(※写真はイメージです/PIXTA)

社長の目が届く程度の会社組織から一段と成長した組織になると、社長は現場の状況が把握できにくくなります。しかし、そこで従業員たちへのかかわり方や管理の方法を間違うと、現場は一気にやる気を喪失し、組織は成長力を失ってしまいます。経営者は自ら育てた会社と、どのように向き合うべきなのでしょうか。中小企業コンサルのプロフェッショナルが解説します。

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動く組織をつくるのは、経営者ではなく「社員」である

◆組織が成長すると、経営者の目はどんどん行き届かなくなっていく

会社が成長するにつれ、経営者の目はどんどん行き届かなくなっていきます。創業時にはすべての社員の顔と名前が一致し、何を考えどんな働き方をしているのかまでしっかりと把握できていた経営者が、組織全体の管理や取引先との対応に割かれる時間が増え、現場に視線を向けることがほとんどできなくなってしまうわけです。

 

そこで経営者自らがさらに動こうとするとどうしても干渉のレベルが高くなり、幹部社員以下のメンバーがやる気をなくしてしまう。幹部社員は立場も収入も上がったことで保守的になっており、イエスマンの負の側面だけが強調され、危険なパターンへと突入していきます(『中小企業が伸び悩む典型的な4パターン「モグラたたき」「悪しき平等主義」「笛吹けど踊らず」「迷走する組織」』参照)。

 

こうした経営者の動きは、会社が踊り場へと陥り、期待する成長が実現できない状況から何とかして脱するためのものだったはずです。しかし、そのような経営者の前向きな行動が、かえって会社の成長を遠ざけるという実に皮肉な結果を招いてしまうわけです。

 

成長によって経営者の目が広く行き届かなくなるというのは、会社にとっては必然的な、一種の成長痛のようなものだといえます。正しく診断されれば特段の問題はありません。

 

ですが、診断を誤って本来は必要のない処置を施してしまうと、かえって状態を悪化させ、身体へのダメージはどんどん深くなってしまいます。経営者がさらに動こうとすることは、誤った成長痛への対応にとても似ています。

 

とはいえ、会社の場合は痛みを放置し、成長が追いつくのを待っているというわけにはいきません。痛みに適切に対処できなければ、次の成長ステージはいつまで経っても訪れないわけです。

 

◆「さらなる成長」は、社員の自発的行動が実現するもの

経営者自身が動かずに行う適切な対処は社員自らが動くこと以外にはありません。少し乱暴ないい方にはなってしまいますが、最初の踊り場に達するまでの間は、基本的には経営者自身の強烈なパワーで会社を成長させてきたといって差し支えありません。

 

誰もが経営者からの指示を忠実に実行し、それが組織を大きく成長させてきました。だからこそ、創業の時期にはイエスマンが好まれ、イエスマンだからこそ功労者となり、幹部社員になっていくわけです。

 

しかし、会社の規模はいつか、経営者自身のパワーを超えて成長していきます。つまり、経営者の目が現場に行き届かなくなるのは、ある意味では非常に喜ばしい出来事なのです。

 

経営者だけの力で組織を牽引することができなくなったとき、社員の力が必要となります。毛利元就の三本の矢ではありませんが、1人では克服できない課題も、全員が力を合わせて対処すれば必ず解決することができます。経営者がさらに動こうとすることは、矢を三本にせず、いつまでも一本だけで苦労を重ねるようなものです。

 

とはいえ、いつまでも言われた事だけする社員のままでは、経営者の負担は減りませんし、社員も組織に大きく貢献することができません。大切なのは社員が自ら考えて行動し、そのうえで成果を出せるようになることです。最初は小さな成功の積み重ねでもまったく問題ありません。少しずつ、しかし着実に、自力自走できる範囲を広げていくことが非常に重要になってきます。

現場にはびこる課題を解決するには?

