3年半分の滞納費…すべて連帯保証人に請求できる?
では、どのような場合に連帯保証人の責任が限定されるのか(逆に言えば、賃貸人から連帯保証人への請求が権利濫用とされるのか)という点については、ケースバイケースの判断となっているため、この問題は過去の裁判例の判断の蓄積から見通しを立てる必要がある問題です。
そこで、今回は、この問題について判断した最近の裁判例である東京高等裁判所令和元年7月17日判決の事例を紹介します。
この事案は、市営住宅を対象とするもので、連帯保証人は賃借人の母親(高齢で年金受給者)、賃借人は生活保護受給者で賃料は代理納付により賃料が支払われていたものの、保護の廃止により代理納付も廃止され、その後滞納が発生した、という事案です。
賃料の滞納額は、代理納付が廃止されてから、約3年半分におよんでおり、賃貸人はこれを連帯保証人に請求しました。
この事案で、裁判所は、代理納付が廃止され、賃料が滞納が開始されてから2年間が経過した以降の未払賃料の請求については、権利濫用にあたると判断し、賃貸人の請求を認めませんでした。
連帯保証人への請求が権利濫用に当たるか否かについて、裁判所が考慮した事情は以下のとおりです。
・賃貸人は、平成27年4月に賃借人の生活保護が廃止されることを連帯保証人に知らせなかったが、生活保護が廃止されれば、それまでの代理納付も廃止され、賃借人が自ら賃料を支払わなければならないところ、これまでの賃借人の滞納状況や賃貸人との連絡等が困難な状況から、賃貸人としては、その後賃借人が滞納を続けることを予測することができたと解される一方で、連帯保証人は賃借人が生活保護を受給していることは知っていても、これを廃止されることになることは知らずにいた
・実際、生活保護廃止後に賃借人の滞納賃料は累積し、その支払について賃貸人から督促依頼状が送付され、連帯保証人は、本件連帯保証契約の解除権行使等の方策を検討する機会もないまま、賃貸人に促されて、平成28年6月11日には平成28年4月分までの累積債務額について分納誓約書を提出している
・その頃には連帯保証人も70歳に達して年金受給者となっており、賃借人とも連絡が取れず困っていたことを賃貸人も把握していた
・平成28年5月27日に賃貸人から債権移管決定通知書が送付されて以降は、連帯保証人もしばしば賃貸人の担当者に対して、賃借人に対して本件住宅から追い出すなどの厳しい対応をすることを要求したり、自分も年金生活者で分割払いの履行もなかなか困難であることなどを訴えていた
・このような経緯に照らせば、賃借人の生活保護が廃止された以後は、賃貸人は連帯保証人の支払債務の拡大を防止すべき措置を適切に講ずべきであり、かかる措置をとることなくその後の賃料を連帯保証人に請求することは、権利の濫用にあたるというべきである。
・賃貸人担当者は、長年賃借人本人と直接連絡を取れずにおり、賃借人世帯の居住実態が不明なままであるというのに、本件住宅を訪問して、集合ポストに連絡してほしい旨の通知を投函するのみで(賃貸人の原審第1準備書面添付「事務処理経過一覧表」)、それ以上の積極的な方策をとることをせず、保証人である連帯保証人のみに支払請求をしていた
裁判所は以上のように述べた上で、
と判断しました。
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