「炎症」は身体の防御反応だが…「慢性疾患を起こす炎症がある」と分かってきた【医師が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「炎症」は、私たちの身体に備わる機能の1つです。一口に炎症と言っても、一時的に起こる「急性炎症」とずっと起こり続ける「慢性炎症」の2つがあります。近年、この「慢性炎症」が慢性疾患の発症と深く関係していることが分かってきました。そもそも炎症とは何か、急性炎症と慢性炎症との違いは何かということについて見ていきましょう。※本連載は、小西統合医療内科院長・小西康弘医師による書下ろしです。

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「炎症」とは、体内に侵入した異物を排除する機能

炎症とは、私たちの身体に存在しない異物を体外に排除しようとする、身体の正常な機能です。一番よくある例としては、病原菌やウイルスなどに対して反応する免疫反応の一部として起こります。まず、その場合何が起こっているのかについて見てみましょう。

免疫反応には2つある…「自然免疫」と「獲得免疫」

外から入ってきた細菌やウイルスに対して起こる免疫反応には、自然免疫と獲得免疫の2種類あります。

 

獲得免疫というのは、特定の細菌やウイルスに対しての抗体ができている状態です。一度侵入した細菌やウイルスの情報を記憶し、再び侵入されたときに対処できる抵抗力をつけるためのものです。最初に外敵が入ってきたときには働きません。ワクチンが一番わかりやすい例でしょう。ワクチンを接種することで、実際に感染する前に先回りして獲得免疫をつけることが可能です。

 

一方で、自然免疫というのは、初めて遭遇する不特定の細菌やウイルスに対しても作用します。私たちにもともと備わっている「自然抵抗力」と言い換えてもいいでしょう。

 

つまり、最初に外敵が入ってきたときには自然免疫で対抗し、2回目以降の侵入に備えて、獲得免疫の準備を整えるわけです。

外敵を発見し、炎症反応を起こす免疫細胞「マクロファージ」

自然免疫系に関連する免疫細胞の一つであるマクロファージの表面には、多種類の病原菌をパターン認識するセンサーが存在しています(TOLL様レセプター;TLRといいます)。TLRにはいくつもの種類があって、初めて遭遇する細菌やウイルスに対しても対抗することができます。獲得免疫である抗体が、特定の細菌やウイルスにしか対抗できないのと対照的です。

 

このTLRが細菌やウイルスを含むさまざまな病原体の構成成分を認識して、身体の免疫反応を発動させるのです。ちょうど、要所要所に備え付けられている防犯カメラのようなものだと考えていただければいいと思います。これらのセンサーが異物を感じると、免疫細胞内にシグナルが入り、炎症性サイトカインや抗ウイルス活性を持つインターフェロンなどが作られ、病原体排除のための炎症反応が進み始めます。炎症性サイトカインというのは、外敵の侵入を担当部署に知らせるアラームのようなものだと考えればいいです。

 

さらには、この免疫細胞から放出された炎症性サイトカインを感知して、異物の侵入した局所に、二次的に白血球など、他の炎症担当細胞が集まってきます。知らせを受けた消防車やパトカー、レスキュー隊が動員されるようなイメージです。

 

二次的に集まってきた炎症細胞からは別のサイトカインが放出され、局所の血流を増やしたり、異物をやっつけるための酵素や活性酸素が放出されたりして、異物が排除されるのです。

 

つまり、マクロファージの表面にあるTLRで細菌やウイルスの侵入が感知され、免疫反応の連鎖が次々に進み、最終的に異物を排除するわけです。

 

活性酸素というと、身体に良くないことばかりしていると思われがちですが、このように急性炎症の場合は、外敵をやっつけてくれる、なくてはならないものなのです。

 

しかし、なんらかのきっかけで活性酸素が過剰に体内で作られることで、わたしたちの身体自身を傷つけるようになることが問題なわけです。活性酸素については慢性疾患の発症に密接に関連しているので、そのときに改めて詳しく説明します。

急性炎症は、異物が排除されると治まる「一時的な反応」

外から侵入してきた異物が排除されると通常は炎症が治まってきます。急性炎症はこのように異物が排除されるまでの一時的な反応です。

 

急性炎症の程度が強いと、炎症性サイトカインが大量に放出され、炎症が過剰に起こった状態になる場合があります。これを「サイトカインストーム」と言います。たとえば新型コロナウイルスによる肺炎が重症化したときに起こっている状態です。新型コロナ肺炎の重症化は、ウイルスの悪性度が高いからというよりも、身体の炎症反応が過剰に働き過ぎたことによって起こる人間側の病態であるということができます。

「急性炎症の原因」と「慢性炎症の原因」は違う

では、慢性炎症の場合を見ていきましょう。慢性炎症は急性炎症とは何が違うのでしょうか? 慢性炎症では、誘因となる異物が持続的に体内に存在するため、炎症がずっと続きます。では、慢性炎症の原因となる、「持続的に体内に存在する物質」とは一体何なのでしょうか。

 

一般的に、炎症を誘発する要因としては2種類あります。

 

1つ目は外から入ってきた病原体に存在する分子で、PAMP(pathogen-associated molecular pattern:病原体関連分子パターン)といわれます。文字通り、外から侵入してきた細菌やウイルスの表面に出ているタンパク質を指します。

 

2つ目は自分自身の身体の細胞が壊れたときに放出される分子で、DAMP(damage-associated molecular pattern:傷害関連分子パターン)といわれます。DAMPでは、自分自身の身体の細胞の一部が、寿命が来たり傷害を受けて分解されたりしたときのかけらが残って炎症を起こす原因になることが多いのです。

 

前に説明した急性炎症の原因はPAMPです。

 

DAMPの場合は、原因となるタンパク質の放出が止まらない限り、持続して慢性炎症になる場合が多いです。その場合、外からの細菌やウイルスなどの異物の侵入がないのに、局所あるいは全身に持続的に炎症細胞が浸潤している状態になるわけです。

 

 

このようにDAMPを原因として炎症が慢性的に続く状態が慢性疾患へとつながっていくのです。そして、慢性炎症を制御するためには、主に、身体の中で持続的に発生するDAMPを防ぐことが重要であることが分かっていただけたと思います。

 

例外的なことはありますが、単純化すると、PAMP→急性炎症、DAMP→慢性炎症といっても間違いではないと思います。

 

 

小西 康弘

医療法人全人会 小西統合医療内科 院長

総合内科専門医、医学博士

医療法人全人会 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医
医学博士

京都大学医学部卒業。天理よろづ相談所病院・京都大学消化器内科などで内科全般を研修し、消化器内科を専門とする。内科医として約20年病院勤務。現在は、小西統合医療内科院長として、機能性医学を柱とした統合医療の立場から診療に携わっている。

【小西統合医療内科HP:https://www.konishi-clinic.com/

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著者紹介

連載自己治癒力を高めるための機能性医学

自己治癒力を高める医療 実践編

自己治癒力を高める医療 実践編

小西 康弘

創元社

病気や症状は突然現れるのではなく、それまでの過程に、自己治癒力を低下させるさまざまな原因が潜んでいます。だからこそ、対症療法ではなく根本原因にまで遡って治療を行うことが重要なのです。 本書では、全人的な治癒を…

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