(写真はイメージです/PIXTA)

都心で増加する中古不動産。利回りが高い、運営難易度が低い等を理由に購入を検討するオーナーも増えていますが、その際ニッセイ基礎研究所の渡邊布味子氏は「2つの築年月」に注目すべきといいます。本記事で詳しく解説します。

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    2009年6月:エレベーターの安全性に関する建築基準法施行規則等の改正

    2009年6月は、エレベーターの安全性に関する建築基準法施行規則等の改正の施行日である。エレベーターは戸建にはあまりない設備だが、多くのマンションには設置されているので、この改正は大いに関係する。2009年9月1日以降に建築確認申請が申請された建物であれば新基準、それより前に申請されている場合は旧基準による。

     

    この改正は、2005年の千葉県北西部地震や、2006年の東京都港区の共同住宅におけるエレベーター死亡事故を契機としており、「扉が開いた状態での昇降の防止(二重ブレーキ)」、「予備電源の義務化」、「駆動装置の耐震対策」、「地震時等管制運転装置(初期微動を感知し最寄り階に停止、閉じ込めを防止する装置)」などの機能が、エレベーターに義務付けられることとなった。

     

    エレベーターの耐用年数は建物より短く、建築物維持保全協会によると25年である。エレベーターの運用には定期点検が必要であるため、メンテナンス業者の起案で耐用年数前後に改修の計画が持ち上がる可能性が高い。

     

    改修は、旧基準のエレベーターでも部品の交換等で対応でき、エレベーター全てを交換する場合よりは安く済む。ただし、修繕計画に十分な費用が織り込まれていない場合には、修繕積立金とは別に追加の費用の支払が必要となる可能性もある
    ※ 申請により、国や地方自治体などから交付金・補助金が支給される場合もある。

     

    また、新基準への対応は法的に義務ではないが、エレベーターが寿命を迎える前に新基準に適合したエレベーターに改修することも良い選択のように思われるが、かなりの費用負担が発生することは避けられない。

     

    このように、旧基準のエレベーターが設置されているマンションの価値は一般的に低くなり、また安全性も劣ると考えられる。

    おわりに

    旧耐震基準の建物の耐震性改善も、旧基準のエレベーターの改修も、建物の安全性に関わることである。いつかは改修等を考えなければならず、計画的に是正していくことが望まれる。しかし、改修等には多額の費用が発生し、マンションの場合だと住民の合意形成も簡単ではないだろう。

     

    従って、中古マンションなどの中古不動産を購入する際には、現時点でそういう耐震基準に適合しているのか、また適合していない場合は、今後の改修計画の有無や、現時点での建物の安全性をきちんと確認する必要がある。

     

    しかし、各個人任せにするのではなく、中古不動産がどのような耐震性能があるのかを、例えば、誰でも簡単に未改修の建築物とは明確に区別できる等、もっと分かりやすく表示されるべきである。

     

    また、仲介業者等の不動産関係者は、形式的な説明義務を果たすだけでは、購入者が十分に理解できていない可能性があると考えるべきだろう。購入者に対して耐震性能等に関して丁寧に説明し、十分納得して購入してもらうことが、従来以上に求められているのではないだろうか。

     

     

    渡邊 布味子

    ニッセイ基礎研究所

     

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    ※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
    ※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2022年3月24日に公開したレポートを転載したものです。

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