(※画像はイメージです/PIXTA)

「事業承継・引継ぎ補助金」は、事業承継・引継ぎにともなう設備投資等のさまざまな取り組みを支援する補助金です。今後、多くの中小企業が事業承継の問題に直面することが見込まれるなか、ぜひとも活用を検討したい制度です。本記事では、2022年12月に成立した「2022年度第二次補正予算」において決まった内容を前提に、同制度をはじめとする企業財務に詳しい公認会計士・税理士の豊郷直輝氏が分かりやすく解説します。

目次
はじめに|事業承継・引継ぎ補助金とは
◆制度の概要
◆「2022年度第二次補正予算」により2023年度以降も行われることが決定
1. 経営革新事業
1.1. 創業支援型(Ⅰ型)
1.2. 経営者交代型(Ⅱ型)
1.3. M&A型(Ⅲ型)
2. 専門家活用事業
2.1. 買い手支援型(Ⅰ型)
2.2. 売り手支援型(Ⅱ型)
3. 廃業・再チャレンジ事業
3.1. 併用申請
3.2. 再チャレンジ申請
4. 申請のスケジュール
5. 申請の流れ
5.1. 経営革新事業の手続きのフロー
5.2. 専門家活用事業
5.3. 廃業・再チャレンジ事業
まとめ

はじめに|事業承継・引継ぎ補助金とは

はじめに|事業承継・引継ぎ補助金とは
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

◆制度の概要

「事業承継・引継ぎ補助金」は、事業承継をきっかけとして新しい取り組み等を行う中小企業や小規模事業者を支援するための補助金です。

 

事業承継の他にも、「事業再編」「事業統合」に伴い、資産、人、事業の付加価値といった「経営資源」の引き継ぎを行おうとする場合にも、利用することができます。

 

中小企業の経営者の高齢化は非常に深刻です。経営者年齢のピークは60~70代にある一方で、後継者がいない経営者は70代の経営者でも約40%に上っています。

 

そんななか、廃業によって技術や雇用が失われてしまうのを防ぐため、国の政策として、事業承継を活発化させることが掲げられています。

 

「事業承継・引継ぎ補助金」は、そんな事業承継に関連して発生する費用について、一定割合の補助を受けられる制度として注目されています。

 

「事業承継・引継ぎ補助金」には以下の3類型があります。

 

  1. 経営革新事業:事業承継などをきっかけに新たに経営革新に取り組むための経費を補助する
  2. 専門家活用事業:事業承継などを行う際のM&A専門家の費用等を補助する
  3. 廃業再チャレンジ事業:事業承継に伴う廃業や、新たなチャレンジを行うために行う既存事業の廃業を補助する

 

◆「2022年度第二次補正予算」により2023年度以降も行われることが決定

現状、2022年度当初予算における申請受付は既に終了しています。また、2021年度補正予算における「四次公募」の申請期限は2023年2月9日までであり、終了間近です。

 

ただし、2022年12月に成立した「2022年度第2次補正予算」において、2023年にも補助金の募集が行われることが決まりました。「補助上限額」「補助率」が引き上げられ、従来よりメリットが大きい制度となる予定です。

 

したがって、本記事では、以下、2022年12月に成立した「2022年度第二次補正予算」において決まった内容を前提として解説します。

1. 経営革新事業

経営革新事業
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

経営革新事業は、事業承継などをきっかけとして「新たな取り組み」を行う場合について、その経費の一部を補助する制度です。「新たな取組」とは、新たな「設備投資」や「販路開拓」などです。

 

対象は事業承継を実施した、あるいはこれから予定している中小企業者です。

 

「補助上限額」は原則として600万円「補助率」は2分の1~3分の2です。すなわち、補助を受けられる額の上限は、600万円、または補助の対象となる経費の3分の2のいずれか小さい金額ということです。

 

ただし、一定の賃上げを実施する場合、補助上限額が800万円に引き上げられます。

 

申請にあたっては、経営革新の取組の内容や、事業計画、および実行支援については認定支援機関の確認を受ける必要があります。

 

なお、経済産業省が公表した予算の事業概要資料において、事業終了後5年経過後の経常利益の上昇率を5%以上とすることが掲げられています。したがって、この目標に適うような計画を立てることが、審査を通過するうえでのポイントになると考えられます。

 

