取締役社長 山中 一浩
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