新しい「オンラインM&Aプラットフォーム」
M&Aの市場が拡大する中、日本でも政府が補助金などの制度を導入したり、民間のM&A仲介会社などがマッチングを行ったりするなど、事業承継をサポートする環境が充実しつつあります。私が代表を務める、株式会社M&Aナビもその一つです。
当社では「テクノロジーを活用し、すべての経営者に自由なM&A」というビジョンを掲げ、売り手と買い手のマッチングから交渉、最終契約までオンラインで完結するM&Aプラットフォーム『M&Aナビ』を提供しています。中小零細企業が売り手となるM&A・事業承継をテクノロジーの力でサポートするのが特徴で、匿名で案件情報を掲載すると、平均で26件の買い手候補が見つかります。
■中小企業の事業承継問題を解決するにはM&AのDXが必要不可欠
従来、M&Aは大手企業同士の間で行われ、その際はM&Aを専門とする仲介会社が間に入り、相手探しや売買価格の算定、投資対象となる企業や投資先の価値・リスクなどを調査するデューデリジェンス(DD)といったサポート業務を手がけています。彼らの存在があることでスムーズなM&Aが行われているのは、紛れもない事実でしょう。
ところが、M&A仲介会社を利用するには着手金や売買にかかる手数料がかかり、その額は数千万円になることもあります。滞りなくM&Aを遂行するには高度な専門知識が求められ、通常は経験豊富で高度なスキルを備えたプロフェッショナルが担当するので、手数料や報酬が高額になるのです。
こうした事情もあり、資金が限られる中小企業にとってM&A仲介会社を利用した事業承継は現実的ではなく、これまでは放置されたままでした。これも、大廃業時代の要因の一つとされています。
一方、近年はあらゆる分野でデジタル技術を活用してビジネスや生活を便利にするDX(デジタルトランスフォーメーション)が進められています。
例えば、かつて映画を観たり音楽を聴こうとすると、ソフトを買いに行ったり借りに行く必要がありましたが、いまは「Netflix」や「Spotify」などの配信サービスを利用すれば手軽・安価に手に入ります。「メルカリ」のおかげで、匿名のままアプリ上でフリーマーケットを利用することもできるようになりました。
こういった、DXをM&Aの世界にも導入したのが、M&Aプラットフォームです。これを利用することで事業の売り手・買い手はM&Aを低コストかつスピーディーに実行できるのが最大の特徴です。
ただし、M&Aプラットフォームがあっても、その存在に気付かなかったり、どう利用していいかわからなかったりする中小企業の経営者もいるでしょう。そこで私が注目しているのは、経営者にとって身近な存在である金融機関と協業したM&A・事業承継プラットフォームです。銀行などの担当者がM&Aプラットフォームを利用することでより良い事業承継の環境になり、私はそういった世界を実現したいと考えています。
本連載では、以前からある親族内承継からM&Aの基本について解説し、最新のサービスであるM&Aプラットフォームや、これを活用した新たな事業承継サポートの在り方を提案します。後継者不在の経営者の方にはM&Aを活用した事業承継が身近な選択肢だと理解していただき、金融機関の方には中小企業を取り巻く状況を再確認し、事業承継支援にも役立てていただきたいと考えています。
瀧田雄介
株式会社M&Aナビ 代表取締役社長