(写真はイメージです/PIXTA)

都心で増加する中古不動産。利回りが高い、運営難易度が低い等を理由に購入を検討するオーナーも増えていますが、その際ニッセイ基礎研究所の渡邊布味子氏は「2つの築年月」に注目すべきといいます。本記事で詳しく解説します。

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    はじめに

    中古の不動産を購入するときには、新築とは別の視点が必要になるが、そのうちの一つに築年月の確認がある。なぜなら、ある特定の年月より前に建てられた建物は、それより後に建てられた建物より、構造上の頑健性や実質的な価値が劣る可能性があるからである。

     

    この築年月の確認は全ての建物に共通することであり、中古のマンションや戸建ての購入者が必ず確認すべきものである。

    適法な建築物は、建築確認申請と完了検査の手続きを経ている

    その築年月とは、1981年6月と2009年9月である。不動産の価値に影響のある建築法規の改正が行われた年であり、この月の前後で建築された建物は構造や設備が大きく異なる。厳密な日付の確認のためには、次の建築確認申請の流れを押さえておきたい。

     

    適法な建築物の建築には、建築主事が図面等の計画が建築法規に沿った適法なものであるかを審査する「建築確認申請」および、計画通りの建物が建築されたかどうかを現地で確認する「完了検査」の手続きが必要である。
    ※ 建築確認などを行う公務員。都道府県や人口25万人以上の市に置かれている。

     

    「建築確認申請」に適合していれば「確認済証」が、完了検査に合格すれば「検査済証」が発行される[図表1]。

     

    [図表1]建築確認申請の流れ
    [図表1]建築確認申請の流れ

     

    「検査済証」があれば、「建築申請時の法令に合致した適法な建物が、計画通りに完成したことの証明」になり、その有無は、建物の所在する都道府県か市で、誰でも確認できる。「建築確認申請」では、申請日にその時の建築法規に適合している必要があるため、改正の施行日以降に確認申請が提出された建築物は改正後の法規に適合している。

     

    また、上記2つの改正は、いずれも以前よりも厳しく、より高い建築費用が必要な仕様となっており、それより前に確認申請が提出された建築物は改正前の法規に適合しており、相対的に安価に建てられた建物と言える。

    適法だが適法ではない、既存不適格建築物

    建築法規は、建物の安全性を担保するために繰り返し変更されており、旧基準により建築確認申請をした建物は、「建築当時は適法であったが、現在の法規には合致しない建物」となる。この状態の建物を「既存不適格建築物」という。

     

    既存不適格建築物は、旧法令に合致した適法な建物で、違法性はない。そのまま使用を続けることができるのなら、生じる問題もほとんどないだろう。

     

    それでも上記の建築法規の改正が不動産の価値に影響がある理由は2点ある。1点目は、構造や設備の基準が改良されているため、一般的には、新基準に適合した建物のほうが構造上より丈夫で、より価値が高いことである。

     

    2点目は旧基準による建築物を、新基準に適合する建物に改変するには多額の費用を伴うことが多いのだが、将来のどこかで新基準に適合させる必要があるかどうかを判断し、その追加の費用を見込む必要があることである。その必要性の判断は、建物の該当部分の性質や現状によっても異なるだろう。

     

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    ※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
    ※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2022年3月24日に公開したレポートを転載したものです。

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