18~64歳に発症する「若年性認知症」は進行が早い
前項で説明した老年期認知症は65~84歳までに発症した認知症であるのに対し、若年性認知症は18~64歳までに発症する認知症です。老年期認知症の場合は有病率が約15%で、その患者は比較的女性に多く、約525万人といわれています。一方で若年性認知症は男性に多く、平均発症年齢は52歳となっています。有病率は0.005%と低いものの、患者数は3万8000人にのぼります。
厚生労働省の調査によって、若年性認知症の原因となる病気は、脳血管性認知症が最も多く約40%、アルツハイマー病は約25%、レビー小体型は約3%と少ないことが分かっています。
若年性認知症は老年期認知症と比較して患者数は少ないものの、仕事をしている男性が発症した場合、発症後には収入が70%減り、家族の生活に支障をきたすことが多くあります。そのため、介護者の60%が抑うつ状態を併発しています。
若年性認知症は比較的早期に診断されることが多く、老年期認知症よりも症状が早く進行していきます。にもかかわらず、診断がついた若年性認知症患者に対する介護福祉サービスが少ないなどの問題があり、厚生労働省が経済的および福祉的支援制度の普及や自立支援ネットワークの構築などに取り組んでいます。
一方、100歳以降に発症した場合は「重度化しにくい」
近年、日本は平均寿命が急速に延びて、100歳を超えた超高齢者(百寿者)が2017年には6万8000人となりました。百寿者の認知症研究により、百寿者の認知症の原因となる疾患は、老年期(65〜85歳)までに発症する認知症とは異なることが分かりました。
超高齢者の認知症の原因となる病気は、脳卒中によって脳の神経細胞が破壊され起こる血管性認知症、タウというタンパク質が過剰にリン酸化されることで神経に影響を及ぼし起こる神経原繊維変化優位型認知症、嗜銀顆粒と呼ばれる物質が脳神経細胞に蓄積して発症する嗜銀顆粒性認知症が多く、高齢者に多いアルツハイマー病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症は少なくなっています。このような超高齢者の認知症の症状は、もの忘れから始まり、進行がゆっくりであり、BPSDを伴うことも少なく、日常生活動作が比較的保たれています。
また、85歳以下で認知症を発症した高齢者は、合併する身体疾患の治療、認知症リハビリ、介護技術の改善などで、発症後も長く生きることができるようになりました。アルツハイマー病は、以前は発症からの生存期間が8〜10年といわれていましたが、最近では15〜20年と延びています。一方で、長生きしたぶん「重度化する」というイメージをもたれることもあります。
超高齢者が認知症となった場合も、重度認知症が多いと考えられてきました。しかし、85歳以下で発症した認知症高齢者に対して、100歳を超えて発症した認知症高齢者は症状が比較的軽度であることが分かってきました。いま現在認知症になっていない超高齢者は、発症しても重度認知症にはなりにくいと考えられます。
旭俊臣
旭神経内科リハビリテーション病院 院長
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