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末っ子の自分だけ蚊帳の外、家の雑務を押し付けられ…
今回の相談者は、40代の渡辺さんです。父親の相続をめぐり、きょうだいと関係が悪化した件について相談したいと、筆者のもとを訪れました。
渡辺さんは3人きょうだいの末っ子で、兄と姉がいます。兄と姉はそれぞれ20代半ばで結婚し、配偶者と子どもと暮らしていますが、渡辺さんは独身です。大学生のときに母親が倒れて以降、家の家事を切り盛りする必要があったため自宅にとどまり、婚期を逃してしまったということです。
父親は商才のある人で、会社を4社も経営していました。兄と姉は、父親が現役のときから後継者として会社経営に携わっていました。しかし、渡辺さんはずっと蚊帳の外に置かれ、家の雑務と父親の身の回りの世話だけ求められたといいます。
「兄と姉は大学を卒業後、他社で仕事を覚えてから父の会社に就職しました。父が直接仕事の手ほどきをしていました」
仕事を望む末っ子に、姉は「いまだけ辛抱して」
渡辺さんも、兄・姉と同様にいずれは父親の会社に入社するつもりで、大学では経営学を専攻しました。しかし、大学在学中に母親が倒れてしまい、介護が必要になりました。
「母親の介護と父親の世話で、勉強や就職どころではなくなってしまいました。大学卒業後、一度は会社に就職したのですが、とても家のことと両立できず、数ヵ月で退職しました」
それから数年後、母親が亡くなりましたが、渡辺さんの父親に仕事の話をしても「家のことはどうするんだ」といって取りつく島もありません。
不満を訴える渡辺さんに兄は無関心でしたが、姉は「私が社長になったら入社させるから、それまで辛抱して」と繰り返しました。
ワンマンな父親の身の回りの世話をする毎日でしたが、ある寒い日、父親は脳梗塞を起こして急死してしまいました。そのとき、渡辺さんは40歳を過ぎていました。
父親の相続は、すべて姉が取り仕切りました。父親の資産総額などまったくわからない状態のまま、姉主導でどんどん話が進みました。渡辺さんがなにを言っても相手にされず、そのうち目も合わせないほど関係が悪化し、ついには話し合いもできなくなりました。
状況を見守っていた筆者は、このままではさらなる状況悪化は避けられないと判断して間に入り、なんとか遺産分割協議は終了しました。渡辺さんは、姉が最初に提示した金額を大きく超える遺産を相続できましたが、きょうだいの関係には、修復不能な亀裂が入ってしまいました。
渡辺さんはすぐにマンションを購入し、新生活をスタートさせました。相続財産として、収益不動産と億単位の現金を手に入れましたが、渡辺さんの心には「家族に利用された」「家族に嘘をつかれた」という深い傷が残ってしまいました。
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