新型コロナ感染拡大が2年続き、日本経済の取り巻く環境は厳しいにもかかわらず、倒産件数は歴史的な低水準で推移しています。その一方で、中小企業の休廃業、解散が激増する“異常事態”が続いています。株式会社M&Aナビ社長の瀧田雄介氏が著書『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)で解説します。

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日本経済を支える中小企業が事業存続の危機

日本経済を支える中小企業は大きな岐路に立たされています。

 

現在、日本には約421万社があるとされ、そのうち大企業の数は約1万2000社で、全体に占める割合は約0.3%にしかすぎません。残りの99.7%(約419万8000社)は中小企業であり、国内の従業者数においても、約70%は中小企業に勤めています。つまりは、日本経済の支え手は彼らと言って差し支えありません。

 

中小企業の最大の特徴は、経営者がオーナーを兼ねるケースが多いということです。上場企業をはじめとする大企業では、自社株を保有するオーナーと経営に当たる代表取締役社長は別であることがほとんどです。大企業は所有と経営が分離されている一方で、中小企業は経営者やその親族が自社株の大半を保有しています。

 

瀧田雄介著『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より。
【図1】中小企業者の定義 瀧田雄介著『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より。

 

そのため、大企業のように株主の意向を聞きながら経営方針を決める必要はなく、オーナー=経営者の判断で各種施策を実行できるという「意思決定」の速さは、明らかにメリットでしょう。

また、大企業は多くの従業員を雇用し大規模な設備投資も行っていますから、社内調整や環境変化に対すアクションはどうしても遅くなりますし、何よりも雇用を維持するために巨額の売上を確保する必要があります。

他方、中小企業は設備や人材にかけられるリソースは限られますが、その分フットワークが軽く、小回りが利くのも特徴です。一方、働き方に関する課題は多く、生産性向上や業務効率化が迫られています。

このように、メリット・デメリットのある中小企業ですが、岐路に立たされているのはご存じでしょうか。

 

瀧田雄介著『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より。
【図2】大企業と中小企業 瀧田雄介著『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より。

 

■経営者の高齢化と後継者不在で事業存続できない

 

それは、このままの状況が続くと中小企業の休廃業や解散が増加する「大廃業時代」が到来するということです。背景にはあるのは、「経営者の高齢化」と「後継者不在」という大きな2つの課題です。

 

課題①:経営者の高齢化

下図は年代別に見た中小企業経営者の年齢分布です。なんと、2000年に「50~54歳」だったボリューム層は、15年に「65~69歳」となり、経営者年齢の高齢化が進んできたことがわかります。直近の20年では60歳~74歳に分散していますが、これは団塊の世代の経営者が事業承継や廃業で経営者を引退したと推測できます。

 

いずれにしても中小企業経営者はシニア層が多く、25年には平均引退年齢の70歳を迎える経営者数は約245万人にのぼるとも言われています。その時点でスムーズな事業承継ができるかというと厳しく、このままだと廃業に拍車がかかりかねません。

 

瀧田雄介著『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より。
【図3】中小企業経営者年齢分布 瀧田雄介著『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より。

 

次ページ休廃業・解散する中小企業は過去最多の理由

※本連載は、瀧田雄介氏の著書『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より一部を抜粋・再編集したものです。

中小企業向け 会社を守る事業承継

中小企業向け 会社を守る事業承継

瀧田 雄介

アルク

後継者がいなくても大丈夫!大事に育ててきた会社を100年先へつなぐ、これからの時代の「事業承継」を明らかにします。 日本経済を支える全国の中小企業は約419万社。そして今、その経営者の高齢化が心配されています。2025年…

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