(※写真はイメージです/PIXTA)

慢性疾患を防ぐカギは「自然炎症の制御」にあります。自然炎症が継続的に体内に起こるきっかけは何なのか?という疑問についてはまだ解明されていない点も多くあります。しかし、外部から体内に入ってくる「環境毒素」が大きな原因の一つになっていることは分かっています。自然炎症を最低限に抑えるには、環境毒素を全身に回らせないことが重要です。そこで本稿では、環境毒素の防波堤とも言うべき「腸内環境」と「肝臓のデトックス機能」を高める方法について見ていきましょう。※本連載は、小西統合医療内科院長・小西康弘医師による書下ろしです。

「防波堤の機能」を高めるためには?

■環境毒素が「二重の防波堤」を超えるとどうなるのか?

腸管や肝臓のバリア機能を超えて、環境毒素が体内に入ってくると、どうなるのでしょうか?

 

侵入してきた環境毒素は身体の細胞を傷つけ、DAMP(※2)と呼ばれる物質が細胞から放出されます。DAMPは近年、感染症によらない慢性炎症(自然炎症)の原因になることが分かっており、免疫細胞を刺激して炎症性サイトカインを発生させ、体内に活性酸素を過剰に発生させます。過剰に発生した活性酸素はがんや動脈硬化などの原因となり、慢性疾患を起こすのです。

 

もちろんこういった流れは、私たちの身体に慢性炎症を起こす機序の一つに過ぎません。これ以外にも慢性炎症はいろいろな機序により起こります。しかし、このように慢性炎症が、周りの環境から入ってくる環境毒素と密接に関係していると知っておくことは、身体のバランスを根本的に整えていく上で非常に重要であると思います。

 

現代社会は、これまでの人類史の中では経験のないくらいたくさんの環境毒素に囲まれています。もはや、これらの環境毒素の影響を完全に免れて生活することは不可能であると言ってもいいでしょう。

 

一部には、これら環境毒素の危険性をやたらと強調して、不安や恐怖感をあおるような情報もたくさん見られます。しかし私は、必要以上に心配しなくてもいいと思っています。環境毒素の影響を受けないように、コントロールできることが何かを知り、それを制御すれば問題ないからです。

 

環境毒素が身体に入ってくる経路としては、他に皮膚や呼吸器も考えられます。しかし一番大きな影響を受けるのは消化器官からの侵入なのです。今回見てきたように、私たちの腸内環境には外から入ってきた毒素を防御したり解毒したりする機能があります。環境毒素の影響を最小限に抑えるには、防波堤である腸内環境や肝臓の機能を整えることが何よりも重要なのです。

 

※2 DAMP…damage-associated molecular pattern:傷害関連分子パターン。DAMPでは自身の細胞の一部が、寿命が来たり傷害を受けて分解されたりしたときのかけらが残って炎症を起こす原因になることが多い。詳細は【関連記事:「炎症」は身体の防御反応だが…「慢性疾患を起こす炎症がある」と分かってきた】を参照。

 

■「防波堤の機能」を高めるためにできること

まずは、第一の防波堤である腸内環境を整えることで、身体に入ってくる環境毒素の量を減らすことが一番重要です。次に、第二の防波堤である肝臓の解毒機能を整え、体内に蓄積される環境毒素を少しでも多く排出することが大切です。

 

ではどのようにすれば、この2つの防波堤の機能を整えることができるのでしょうか。

 

<①腸内環境を整える>

腸内環境を維持するためには、腸管内の常在菌(腸内フローラ)のバランスを整えることが何よりも重要です。近年では、腸内フローラの全遺伝子解析が行われるようになり(マイクロバイオーム)、さまざまな慢性疾患と密接に関連していることが指摘されています。

 

<②肝臓の解毒機能を整えるための栄養素をしっかりと摂る>

フェーズⅠを先に高めてしまうと、中間産物として発生する活性酸素が増え、かえって肝臓に負担をかけてしまうことがあります。肝臓の解毒機能を高める上では、まずはフェーズⅡの機能を高めて受け皿をしっかりと作ってから、フェーズⅠを高めるようにするのが良いです。

 

それぞれのフェーズを高めるために必要な栄養素は【図表】に示しています。

 

【図表】肝臓で行われる「解毒」のステップ(再掲)

 

身体の機能を高め整えるために、必要な栄養素をしっかりと補いましょうというのは、「分子栄養学」的なアプローチ方法で、メガビタミン療法とも言われます。

 

もちろん、それはそれで有効なアプローチなのですが、これらの栄養素をサプリメントの形で摂れば単純に問題が解決するというわけではありません。身体の土台を整えるためには、他にいくつかのアプローチが必要になる場合があります。単に潤滑油をたくさん補うだけではなくて、歯車の目詰まりを起こしている原因を取り除いてあげましょうというのが機能性医学的なアプローチです(分子栄養学のアプローチ方法と、機能性医学のアプローチ方法の違いについては【関連記事】を参照)。

 

 

どんなアプローチを行う場合でも腸内環境が整っていないことには、問題が解決されにくかったり、むしろ体調が悪化したりすることさえあります。

 

機能性医学の考えに則って、身体の土台を整えていく上では、腸内環境を整えることを軽視しては十分な効果が出にくいということは強調しておきたいです。

 

次回は、その大切な腸内環境に関連して、近年研究が進んでいる「マイクロバイオーム」について、もっと詳しく見ていきましょう。

 

 

小西 康弘

医療法人全人会 小西統合医療内科 院長

総合内科専門医、医学博士

 

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