経営革新事業には「創業支援型」(Ⅰ型)「経営者交代型」(Ⅱ型)「M&A型」(Ⅲ型)の3つの類型があり、それぞれの類型ごとの申請要件は下記の通りです。

 

1.1. 創業支援型(Ⅰ型)

以下の2つをいずれもみたすこと

 

【創業支援型(Ⅰ型)の要件】

  1. 事業承継対象期間内における法人(中小企業者)設立、または個人事業主としての開業
  2. 創業にあたって、廃業を予定している者等から、株式譲渡、事業譲渡等により、有機的一体としての経営資源(設備、従業員、顧客等)の引き継ぎを受けること

※ 廃業に伴い店舗や設備のみを引き継ぐ等、個別の経営資源のみを引き継ぐ場合は対象外

 

1.2. 経営者交代型(Ⅱ型)

以下の2つをいずれもみたすこと

 

【経営者交代型(Ⅱ型)の要件】

  1. 親族内承継や従業員承継等の事業承継(事業再生を伴うものを含む)
  2. 産業競争力強化法に基づく認定市区町村又は認定連携創業支援事業者により特定創業支援事業を受ける者等、経営等に関して一定の実績や知識等を有している者であること

 

1.3. M&A型(Ⅲ型)

以下の2つをいずれもみたすこと

 

【M&A型(Ⅲ型)の要件】

1.事業再編・事業統合等のM&A(親族内承継を除く)

2.産業競争力強化法に基づく認定市区町村または認定連携創業支援事業者により特定創業支援事業を受ける者等、経営等に関して一定の実績や知識等を有している者であること

2. 専門家活用事業

専門家活用事業
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

専門家活用事業は、事業補助事業期間内(2022年12月16日まで)に、事業再編や事業統合(事業譲渡、株式譲渡等)のM&Aを行った中小企業者等を対象に、M&Aの際にM&A専門家に対して支払った費用等の一部が補助される制度です。

 

「補助上限額」は600万円「補助率」は2分の1~3分の2です。

すなわち、補助を受けられる上限は、600万円、または、補助対象となる費用の3分の2のいずれか小さい金額ということになります。

 

ただし、成約しなかった場合には、「補助上限額」が300万円に引き下げられるので、注意が必要です。

 

補助の対象となるためには、「M&A支援機関登録制度」に登録された専門家に依頼する必要があります。

 

なお、経済産業省が公表した予算の事業概要資料において、事業終了後5年経過後の経常利益の上昇率を5%以上とすることが掲げられています。したがって、この目標に適うような計画を立てることが、審査を通過するうえでのポイントになると考えられます。

 

専門家活用事業には、「買い手支援型」(Ⅰ型)「売り手支援型」(Ⅱ型)の2つの類型があり、類型ごとに補助対象が下記のように異なります。

 

2.1. 買い手支援型(Ⅰ型)

以下の2つをいずれもみたすこと

 

【買い手支援型(Ⅰ型)の要件】

  1. 事業再編・事業統合に伴い経営資源を譲り受けた後に、既存の事業と譲り受けた経営資源とのシナジー(相乗効果)を活かした経営革新等を行うことが見込まれること。
  2. 事業再編・事業統合に伴い経営資源を譲り受けた後に、地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業を行うことが見込まれること。

 

2.2. 売り手支援型(Ⅱ型)

以下をみたすこと

 

【売り手支援型(Ⅱ型)の要件】

  • 地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業等を行っており、事業再編・事業統合により、これらが第三者により継続されることが見込まれること。

3. 廃業・再チャレンジ事業

廃業・再チャレンジ事業
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

廃業・再チャレンジ事業は、既存事業の一部または全部を廃業する場合において、廃業にかかる費用の一部を補助する制度です。

 

「補助上限額」は150万円「補助率」は3分の2です。

すなわち、補助を受けられる上限額は、150万円または補助対象経費の3分の2のいずれか小さい金額です。

 

廃業・再チャレンジ事業には経営革新事業/専門家活用事業との「併用申請」と、廃業・再チャレンジ事業単独での申請(「再チャレンジ申請」)と2つの類型があり、類型ごとに補助対象が下記のように異なります。

 

3.1. 併用申請

廃業に伴って、下記のいずれかの取り組みを行ったことが認められること。

 