◆課題が生じている原因は「仕組み」ではなく「人」にある

伸び悩む経営者が犯しがちなまちがいのなかには、制度変更や組織変更など「仕組み」を変えてしまうというものが含まれていました。そして、その背景には「変える=良いこと=ゴール」という手段と目的の入れ替わりがあることを確認してきました。こうした入れ替わりに基づく変更のさらに深い部分には、課題が生じている原因が、基本的には仕組みにあるといった、一種の固定観念もしくは先入観があると感じています。

 

例えば責任者クラスの中途採用を積極的に行うというまちがいは、人の側に根本的な原因を見いだしたものですが、それがうまくいかなければやはり仕組みが問題だったと考えを改めてしまうことになります。こちらのルートからも、上手くいかなければ最終的には仕組みを変更するゴールにたどり着いてしまうというわけです。しかし、このような誤ったゴールでは、現場にはびこる課題をいつまで経っても解決することができません。

 

『中小企業が伸び悩む典型的な4パターン「モグラたたき」「悪しき平等主義」「笛吹けど踊らず」「迷走する組織」』で紹介した4つの事例からも分かるように、中小企業の課題は基本的に、仕組みではなく人にあります。

 

悪意がないまま、だからこそ自分でも気づかないままマーベリックとなり、組織の成長を阻害してしまいます。さらに、会社の成長によって求められるスキルが上がり、しかし十分な教育を受けることができず、成果に貢献できないという場合も多くあります。

 

こう書くと、「十分に教育できないのは仕組みの問題ではないのか」「仕組みが陳腐化して成長を阻害する場合もあるだろう」といった指摘があるかもしれません。しかしながら十分な仕組みを構築できないのも、古くなった仕組みを捨てられないのも、すべて人です。また、どんなに良い仕組みを導入しても、それを人が活用できなければ意味がありません。こうした意味で私は、課題の原因はすべて人にあるといっているのです。

 

◆「人」の問題を解決できるコンサルティング

時間に追われ、ひたすら目の前の業務をこなすことに疲れ果てている人、はからずもマーベリックになってしまっている人や、スキル不足を抱えている人、そして職場の人間関係に悩んでいる人など、組織上の課題はほとんど人です。

 

それは経営者に起因している場合もあり、イエスマンである幹部社員たちに原因がある場合もあり、中途採用した人材が暴走してしまう場合もあり、あるいは、若手の中心メンバーが今よりも面倒な仕事をしたくないと上司にプレッシャーをかけている場合もあり、人間関係の課題は非常にバラエティに富んでいます。

 

現場に深く入り込んだうえで課題を抽出し、クライアント企業と一緒になって課題解決をしていくハンズオン型コンサルティングは、こうした人間関係の悩みにも深く切り込んでいきます。誰かを悪者にして晒すようなことは絶対なく、メンバー全員との対話を通じて課題の根を発見し、誰もが傷つかない前提でストーリーを描き、解決を目指します。

 

ハンズオン型のメニューは人に触れるところからしか始まりません。そして、最初から最後まで徹底的に、人に触れることを続けていきます。中小企業の課題の原因は人にあるため、それが最適な取り組みであることは論をまちません。人情とか優しさの問題である以前に、人に触れることが最も合理的な解決方法であるわけです。こうした手法によってしか、中小企業の抱える課題は解決できないと筆者自身は確信しています。

 

 

株式会社ココチカ
代表取締役社長 山中 一浩

 

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本記事は、山中一浩著『驚くほど業績が上がる 中小企業のための「コンサルティング」活用術』(GMC)を抜粋・再編集したものです。

驚くほど業績が上がる 中小企業のための「コンサルティング」活用術

驚くほど業績が上がる 中小企業のための「コンサルティング」活用術

山中 一浩

幻冬舎MC

会社を成長させるには、販売網や顧客基盤の拡大、事業の多角化、また優秀な人材の確保と定着など、さまざまな課題を解決していくことが必要です。 特に中堅・中小企業では、経営者自らが先頭に立って、業績向上の取り組みを…

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