ほとんど知られていないが…実は「治る認知症」がある【専門医が解説】

「認知症」とは認知機能が損なわれる症状の総称であり、病名ではありません。一口に認知症といっても、アルツハイマー病によって引き起こされる「アルツハイマー型認知症」、脳梗塞や脳出血などに起因する「脳血管性認知症」など、原因となる疾患によって種類はさまざま。そして、中には「治る認知症」もあるのです。ただし、認知症は治らないとの一般認識が広まっているために対処が遅れ、重度化してしまうことが問題になっているとのこと。認知症の専門医・旭俊臣医師が解説します。

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認知症で受診した人の約1割は「治る認知症」!?

認知症の症状が出る病気のなかには、アルツハイマー病やレビー小体型認知症などの現代の医学では残念ながら完治させることができない病気がある一方、早期に適切な治療を行えば症状が劇的に改善する「治る認知症」もあります。

 

代表的なものに、特発性正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、甲状腺機能低下症、ビタミンB12欠乏症があります。いずれも記憶力の低下や歩行障害、生活に支障をきたす混乱といった、進行したアルツハイマー病と同様の症状を呈するため混同されがちです。しかし認知症で受診した人の約1割が、これらの「治る認知症」であるとの報告もあります。

 

認知症は治らないと思い込んで放っておくと、治療のチャンスを逃してしまいます。画像検査ですぐに鑑別できる病気もあるため、これらの病気の存在が一般的に広く知られ、もしかしたらと思ったときに病院で診察を受けることができれば、治る認知症への対処ができるようになるでしょう。

「治る認知症」の種類

<特発性正常圧水頭症>

治る認知症の代表格です。何かの原因で脳と脊髄の表面を循環している脳脊髄液が滞留し、脳室が拡大する病気です。

 

主な自覚症状に「歩行障害」「尿失禁」とともに「認知症」も挙げられます。これらが急に進行した場合は、特発性正常圧水頭症が疑われます。

 

また、この病気はパーキンソン症候群を合併しやすくなるため、無表情になったり声が単調になったりするパーキンソニズムと呼ばれる状態になることも特徴的です。

 

特に、認知症の症状がそれほどでもないのに尿失禁がみられる場合は、特発性正常圧水頭症の疑いが強いといえます。しかし一方で、高齢女性の場合は特に腹圧性の尿失禁が起こりやすいこともあり、年のせいと見過ごされて発見が遅くなる恐れもあります。

 

とはいえ、症状だけでは診断を確定することはできず、画像検査を行う必要があります。CTで脳室の拡大が認められた場合、髄液を少量抜くことにより(タップテスト)、症状が軽減するケースも数多く見られます。

 

ただし発症してから診断までに時間が経ってしまうと、この治療を行っても圧迫を受けた脳が元に戻らず、症状の改善も見込めなくなってしまいます。

 

<慢性硬膜下血腫>

硬膜は頭蓋骨のすぐ内側にある膜で、頭部を打つなどの衝撃により、ここに血腫ができて脳を圧迫している状態を硬膜下血腫といいます。大事故でなくても、ちょっと頭をぶつけた程度でも血腫ができることがあります。

 

ぶつけた直後は異常がなくても、それからじわじわと出血が続いて1、2ヵ月ののちに血腫が形成され、脳を圧迫するようになります。そうすると意識が混濁したりろれつが回らなくなったりといった症状があらわれてきます。

 

高齢者は特に、加齢変化により脳と頭蓋骨の間のすき間が広くなっていることが多いため、血腫ができても症状が現れにくく、症状が出たときには血腫がかなり大きくなっていることもあります。

 

慢性硬膜下血腫もCT検査による画像で診断がつきます。治療は多くの場合、局所麻酔下で頭蓋骨に小さな孔をあけ、血腫を取り除く手術が行われます。血腫による圧迫がなくなれば認知症の症状は改善します。

 

ただし、特発性正常圧水頭症と同様、時間が経ってしまうと脳が元に戻らないので、早期発見が重要です。

 

