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連載自己治癒力を高めるための機能性医学【第11回】

慢性疾患に繋がる「自然炎症」を抑えるには?「環境毒素」と「身体のデトックス力」を考える【医師が解説】

医師向け機能性医学慢性疾患活性酸素

慢性疾患に繋がる「自然炎症」を抑えるには?「環境毒素」と「身体のデトックス力」を考える【医師が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「炎症」とは、身体に存在しない“異物”を体外に排除しようとする正常な機能です。ところが慢性的に炎症が持続すると、活性酸素が過剰に体内で作られ、組織の機能低下、組織の崩壊、繊維化が起こります。慢性疾患を克服するカギはこの慢性炎症をいかに抑えるかということにかかっており、さらに言えば、非感染性の「自然炎症」を抑えることが重要です。本稿では、これまでに分かっている事実から「自然炎症を抑える方法」について考えていきましょう。※本連載は、小西統合医療内科院長・小西康弘医師による書下ろしです。

【関連記事】がん、動脈硬化などに繋がる「活性酸素」…なぜ発生するのか?

何が「自然炎症」を起こすのか?

医学の進歩により、さまざまな慢性疾患の原因として「慢性炎症」が関係していることが分かってきました。これまでは炎症といえば、感染をきっかけにするものと考えられていましたが、“感染以外の原因で起こる慢性炎症”があることが分かってきています。

 

これを「自然炎症」と言います。「感染」以外に炎症の原因があることは、これまでの常識を覆す衝撃的な事実でした。では、何がこのような「自然炎症」を起こすのでしょうか? まだまだ分かっていない部分が多く、すべてが解明されたわけではありません。

 

今回の記事ではこれまでに分かっている事実から、自然炎症を抑えるための方法を考えてみたいと思います。多少、著者の推論が含まれることをあらかじめご了承ください。

 

自然炎症を起こす原因としては、私たちの身体にある成分が、何らかの原因で崩壊し細胞外に放出されることがきっかけだと考えられています。これはDAMP (damage-associated molecular pattern:傷害関連分子パターン)と言われます。細胞の成分が、細胞外に漏れ出ることで、免疫細胞だけではなく、身体の細胞すべての「デンジャー・シグナル」のセンサーを刺激し、さまざまな炎症性サイトカインが放出されます。

 

これまでは炎症を起こす刺激に対して炎症性サイトカインを放出するのは免疫細胞だけだと考えられていました。しかし、通常の細胞も炎症性サイトカインを分泌するといった、これまでの常識を大きく塗り替える発見が続いているのです。

 

炎症性サイトカインは、細胞外に放出された成分(DAMP)を身体から除去しようとするために分泌されます。感染による急性炎症の場合は感染源が排除されれば炎症が治まるのですが、自然炎症の場合はDAMPがなくなることがないので、炎症が持続し、活性酸素が蓄積し続けることでさまざまな機能障害を起こすのです。

 

細胞に障害を与え、DAMPを発生させる原因の一つとして「環境毒素(ゼノバイオティクス)」が注目されています。環境中のさまざまな有害物質が体内に蓄積することで、DAMPを発生させるのです。

 

さらには、体内に入ってきた環境毒素が直接的にデンジャー・シグナルとして作用し、自然炎症を誘発することも分かってきています(図表1)。

 

[図表1]慢性疾患を発症するまでの流れ

 

自然炎症が継続的に体内に起こるきっかけは何なのかという疑問に対する答えは複雑で、単純なものではありません。まだまだ解明されていない点が多くあります。しかしそのきっかけの一つとして、外部から体内に入ってくる環境毒素が大きな原因になっていることは間違いないのです。

工業化学物質や環境汚染物質…「環境毒素」の影響

2005年、ワシントンの環境ワーキンググループは驚くべき研究結果を発表しました。アメリカの新生児の臍帯血(さいたいけつ)を調べたところ、平均して200種もの工業化学物質や環境汚染物質が発見され、全世界に衝撃を与えました。

 

私たち以降の世代は、こういった環境毒素に満たされた世界で生きていくことを余儀なくされています。これらの環境毒素が、私たちの身体に入ってくることによって、自然炎症を起こし、慢性疾患を起こす根本的原因になっている可能性は決して少なくはないように思われます。このように見てくると、普段は自分とはあまり関係のないように思える「環境問題」も、実は自分自身の健康に深く関係していることが分かるでしょう。それは自分自身だけではなく子供や孫にも大きな影響を与える可能性があるのです。

 

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<参考リンク>

●国立環境研究所ホームページ『環境化学物質による次世代・継世代影響』(https://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/59/12-13.html)

 

●佐藤洋『化学的環境は子どもの発達にどのような影響をおよぼすのか』(https://www.jstage.jst.go.jp/article/tits/15/4/15_4_4_40/_article/-char/ja/)

 

●環境省ホームページ『保健・化学物質対策 報告書』(https://www.env.go.jp/chemi/report/)

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これらの環境毒素が私たちの身体や健康にどのような影響を与えるのかについてはその全容はまだ分かっていません。人類がかつてこれほどの環境毒素に接した経験はないからです。このような環境で生き続けることが、将来にわたってどんな影響を与えるかは、現在進行中で結論が見えていないのです。

 

今までの連載でも炎症の要因については話してきましたが、どうやら環境毒素が体内に入ると、BAMPを引き起こし、自然炎症の一因となることが分かってきました(※1、2)

 

私たちが自分自身や子孫の健康を守るために大切なことは、今できる身体への対処を確実に行うことだと思います。

 

この記事では、身体のバランスを整え、これらの環境毒素から受ける影響を最小限に抑えるためにできることについて考えてみましょう。

 

※1 Danger-Associated Molecular Patterns (DAMPs): Molecular Triggers for Sterile Inflammation in the Liver

S. Mihm Int J Mol Sci 2018 Vol. 19 Issue 10

 

※2 Danger-Associated Molecular Patterns(DAMPs): the Derivatives and Triggers of Inflammation

S. Patel Curr Allergy Asthma Rep 2018 Vol. 18 Issue 11 Pages 63

医療法人全人会 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医
医学博士

京都大学医学部卒業。天理よろづ相談所病院・京都大学消化器内科などで内科全般を研修し、消化器内科を専門とする。内科医として約20年病院勤務。現在は、小西統合医療内科院長として、機能性医学を柱とした統合医療の立場から診療に携わっている。

【小西統合医療内科HP:https://www.konishi-clinic.com/

機能性医学に関する情報をFBなどで発信しています。
下のリンク集をご参照ください。
https://lit.link/doctorKonishi

著者紹介

連載自己治癒力を高めるための機能性医学

自己治癒力を高める医療 実践編

自己治癒力を高める医療 実践編

小西 康弘

創元社

病気や症状は突然現れるのではなく、それまでの過程に、自己治癒力を低下させるさまざまな原因が潜んでいます。だからこそ、対症療法ではなく根本原因にまで遡って治療を行うことが重要なのです。 本書では、全人的な治癒を…

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