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日本人に染みついている「消極的経済心理」
「潮が引いた時、誰が裸で泳いでいたかがわかる」、はカリスマ投資家W・バフェットの言葉であるが、コロナパンデミックは我々に意外な気付きを与えた。日本人の萎縮した経済心理が世界の常識からかけ離れているという事実である。
コロナ感染による健康被害は、感染者数や死者数を人口対比でみると、日本はアメリカ・イギリスの10分の1弱で先進国では最低である。しかしコロナ危機以降の経済の落ち込みと回復の遅れという経済被害では、日本はG7では最悪である。
この驚くべきギャップは、心理要因以外考えられないというのが、東大教授の渡辺努氏の分析である。パンデミック下においては、「コロナ感染を防衛したいという欲求」と、「経済活動を損ないたくないという欲求」の、相反する2つ欲求の葛藤が生まれるが、両者のバランスにおいて日本は世界の平均から大きくずれている。
それはとりもなおさず、日本においてアニマルスピリットが極端に棄損されているという事実である。
渡辺氏は近著「物価とは何か」(講談社)で、1960年代にIMFにおいて「世界には4つの国しかない、先進国と発展途上国、そして日本とアルゼンチンだ」というジョークが話題になったというエピソードを紹介している。
日本の戦後の高度成長とアルゼンチンの長期凋落は他に例がないので、この2国のデータはどんな分析でも外れ値になるという意味であったのであるが、驚くべきことに50年後の今日においても日本とアルゼンチンの世界平均値からの極端な乖離は別の形で続いている。
G20に参加している主要国のなかでは、日本は唯一のデフレ国であり、随一の高インフレ国がアルゼンチンである。日本はその異質性を知るべきである。