(※写真はイメージです/PIXTA)

認知症の重症化を防ぐには、疑いが出てきたら早期診断・早期ケアを受けることが重要です。しかし、認知症は歳を重ねるごとに発症リスクが高くなっていく一方で、患者自身も家族も「ただの老化だろう」と思い込んでしまい、発見が遅れるケースが珍しくありません。そこで今回は、認知症の専門医・旭俊臣医師が「老化によるもの忘れ」と「認知症によるもの忘れ」の違いについて解説します。

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そもそも「記憶」とは?

そもそも記憶とはどんな機能なのか、そしてその機能が損なわれるとどうなるのかについて整理しておきたいと思います。

 

記憶とは、大きく3つの機能から成り立っています。一つは新しい事柄を脳内に入れるという「記銘」、一つはそれを保存しておく「保持」、そしてあとになって意識や行動のなかに出す「想起」です。

 

記憶力テストで一般にも比較的よく知られているものに、1枚の絵を一定時間見せ、さらに一定時間たってから口頭でその絵にあったものを答えてもらうテストがあります。絵のなかには例えば本、バット、じょうろ、フライパンといった、身近だがそれぞれ関連性のないものが複数描かれています。被験者は限られた時間でそれらを脳内に記銘し、絵が隠されたあとは保持をし、口頭で答える際には想起をすることになります。

 

記憶は、その性質によっても種類が分かれます。

 

例えば「2025年に大阪万博が開催される」という事柄は、これまでそれを知らなかった人にとっては新しい事柄であり、知識です。こうした知識や、戦時中に疎開先で苦労した、新婚旅行でハワイに行った、親を病気で亡くしたなど、その人の生活史のなかでエピソードとして残っている記憶を「陳述記憶」といいます。人に対して説明が可能な記憶ということです。

 

一方、自転車に乗ったり車を運転したり、家のカギを開けたりなどといった無意識にできる動作の記憶は「非陳述記憶」といいます。手続き記憶ともいい、これそのものは言語化せず動作で再現できるという意味でこのように呼ばれています。

 

よくスポーツや習い事などで「身体で覚えなさい」と言われることがありますが、これこそが非陳述記憶の特徴といえるでしょう。昔とった杵柄で、何十年と離れていてもいざやってみると意外とすんなりできてしまうものでもあります。

 

さらに、記憶は保持する時間によって「即時」「短期」「長期」に分けられます。

 

高齢者が、自分の幼少時代はこうだったと話すのは長期記憶から引き出しています。だいたい数週から数十年にわたり保持されている記憶です。それに対し短期は、数分から数日とごく最近の事柄です。例えば「おとといの夕飯は何を食べたか」は短期記憶です。即時記憶はさらに短く、数秒以内で想起するものを指します。

 

脳には分担があり、長期か短期かにより保持される場所が違います。日常的な出来事や勉強などを通して覚えた情報は、まず海馬に記銘されます。その後、必要なものや印象的なものだけが長期記憶として残り、大脳皮質に保持されます。

 

アルツハイマー病では、まず海馬が萎縮を始めるために、短期記憶がおぼつかなくなり、新しいことをうまく覚えられなくなってしまうのです。アルツハイマー型認知症の人が、昔のことはよく覚えているのに、ついさっきあったことはすぐ忘れてしまうのはこのためです。

次ページ「認知症」と「もの忘れ」…4つの決定的違い

※本連載は、旭俊臣氏の著書『増補改訂版 早期発見+早期ケアで怖くない隠れ認知症』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

増補改訂版 早期発見+早期ケアで怖くない隠れ認知症

増補改訂版 早期発見+早期ケアで怖くない隠れ認知症

旭 俊臣

幻冬舎メディアコンサルティング

近年、日本では高齢化に伴って認知症患者が増えています。罹患を疑われる高齢者やその家族の間では進行防止や早期のケアに対する関心も高まっていますが、本人の自覚もなく、家族も気づいていない「隠れ認知症」についてはあま…

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