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アルツハイマー病は、あくまで「認知症の原因」の一つ
認知症=アルツハイマー病と思われがちですが、これは大きな誤解です。そもそも認知症は、認知機能が損なわれる症状の総称であり、病名ではありません。アルツハイマー病は確かに、認知症の原因となる代表的な疾患ではありますが、ほかにも認知症を引き起こす病気はあります。
一般的には、アルツハイマー病は認知症全体の6割以上であり、脳血管性、レビー小体型、前頭側頭型と続きます【図表】。
そして1割程度「治る認知症」も存在します(次回記事で解説)。認知症は治らないとの一般認識が広まっているために、対処が遅れ重度化してしまうことが問題となっています。
以下、おのおのの病気について概要を述べます。なお、各病気による認知症の特徴は、当院で原因疾患の診断に用いる質問票の項目から作成しています(山口晴保研究版)。ただしこれらすべてが出現するという意味ではないことを付け加えておきます。
①アルツハイマー型認知症
加齢によりアミロイドβ(老人斑)と呼ばれる変性したタンパク質が蓄積し、脳神経細胞を死滅させるために、脳萎縮が進む病気です。主症状および最初に出る症状がもの忘れであることや、他人に対して取り繕ったりごまかしたりすることが特徴です。
□置き忘れやしまい忘れ、日時が分からなくなるなどのもの忘れ
□お金など大切なものが見つからないと、盗られたと言う
□できないことに言い訳をする
□他人の前では取り繕う
②脳血管性認知症
脳梗塞や脳出血等の脳血管障害による発作を機に脳細胞が部分的に死滅し、機能低下を起こす病気。発作を起こしていなくても、脳内で細い血管が詰まり小さな梗塞が生じ、それが度重なることで認知症の引き金になる場合もあります。主な症状としては、身体の麻痺などの運動障害とともに記憶障害や思考力の低下、情緒不安定などが挙げられます。
アルツハイマー病では、病気の進行に伴い、認知機能全般にわたり、徐々に機能低下していくのに対し、脳血管性認知症では、もの忘れが顕著でも、判断力はしっかりしていたり、同じ事柄でもできる日とできない日があったりするなど、症状の出方が一定ではないときがあります。これは「まだら認知症」とも呼ばれ、脳梗塞や脳出血などで、脳内で障害されている場所が限局的であることから起こる、脳血管性認知症の特徴の一つといえます。
また、アルツハイマー病を併発しているケースも少なくなく、病名で明確に分けるのが難しいとされます。
□脳梗塞や脳出血の発作後に発症する(ただし、発作を起こしていなくても発症する場合もある)
□手足に麻痺がある
□しゃべるのが遅く、言葉が不明瞭
□飲み込みにくく、むせることがある
□動作が緩慢になる
□悲観的、やる気がない
□思考が鈍く、返答が遅い