(写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、武者リサーチが2022年2月7日に公開したレポートを転載したものです。

【関連記事】利上げが視野に入る2022年の米国株式市場の展望

「デジタル革命は人を不幸にする」と懸念されたワケ

デジタル革命が進行し、デジタルデバイドと称される格差が拡大してきた。高い技能を持つ労働者は生産性を高めるので高賃金を享受できるが、技術のない非熟練労働者は生産性が上がらず賃金上昇も遅れる。

 

加えてGAFAMに代表されるインターネットプラットフォーマーのような現代のリーディングカンパニーは、成長しても人を雇わず(固定資産)投資もしない。

 

かつてのリーディングカンパニーであったGMやGEはそうではなかった。企業が成長すれば大規模な設備投資を行い工場を拡張し、雇用を大幅に増やしてきた。そこで生み出された分厚い中間層が米国民主主義の担い手となってきた。

 

しかしGAFAMは投資と雇用を増やす代わりに、儲けをもっぱら配当や自社株買いで株主に還元する。すると株価が上がり、さらに富める人々を豊かにし格差を拡大させる。このようにしてデジタル革命は人を不幸にするのでは、という懸念が語られてきた。

 

[図表1]GAFAM5社のキャッシュフロー推移
[図表1]GAFAM5社のキャッシュフロー推移

「低スキル労働賃金の上昇」が格差を縮小

ところが今コロナ禍のもとで、それとは異なる格差縮小という現象が起きている。これまで等閑視(とうかんし)されていた低スキル労働の賃金が、急伸しているのだ。

 

管理職より現場労働者が、正規雇用よりパートタイマーが、男性より女性が、高スキル労働者より低スキル労働者が、中堅労働者より若年労働者が、2021年以降賃金上昇率を強めているのである。

 

セクター別の実質賃金の推移をみると、全体でみれば、製造業もサービス業もまだ賃金上昇傾向に入っていない。しかし細分類のセクターをみると運輸・倉庫や娯楽・エンタメ部門だけ急速に賃金が上昇している。

 

それらのセクターのなかでも非管理労働者、管理職以外の人つまり、トラックの運転手、あるいはレストランのウェイター・ウエイトレスなどの給料が大幅に跳ね上がっている。

 

他方で生産性の伸びがもっとも高く、これまで高賃金で高スキル労働の代表であった情報産業の実質賃金は、コロナ禍勃発以降大きく下落している。

 

デジタル革命、リモートワークで生産性が上がっているオフィスワークでは求人数があまり増えず、労働需給が緩慢で、賃金上昇が物価に追い付いていないのである。長らく期待されてきた賃金格差縮小が、コロナ禍の特殊事情において実現しているのである。

 

[図表2]米国セクター別実質賃金推移ー全労働者、平均時間給、(ドル)
[図表2]米国セクター別実質賃金推移ー全労働者、平均時間給(ドル)

 

[図表3]米国セクター別実質賃金推移ー非管理労働者、平均時間給(ドル)

[図表3]米国セクター別実質賃金推移ー非管理労働者、平均時間給(ドル)

 

2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>

 

注目のセミナー情報

​​【税金】11月27日(水)開催
~来年の手取り収入を増やす方法~
「富裕層を熟知した税理士」が考案する
2025年に向けて今やるべき『節税』×『資産形成』

 

【海外不動産】11月27日(水)開催
10年間「年10%」の利回り保証
Wyndham最上位クラス「DOLCE」第一期募集開始!

次ページ賃金格差縮小を支える「立役者」とは

本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録