「予兆」が「危険」へ至るプロセスを理解する
◆伸び悩みには必ず「予兆」がある
経営者がある日突然「会社が伸び悩んでいる」ことに気がつくケースは少なく、気づいたときにはすでに、踊り場に来てから一定の時間が経過していると考えるべきです。
伸び悩みが顕在化するまでには、予兆と呼ぶべき出来事もしくは状況が必ずあるという話を経営者にすると、ほとんどの場合、「ウチの会社にはそんなものはなかった」という反応が返ってきます。
もちろん、「ない」と「見えていない」は明らかに違っていて、こうした経営者は後者に該当するわけですが、その原因は明らかに、会社が成長したことで経営者がすべてを掌握できなくなったことにあります。このとき、幹部社員がその予兆に気がつけばよいのですが、イエスマンである幹部は、指示されたことをひたすら実行するのは得意でも、問題を発見することが苦手な人が多く気づくケースは稀です。
また、「何かがおかしい」と感じたとしてもどうしたら良いか分からず先送りされたり、ひどい場合は予兆が見えていたとしても、あえて見えないふりをします。
その結果、予兆は予兆のまま放置されてしまうことになります。そして時間が経過すると、予兆は明らかな危険のレベルへと成長してしまいます。経営者が伸び悩みに気がつくのは、ほとんどがこの段階になってからです。
◆予兆に気づかずにいると、危機が「顕在化」する
予兆の段階で危機意識をもち、然るべき対策を講じることができれば、会社としての傷は非常に小さくて済みます。この段階でコンサルティングを適切に導入することができれば、マイナスをゼロに戻す時間が少なくて済み、次の成長フェーズに向けたポジティブな議論に多くの時間を費やすことができます。
しかし、現実にはそうならない場合がほとんどです。私のこれまでの経験を振り返っても、予兆の段階で現場に深く入った事例は圧倒的に少ないというのが正直なところです。
ただし、危険をどれだけ放置したのかという点では、大きな違いが見られます。多くの依頼主は予兆が危険へと至った時点で強い危機意識をもち、対策について考え始めます。まずは経営者として考えた対策を実行に移し、それでもほとんど改善が見られない場合に、外部の目に頼ることを決意します。
他方、非常に残念なケースではあるのですが、なかなか危険な状態にあることを認識できず、または認識したとしても受け入れることができず、組織としてのダメージが非常に深くなった段階で、コンサルティングに解決を求めてくる経営者もいます。もちろん、こうした状況であっても、ハンズオン型コンサルティングではしっかりと解決に導くことができます。
ただ解決に至るまでの時間は、ダメージの深さに比例して長くなっていきます。この点は非常に大事なポイントです。そして、放置の期間が長い場合に「パッケージ型」に依頼してしまうと、その先には悲劇が待っています。
その意味で、このプロセスは病に似ているといえます。普段は特に意識することがなく、だからこそ予兆にも気づきにくい。「何かがおかしい」と思ったときは病院に行くべきで、行き先をまちがえると大変なことになってしまうわけです。「病は気から」だったとしても、それだけで治癒することはありません。
次回以降は、上述した4つのパターン、①「モグラたたき」パターン、②「悪しき平等主義」パターン、③「笛吹けど踊らず」パターン、④「迷走する組織」パターンを通じ、解決のプロセスを具体的に取り上げていきます。
株式会社ココチカ
代表取締役社長 山中 一浩
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