【関連記事】「灘中の落ちこぼれ」が「東大医学部」に大逆転合格した勉強法
日本の教育の根源にある「我慢」
『ディズニー そうじの神様が教えてくれたこと』(SBクリエイティブ)の著者として知られる鎌田洋さんと、ザ・リッツ・カールトン・ホテル元日本支社長の高野登さんに共通するのは、グローバルに活躍されているのはもちろん、私が特に強調したいのは、普通であれば進んでやらないような仕事でも、決して手を抜かず、丁寧に取り組んできたということです。
「理不尽なこと」に前向きに取り組み、「我慢」ができ、部分(個人の思い)だけでなく全体を見渡すことができる……こうした人は、世の中がどう変化したとしても、必要とされる人ではないかと思います。
ある程度の「理不尽さ」を受け入れ、我慢すべきところは我慢するということです。ところが現在は、「なるべく子どもに負担がないように」と考える保護者がとても多く、「我慢」を経験できる子は少ないように感じます。
経済的にはもちろん、精神的にも肉体的にも、極力ストレスがかからないよう、先回りしてしまい、子どもに「我慢」をさせるチャンスを奪っているといえます。
ちょっと話が飛びますが、私は日本の強さは、この「我慢」をすることにあると思っています。
「我慢」とは、「今は耐えよう。でもやがては、その我慢がプラスに働く」ということで、表現を変えれば、「長期的に物事を捉える」といえるのではないでしょうか。
日本企業は欧米企業をお手本に、成果主義を導入しましたが、今ではそのやり方に批判的・反省的な声もあります。私も、短期的な成果を求める欧米企業のやり方をなぞるのではなく、日本は日本なりのやり方をしたほうがよいのではと思います。
すなわち、先を見て、中長期的な成果を求めるということです。日本では、新卒採用を行っていることからもわかるように、人材をじっくり育てます。
先を見ているから、「では、今、何をするべきか」を考え、だからこそ、我慢ができ、今やっている地道な仕事にも耐えられるわけです。こうしたことは、3カ月で結果を出すことが求められるようなアメリカ人にはなかなかできないでしょう。そういう教育を受けていませんし、そういう文化ではないからです。
我慢の過程には、先輩後輩といった人間の上下関係の厳しさも含まれており、これについては、今の時代には批判されるかもしれませんが、私はある程度の厳しさは当然であり、必要なことだと思っています。
日本には、四季があり、寒かったり、暑かったり、梅雨があったり、そして、地形的にさまざまな災害が起こったりもします。そうした人間の力ではどうしようもない不条理なことに見舞われることも多い中、耐えながら、生きる知恵を身につけてきました。
そんな日本人にとって、こうしたこと……誰も進んでやりたがらない、誰にいつ評価されるかもわからなくても、手を抜かず、お皿を1枚1枚、洗うようなこと……は、世界で活躍するには強みになるといえるのではないでしょうか。