【併用申請の要件】※以下のいずれか

  • 事業承継後M&A後の新たな取り組み
  • M&Aによって他者から事業を譲り受ける。(全部譲渡・一部譲渡含む。)
  • M&Aによって他者に事業を譲り渡す。(全部譲渡・一部譲渡含む)

 

3.2. 再チャレンジ申請

廃業に伴って、下記の両方の取り組みを行ったことが認められること。

 

【再チャレンジ申請の要件】※以下の両方

  1. 2020年以降に売り手としてM&Aに着手し、6か月以上取り組んでいること
  2. 廃業後に、地域の新たな需要の創造または雇用の創出にも資する新たな活動に取り組むこと

 

廃業後の再チャレンジする事業に関する計画は、認定支援機関の確認を受ける必要があります。

4. 申請のスケジュール

申請のスケジュール
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

2022年度当初予算の事業承継・引継ぎ補助金の申請受付は既に終了しています。

 

また、2021年度補正予算の事業承継・引継ぎ補助金の四次公募の申請期限は2月9日までと終了間近となっております。

 

2022年12月2日に「2022年度第二次補正予算」が成立し、そのなかで、2023年度以降も「事業承継・引継ぎ補助金」の制度が行われることになりました。詳細が判明次第、改めてお伝えします。

5. 申請の流れ

申請の流れ
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

交付申請から補助金の交付、およびその後の手続きのフローは、それぞれ以下の通りです。

 

5.1. 経営革新事業の手続きのフロー

【事前準備等】

1. 認定経営革新等支援機関への経営相談

2. 認定経営革新等支援機関による確認書発行

 

【交付申請から交付決定に至る手続き】

3. 事務局への交付申請

4. 交付決定

 

【事業実施から補助金交付に至る手続き】

5. 事務局への状況報告

6. 事務局への 実績報告

7. 事務局からの確定通知

8. 事務局への補助金申請

9. 補助金交付

 

【補助金交付後の手続き】

11. 事務局への事業化状況報告等

※ 認定経営革新等支援機関によるアフターフォロー要

 

事業承継・引継ぎ補助金公式HPより
【図表1】「経営革新事業」に関する手続きフロー 事業承継・引継ぎ補助金公式HPより

 

5.2. 専門家活用事業

【交付申請から交付決定に至る手続き】

1. 事務局への交付申請

2. 交付決定

 

【事業実施から補助金交付に至る手続き】

3. 事務局への遂行状況報告

4. 事務局への実績報告

5. 事務局からの確定通知

6. 事務局への補助金申請

7. 補助金交付

 

【補助金交付後の手続き】

8. 事務局への後年報告

 

事業承継・引継ぎ補助金公式HPより
【図表2】「専門家活用事業」に関する手続きフロー 事業承継・引継ぎ補助金公式HPより

 

5.3. 廃業・再チャレンジ事業

【事前準備等】

1. 認定経営革新等支援機関への経営相談

2. 認定経営革新等支援機関による確認書発行

 

【交付申請から交付決定に至る手続き】

3. 事務局への交付申請

4. 交付決定

 

【事業実施から補助金交付に至る手続き】

5. 事務局への状況報告

6. 事務局への実績報告

7. 事務局からの確定通知

8. 事務局への補助金申請

9. 補助金交付

 

【補助金交付後の手続き】

10. 認定経営革新等支援機関から事務局への後年報告

※認定経営革新等支援機関によるアフターフォロー

 

事業承継・引継ぎ補助金公式HPより
【図表3】「廃業・再チャレンジ事業」に関する手続きフロー 事業承継・引継ぎ補助金公式HPより

まとめ

まとめ
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

2022年度当初予算の事業承継・引継ぎ補助金は、経営革新事業については申請71件のうち50件、専門家活用事業については申請199件のうち172件、廃業再チャレンジ事業については5件の併用申請のうち4件が交付決定されています。

 

M&Aが年間に4,000件ほどの件数があることを考えると、事業承継・引継ぎ補助金の利用はあまり活用されていないように見受けられます。

 

補助金の受給を目的としてM&Aを新しく行おうという企業は少ないかと思いますが、事業承継・引継ぎ補助金の申請対象に当てはまるM&Aを予定しているのであれば、ぜひ、事業承継・引継ぎ補助金の活用を検討することをおすすめします。

 

TOPへ