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4つの事例を通じ、解決プロセスを具体的に理解する
現場に深く入り込んだうえで課題を抽出し、クライアント企業と一緒になって課題解決をしていくコンサルティング手法「ハンズオン型」コンサルティングでは、中小企業の課題を解決するにあたり、中小企業が成長の踊り場へと至る典型的なパターンを前提としています。
「モグラたたき」パターン
「悪しき平等主義」パターン
「笛吹けど踊らず」パターン
「迷走する組織」パターン
(※ 詳細は『中小企業が伸び悩む典型的な4パターン「モグラたたき」「悪しき平等主義」「笛吹けど踊らず」「迷走する組織」』参照)
「モグラたたき」パターンの危険の予兆
まずは、「モグラたたき」パターンに該当する、危険の予兆について見ていきましょう。
同じようなトラブルが続く状態があれば危険
「最近、コミュニケーションの機会が減った気がする」
「社員の話や仕事の情報が入ってこなくなったかもしれない」
「会議の場での発言が少なくなったかな」
「当たり障りのない発言をする人が増えたかな」
「むしろ、最近のほうが忙しくなってきたかもしれない」
「同じようなトラブルが増えている気がする」
●危険の予兆とはどのようなものか
「モグラたたき」パターンは、次に挙げる3つの要素が重なったときに起こりやすくなります。
社長が陣頭指揮をとり続ける
それをひたすら実行するイエスマンが責任者である
待遇が悪い
ひたすら頑張るイエスマンが責任者になると、部下にもひたすら頑張ることを強要するため、優秀な社員のやる気を削ぎ、組織力は低下していきます。さらに待遇が悪いことが離職を加速させ、もはや会社に反発する力もないほどに社員が疲弊した結果が「モグラたたき」状態ということです。
社員は完全に前向きな気持ちを失い、どれだけ業績が悪化しても、何かを変えようとはしなくなります。そうなれば必然的に、さまざまな業務上の課題がトラブルという形で噴出します。まさに「モグラ」の登場というわけです。経営者だけがトラブルシューティングに追われ、日々の仕事がそれだけに終始してしまうことも珍しくありません。
こうした危険の予兆が次の台詞のなかに表れています。
「なんだか最近自分だけ忙しい気がする。それに同じようなトラブルが多い気がする」
やる気の低下はそのまま情報伝達の欠如につながります。社員からは世間話も含めて会話が消え、会議ではその傾向がいっそう顕著なものとなります。
しびれを切らした経営者は発言を求めますが、誰もが叱責されることを恐れて、当たり障りのないことしか口にしません。業務に関する情報は経営者に届かず、ただ日々の忙しさを感じているという次第です。
現場から何も情報が上がってこないため、経営者としては対策を講じることもできません。何もかもがうまくいっていない状況だけが続き、誰もそれに対してポジティブなスタンスを示そうとはしない。頻発するトラブルに対しても社員は対処することができず、最終責任者である経営者が自ら解決に臨むしかなくなります。
そうなればさらに、経営者は組織の日常から遠ざかることになってしまい、その分だけ現状掌握も難しくなります。会社は完全な負のスパイラルに飲み込まれ、業績は悪化の一途をたどっていきます。
●「経営者対その他の社員」という構図が…
このとき、会社のなかでは「経営者対その他の社員」という構図が出来上がっています。
ほかのパターンでも見られる阻害要因として機能してきたイエスマンは、部下の社員から見ると現場を守ってくれる良いリーダーであり、経営者のトップダウンに対する防波堤の役割を担ってくれているとさえ感じてしまいます。
社員たちは、業績は回復しないものとほとんど諦めにも似た気持ちになっています。そうなると日々の行動の優先順位は、いかに経営者の怒りの矛先をかわし、平穏な日々を送るかということが一番になります。
できていない点をやり玉に挙げられ、叱られてはかなわない。精神的にはすでにギブアップの状態にあって、だからこそ行動には結びつかず、発信しないことで難を逃れようとしているわけです。
それを誰よりも体現しているのがイエスマンです。自らは幹部という立場にありながら、現状を正確に報告することはおろか、「部下を守る」という建前のもとに、不適切な回答を繰り返すというその場しのぎをして、それさえ難しくなると最終的には「ひたすら頑張るだけ」という意志決定によって何とか日々をやり過ごそうとします。
ここでもやはり、イエスマンは大きな阻害要因として機能していることが分かります。本来の役割は、現状を正しく掌握し、改善に向けた手を打つことです。
それができないのならば経営者に正しく状況を伝え、判断を仰ぎ、創業当時のように指示を忠実に実行すればよいのですが、組織が成長し、今のイエスマンにはそれさえ難しくなっているのが悲しき現状です。
ここまで来ると、組織としてはかなり深いダメージを負っています。治癒はできますが、かなりの時間と手間がかかります。いくつもの予兆に気づかぬまま、事ここに及んだ段階で、さらに予兆に気づけというのが酷な話であることは理解しています。
それでも、できるだけ致命傷を負わないように心掛けることで、その後の回復過程は確実に良いものになります。何より、自分だけが忙しくなっていると感じたときは危険です。社員との間に距離があって、情報が入ってこない状況になっていないか、丹念に考えてみることが必要です。
株式会社ココチカ
代表取締役社長 山中 一浩
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