<甲状腺機能低下症>

甲状腺は首の前側、のど仏のすぐ下にある小さな臓器で、私たちが活動するのに必要なエネルギーの調節に関わる甲状腺ホルモンを分泌しています。

 

甲状腺ホルモンは、脳下垂体からの指令を受けて分泌されますが、体内に増え過ぎると甲状腺機能亢進症、逆に不足すると甲状腺機能低下症となります。年齢にかかわらず女性に多い病気です。

 

このうち認知症のような症状が出やすいのは低下症ですが、低下症ではほかにもだるさやむくみなどの多彩な症状を呈します。それだけに診断が難しく、症状だけで低下症と診断することはできません。元気がない、疲れやすいといった症状に加えて忘れっぽくなった、ぼーっとしているなどの認知症にも見られる症状が出ている場合は、甲状腺機能低下症が特に疑われますので、かかりつけ医で甲状腺ホルモンの検査をしてもらうとよいでしょう。少量の採血による血液検査のみで分かります。

 

甲状腺機能低下症の場合、単独では顕著な認知症の症状は出にくく、むしろ、もともとアルツハイマー病や脳梗塞があるところに低下症が加わって、症状が悪化することが多くみられます。低下症と分かった場合には、飲み薬で甲状腺ホルモンを補充することで治療できます。

 

<ビタミンB12欠乏症>

ビタミンB12は別名コバラミンともいい、葉酸とともに血液成分である赤血球や細胞の遺伝物質であるDNAをつくるために必要なビタミンです。肉や魚、卵や乳製品などの動物性食品だけに含まれています。

 

体内に取り込まれたビタミンB12は、主に肝臓に貯えられます。数年分のストックがあるので通常は足りなくなることはありませんが、何らかの原因で胃の粘膜からのビタミンB12の吸収が悪くなると、貧血の状態になります。ビタミンB12が不足する原因として多いのは、胃がんなどによって行う胃の摘出手術です。これは年齢に関係なく起こります。

 

高齢者では、胃液の酸性度が低いために、食べたものに含まれるビタミンB12を取り出す機能が低下していることがあります。すると手足のしびれがとれない、白髪が急に増えた、何となく認知機能が低下してきたなどの症状が現れます。

 

血液検査でビタミンB12の値を調べればすぐに診断がつきますが、一般的な健康診断の血液検査では、この値を調べない場合が多いので注意しましょう。治療はビタミンB12の補充で、静脈注射を数回行うことで症状が改善していきます。

 

 

旭俊臣

旭神経内科リハビリテーション病院 院長

 

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旭神経内科リハビリテーション病院 院長 日本神経学会認定神経内科専門医
日本老年精神医学会専門医
日本認知症学会専門医
日本リハビリテーション医学会認定リハビリテーション科専門医

千葉大学医学部を卒業後、銚子市立病院精神科、松戸市立病院神経内科を経て、旭神経内科医院を設立、院長に就任。

介護老人保護施設栗ヶ沢デイホーム施設長、千葉県東葛北部地域リハビリテーション広域支援センター長を兼任。

2002年には、回復期リハビリテーション病棟を開設。2004年に旭神経内科リハビリテーション病院に改称。認知症、寝たきりになっても、住み慣れた地域で長く暮らせる街づくりに取り組んでいる。

日本認知症ケア学会平成26年度奨励賞、2016年第25回若月賞受賞。

著者紹介

連載専門医が徹底解説!「隠れ認知症」の早期発見・早期ケア

※本連載は、旭俊臣氏の著書『増補改訂版 早期発見+早期ケアで怖くない隠れ認知症』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

増補改訂版 早期発見+早期ケアで怖くない隠れ認知症

増補改訂版 早期発見+早期ケアで怖くない隠れ認知症

旭 俊臣

幻冬舎メディアコンサルティング

近年、日本では高齢化に伴って認知症患者が増えています。罹患を疑われる高齢者やその家族の間では進行防止や早期のケアに対する関心も高まっていますが、本人の自覚もなく、家族も気づいていない「隠れ認知症」についてはあま…

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