投機色の強い「商品」や「ゴールド」
[図表6、図表7]では、1972年1月末=100として、ライン・チャートで見ています。
すると、米国株式や米国リートではバブル期があっても「長期右肩上がり」である一方で、商品やゴールドは下がったまま、長期間戻らないこともあることがわかります。
言い換えれば、米国株式や米国リートであれば「たとえ1970年代のようなスタグフレーション期に入るとしても、10年くらい待てば大丈夫」と言えるかもしれませんが、商品やゴールドはどうなるかはっきりしません。リスクはかなり高いと考えられます。
また、全期間のリターンで見ると、「商品は年率6.5%」、「ゴールドは年率7.7%」で、「消費者物価の年率上昇率3.9%」を上回っていますが、これだけ振れてしまうと、これらをメインに据えるというのはやはり困難に思えます。
なぜ、米国株式や米国リートのリターンは「長期右肩上がり」なのでしょうか。
商品やゴールドへの投資と、ビジネスへの投資の違い
まず、①商品やゴールドに投資することを考えると、利益を出すには、買った価格より高い価格で売却する必要があります。
言い換えれば、仕入れたものに付加価値を付けるわけではなく、仕入れたものを「右から左へパスすること」でしか利益を得る方法がありません。ただし、政府が債務のマネタイゼーションを含めてインフレを目指す分、期待リターンはプラスと考えられます。
次に、②ビジネスオーナーになること(=株式を保有すること)を考えると、一般的なビジネスでは、原材料や賃金などのコストに利益を上乗せして(=マークアップして)販売をします。言い換えれば、企業は、原材料を消費者にただパスする主体ではなく、原材料に付加価値を加えて消費者にパスする主体です。
原材料の価格(≒仕入れ値)が下がってしまっても、原材料そのものに投資をしているわけではなく、原材料を売れないほど大量に持ち越さない限り損失はありません。
また、(ガソリン販売などの川上に近いものでない限り)原材料の時価が下がっても、商品の販売価格を引き下げる必要はなく、据え置きで構いません。他方で、商品やゴールドの場合、時価が下がればその時価でしか売ることができません。
実際、多くの企業は、仕入れ値や生産コストが下がっても、販売価格を引き下げることをしません(→「価格の下方硬直性」と呼ばれ、寡占や独占的競争、メニュー・コストなどが主な要因とされます)。
新たな生産のための原材料の仕入れ値が安くなれば、利幅が拡大します。反対に、賃金や原材料の価格が上昇すれば、販売価格に転嫁します。それは、現在の米国で見られていることです。