健康 健康づくり
連載自己治癒力を高めるための機能性医学【第13回】

腸内フローラが「個人の体質・健康状態」を決めるという衝撃【医師が解説】

マイクロバイオータと解毒機能について

医師向け機能性医学慢性疾患腸内環境

腸内フローラが「個人の体質・健康状態」を決めるという衝撃【医師が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

工業化学物質や環境汚染物質といった「ゼノバイオティクス(環境毒素)」は、“慢性疾患に繋がる炎症”を起こす大きな一因です。環境毒素を体内に蓄積させないためには、腸内環境を整えること(=腸活)、肝臓のデトックス機能を高めることが重要です。今回は腸内環境に関連する知識として、近年研究が進んでいる「マイクロバイオータ」について詳しく見ていきましょう。※本連載は、小西統合医療内科院長・小西康弘医師による書下ろしです。

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最近よく「腸内フローラ」という言葉を聞くが…

私たちの腸内には約100兆個とも1000兆個とも言われる膨大な量の腸内細菌が存在しています。最近ではテレビCMでも「腸内フローラ」という言葉を聞かない日はないくらいです。この「腸内フローラ」は別な用語で「マイクロバイオータ」、日本語では「腸内細菌叢(そう)」と言われます。

 

近年、マイクロバイオータは、人間の身体に欠かせない重要な役割を果たすことが分かってきました。肝臓や腎臓に匹敵するくらいの「重要な臓器」の一つといっても過言ではありません。

 

今回の記事ではこの「マイクロバイオータ」が、どれほど私たちの健康に重要な役割を果たしているのか、特に腸管内に入ってくる環境毒素との相互反応について説明していきます。

マイクロバイオータとは?

■私たちが生存する上でなくてはならない「臓器」の一つ

「マイクロバイオータ」を正式に定義すると、「人体の内側や外側にいるあらゆる微生物の集合体」ということになります。皮膚や口腔内に存在する細菌叢も含まれるのですが、ここからの話は主に腸内に存在する細菌叢(つまり、腸内フローラ)の話です。

 

私たちの腸内に存在するマイクロバイオータは総重量が1.5〜2.0kgあり、脳の重量とほぼ変わりません。約4000種類、600〜1000兆個の腸内細菌が存在すると言われています。私たち人間の身体の細胞総数が約60〜100兆個なので、その10倍もあるのです。最新の研究から、果たす役割も徐々に解明されてきており、単なる「間借り人」ではなく、私たちが生存する上でなくてはならない「臓器」の一つであると捉えられるようになってきました。これらの働きを正確に知ることは、私たちの健康維持のために必須だと言ってもいいでしょう。

 

■マイクロバイオータの働き

では、どのようにしてマイクロバイオータの働きが解明されてきたのかを見ていくことにしましょう。マイクロバイオータの解明の歴史は、ヒトゲノム計画から始まります。これは、ヒトのゲノム(遺伝子)の全塩基配列を解析しようとするプロジェクトで、1990年に計画され、2003年に完成しました。ヒトゲノムの解析ができれば、あらゆる病気の原因となる遺伝子の異常が把握され、慢性疾患は克服されると期待されていました。

 

高等生物の頂点に位置するヒトのゲノムはどれほどたくさんあるのかといろいろ予想されましたが、結果として意味のあるゲノムは2万1000個しかなく、ミジンコのゲノム情報よりも少なかったのです。期待された「特定の病気を決めている遺伝子」もわずかしかなく、その結果は皆を失望させるものでした。

 

しかし、ゲノム解析技術の進歩は目を見張るものがあり、プロジェクトの新たな対象としてマイクロバイオータに白羽の矢が立ちました。そして、ヒトのマイクロバイオータの遺伝子情報を解明しようとするプロジェクトが始まったのです。このヒトマイクロバイオームプロジェクトは2012年に1次報告がされました。「マイクロバイオーム」とはマイクロバイオータの持つゲノム情報のことを意味します【図表】。

 

【図表】マイクロバイオータ、マイクロバイオームの違い

 

その結果は驚くべきものでした。マイクロバイオームの情報は440万個と、ヒトゲノムの200倍もあったのです。つまり、ヒトのゲノム情報はマイクロバイオームのたった0.5%しかないということです。

 

「ゲノム情報が多いのは分かったけれど、それがどういう意味を持つのか」と思われる方も多いでしょう。

 

ゲノム情報が解析されたということは、その遺伝子という「設計図」がどのようなタンパク質を作り出すかを知ることができるということです。タンパク質のアミノ酸配列が分かると、そのタンパク質がどのような3次元構造を持っているかということまで分かり、その役割まである程度推測できるようになります。

 

そして、ヒトゲノムの200倍もあるマイクロバイオームが解析されたことで、マイクロバイオータのさまざまな役割が、ある程度理解できるようになったのです。

 

マイクロバイオータの中で、どのような働きをしているのかを突き止められたものはまだ10数%で、それ以外はまだどういう働きをしているのかは分かっていません。それでも、以下のような働きをしていることが分かってきました(※1)

 

1. 栄養分の消化と吸収を助ける

2. 悪玉菌や有害ウイルス、寄生虫などが体内に入ってこないように防御する

3. 腸管内にある有害物質を解毒する

4. 腸管の免疫作用が過剰に働かないように調節する

5. 体内で働く重要な酵素やビタミン、神経伝達物質を作る

6. 内分泌臓器に作用してストレスを取り除く働きをする

7. 睡眠のレベルを高める

 

これほど多様な作用をしているマイクロバイオータですが、今回は体外から入ってきたゼノバイオティクス(Xenobiotics、環境毒素)に対してどのように作用するのかを見ていきましょう。

 

※1 A review on the effect of gut microbiota on metabolic diseases.

Arch Microbiol  2022 Feb 23;204(3):192.

医療法人全人会 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医
医学博士

京都大学医学部卒業。天理よろづ相談所病院・京都大学消化器内科などで内科全般を研修し、消化器内科を専門とする。内科医として約20年病院勤務。現在は、小西統合医療内科院長として、機能性医学を柱とした統合医療の立場から診療に携わっている。

【小西統合医療内科HP:https://www.konishi-clinic.com/

機能性医学に関する情報をFBなどで発信しています。
下のリンク集をご参照ください。
https://lit.link/doctorKonishi

著者紹介

連載自己治癒力を高めるための機能性医学

自己治癒力を高める医療 実践編

自己治癒力を高める医療 実践編

小西 康弘

創元社

病気や症状は突然現れるのではなく、それまでの過程に、自己治癒力を低下させるさまざまな原因が潜んでいます。だからこそ、対症療法ではなく根本原因にまで遡って治療を行うことが重要なのです。 本書では、全人的な治癒を…

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