退陣を促すための経済制裁の効果は「いまひとつ」
このように整理すると、ウクライナが徹底抗戦姿勢を変えないとすれば、プーチン氏の退陣のみが究極の解決策となる。ロシア内部での厭戦気分の高まり、プーチン批判が相当に高じなければ政権の交代はなかなか起きないかもしれない。
EU、米国の対ロシア経済制裁、SWIFTからの排除、金融制裁、経済でのダメージが相当高まることが必要である。ではSWIFTからの排除などの経済制裁の効果はどれほどであろうか。
天然ガスの最大の顧客であるドイツの政策大転換はプーチン氏にとって痛手であるが、短期的に大きなダメージにはならないかもしれない。なぜならロシア最大のズベルバンク、第3位のガスプロムバンクは引き続きSWIFT排除の対象外になっており、引き続き石油ガス供給を続けることができるのである。
ルーブル暴落、インフレの帰趨が鍵に
むしろ、同時に打ち出されたロシア中銀と日米欧中銀との取引停止、ロシア外貨の凍結のほうが大きな影響を持つかもしれない。こうした事態に備え、ロシアは外貨準備を大幅に増やし、かつその中身を大きく分散化、制裁に堪えうる体制を整えてきたようである。
ロシアの保有する外貨準備高はウクライナ侵攻直前には6430億ドル(74兆円)と、ボトムの2015年に比べ7割も増加させていた。
昨年6月時点での内訳はユーロ32.3%、金21.7%、米ドル16.4%、人民元13.1%、英ポンド6.5%、日本円5.7%、カナダドル3.0%などとなっている。このなかで、すでに米、英、カナダ、欧州連合(EU)、日本がロシアの外貨準備を凍結しており、それはロシア全体の約6割にのぼる。
周到に金や人民元の比重を高めてきたが、それでは到底まにあわない。ルーブル大暴落に対応した外貨介入ができなくなり、大幅な金利引き上げを余儀なくされているが、それでもルーブルはウクライナ侵攻前の78ルーブル/ドルから117ルーブル/ドルへと5割の大暴落になっており、深刻なインフレが懸念される。
IIF(国際金融協会)はロシアのデフォルト(対外債務不履行)公算大としている。ロシアは10%を超える経済成長の落ち込みを余儀なくされるだろう。
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