(※写真はイメージです/PIXTA)

5ヵ月余りに及ぶ交渉の末、賃貸借契約締結直前に「ドタキャン」されてしまったビルオーナー。借主へ損害賠償を請求することはできるのでしょうか。賃貸・不動産問題の知識と実務経験を備えた弁護士の北村亮典氏が、実際にあった裁判例をもとに解説します。

裁判所が損害賠償を認めた「身勝手な借主」の事情

【参考:東京高等裁判所平成20年1月31日判決】(1審被告:賃借人、1審原告:賃貸人)

 

1.賃借人予定者への損害賠償の可否について

 

「A社次いで1審被告は、前記のとおり、平成15年3月以来、本件建物の一部を目的とする賃貸借契約の締結に向けて1審原告と交渉を重ね、同年11月19日には1審原被告間で本件合意がされたが、本件合意時までに賃借目的部分が本件建物の15階・16階とされたほか、本件合意によって、契約の始期を当初予定日よりも1ヵ月先送りし、1審原告が費用を負担してセキュリティ扉を設置する、敷金保全のための銀行保証をすることが取り決められ、

 

また、これより先に1審被告あてに送付された契約書及び覚書類の案文により、本件建物に係る賃貸借契約の賃料・共益費、契約期間、保証金額等についての1審原告の具体的提案が判明するまでになり、当事者双方とも、本件合意によって賃貸借契約締結に当たっての重要な課題がクリアされたと考えていたというのである。

 

そして、賃貸借契約の交渉の際に貸室申込書が提出された事案のうち約1割程度しか契約成立に至らないこと、ところが、1審被告は、同年9月30日の本件申込書上の期限を経過しても1審原告との間で本件建物に係る賃貸借契約成立に向けての交渉を重ね、この期間が通常の2ヵ月ないし4ヵ月を超えて5ヵ月余におよんでいること、1審原告が既に本件確保部分を賃借人募集対象からはずす社内手続をとっており、そのことを1審被告が本件合意時までに承知していたことは、前記のとおりである。

 

これらの事実関係に照らすと、少なくとも平成15年11月19日の本件合意後においては、1審原告が本件建物に係る賃貸借契約が成立することについて強い期待を抱いたことには相当の理由があるというべきである。

 

そして、1審原告が本件確保部分を賃借人募集対象からはずしていたのは、1審被告のそれまでの行為と交渉経過にかんがみ、本件建物に係る賃貸借契約が成立すると期待し、1審被告への賃貸目的物の引渡しを円滑にするためであったということができるが、

 

この期待は無理からぬものということができるから、1審被告としては、信義則上、1審原告のこの期待を故なく侵害することがないように行動する義務があるというべきである。

 

しかし、1審被告は、結局、賃貸借契約を締結せず、これを締結しなかったことについて正当な理由をうかがい知る証拠はない。

 

したがって、1審被告には契約準備段階における信義則上の注意義務違反があり、これによって1審原告に生じた損害を賠償する責任があるということができる(最高裁第三小法廷平成19年2月27日判決裁判集民事232号345頁参照)。」

 

2.損害額について

 

「本件確保部分(1434.04坪)の平成15年11月20日(本件合意の翌日)から平成16年1月29日(賃貸借契約締結拒絶の日)までの間の約定予定賃料及び共益費の相当額(坪単価月額3万1000円)は、計算上、1億0234万2654円であると認めることができるから(平成15年11月分〔11日間〕1630万0254円、同年12月分4445万5240円、平成16年1月分〔29日間〕4158万7160円)、

 

1審原告は、この期間について本件確保部分を他に賃貸する機会を喪失したことにより同額の収入を得られなかったというべきである。」

 

※この記事は、2020年3月22日時点の情報に基づいて書かれています。(2022年4月5日再監修済)

 

 

北村 亮典

弁護士

こすぎ法律事務所
 

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    ※本記事は、北村亮典氏監修のHP「賃貸・不動産法律問題サポート弁護士相談室」掲載の記事・コラムを転載し、再作成したものです。

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