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口コミ情報は効果的なものだが注意が必要
■口コミが役に立たない理由とは?
多くの人が、口コミ情報を活用し、口コミ情報を効果的なものだと信じています。
その理由は、事実や体験に基づくものだからです。私も口コミ情報はよく活用し、決定の参考にします。そういう意味では、口コミは有効です。
しかし、私自身は口コミを次のような定義に基づき活用しています。私は職業柄、老人ホームに関し、豊富な知識と知見を有しているため、その口コミを見ただけで、その背景にあるものまで簡単に行き着くことができます。これが、口コミを活用する定義です。
例を挙げて説明をします。ある人の口コミです。「Aホームは、ひどいホームです。介護職員はたくさんいるにもかかわらず、近くで着替えをしている入居者がいても無視です。よく見ると、その入居者は手が不自由なようで、必死の形相で洋服の着替えに悪戦苦闘をしています。気の毒に見えました。
しかし、介護職員は、そんな入居者のことなどおかまいなしで、反対側の入居者とたわいもない話を笑顔でしています。何度もチラチラ見ているので、着替えで困っているということは認識していたはずです。ひどい介護職員です。こんなホームに親を入れると大変です」という口コミだったとしましょう。
介護に対する知識と教養を持っていない人が、この文面を見れば、多くのみなさんは「ひどい介護職員」だと考えるはずです。当然です。
しかし、私はこう考えます。このホームは自立支援が売りのホームです。特に、このホームの自立支援は、残存機能を維持していくことに力を入れています。本人が、あきらめない限り、このホームでは残存機能をフルに使うことを「良し」としています。したがって、手伝うことはしません。手伝うケースは、本人がギブアップした時だけです。
もし、この情報や知識が事前に入っていた場合、この口コミの評価はどう変わるでしょうか? 着替えている入居者は、必死に自分だけで着替えようとしています。だから、介護職員は、着替えを手伝うことはしません。さらに、何度もチラチラ見ていたということは、気にかけて様子をうかがっていたということです。隣の人と話をしながら、着替えている対象者にも気を配っていたということがわかります。
つまり、私のような専門家には、当該ホームは、ひどいホームとかひどい介護職員という評価にはなりません。むしろ、自立支援に真剣に取り組んでいるホーム、ということになります。