アルツハイマー型認知症「薬を使わない」治療法4つ【現役医師が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

本記事では、現役医師である中村重信氏、梶川博氏が、家族や医療従事者が知っておきたい認知症の治療法について解説していきます。

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薬以外の治療法(ケア・リハビリテーション)

アルツハイマー病の治療薬としてわが国で認められているものはドネペジルなどの4剤のみで、これらもアルツハイマー病を完全に治癒させることはありません。

 

そのため、薬以外の治療法-ケア(介護)やリハビリテーション-が行われています。

 

アルツハイマー病の人に対するケアは4つの方向から行われています。行動を介するケア、感情・感覚を介するケア、認識を介するケア、刺激を介するケアの4種類です。これらのケアは経験的に行われてきましたが、認知症の人やその家族にとって有益であることが最近、徐々に証明されてきました。これからも引き続いてもっとケアの有効性を実証して行く必要があります。

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異常行動には「理由」がある…行動を介するケアとは?

認知症の人が異常行動を起こすには、それなりの理由や誘因があるように思われます。したがって、異常行動の理由や誘因を探し出して、それらを取り除く努力をすることが望まれます。

 

たとえば、認知症の人が間違いをした場合、間違いを指摘して叱ると急に怒り出すとか、落ち込んで食事をしなくなることがあります。その場合、間違いを指摘・叱責しないことが大切です。

 

多くの品数の食事を出すと、認知症の人が混乱して食事をしなくなることがあります。そのような場合には食事を簡単にして、1種類のみの食品にすることも勧められます。

 

尿失禁のある人には定期的な排尿の日課を作ることによって、尿失禁の回数を少なくできたこともあります。入浴をいやがったり、怒ったり、暴れるような認知症の人には風呂の形や位置を変えたり、ヘルパーが家にいる時間帯に入浴させたり、入浴時に音楽を流すなどの配慮もいかがでしょうか。

 

介護者が行動療法を学習して、興奮による破壊行為に応用したところ、破壊行為が減ったという報告もあります。上手く着衣できないので、怒り出し、いやがる人には衣服を簡略化して、間違いなくできるようにすると、素直に着脱するようになります。

 

このような行動療法をビデオ・テープに撮って、興奮をしているアルツハイマー病の人に見せたところ、知能テストの成績は薬物を投与した人より良くなったという報告もあります。とくに、行動療法は抗精神病薬のような副作用がないため、薬物治療に先だって試みるとよいでしょう。また、薬物治療をしていても行動療法を同時に併用することも大切です。

昔の思い出を話し合う…感情・感覚を介する治療法

回想法がよく行われています。通常、数人が集まって昔の思い出を話し合って、感情を高める試みです。

 

アルツハイマー病などは新しい記憶より古い記憶の方が比較的保たれるので、古い歌、古い写真や古い道具などを上手に使うこともお勧めです。現在もよく行われています。記憶力の回復には大きな効果はありませんが、認知症の人の感情が穏やかになり、介護拒否、興奮、暴力などを減らせるようです。同窓会なども一種の回想法です。

 

回想法以外に、バリデーション(確認療法)という感情に訴える治療法があります。認知症の人にコミュニケーションにより現実を受け入れてもらい、他人の経験を肯定的に受け止めさせます。それにより、本人の自尊心を保ち、外界からの逃避を減らせます。また、他人との接触を促進し、本人の潜在能力を刺激して問題解決を容易にします。その結果、独力で生活できる可能性もあります。

 

しかし、その根拠は乏しいのですが、この療法を受けた人はイキイキと幸せそうになり、行動異常などが減ることもあります。

 

感情を介する擬似刺激直面療法も利用されています。親しい人の声や昔の音や音楽の録音、古い風景などの録画を再生すると、興奮した認知症の人がおとなしくなったという報告があります。方法を一定にして、多人数での有効性を証明することが望まれます。

認知障害や異常行動を改善する…認識を介する治療法

認知症の人に情報を認識させ、認知障害や異常行動を改善する試みです。欧米では現実を把握させるリアリティーオリエンテーション(RO)が行われています。

 

ROは脳に外傷を受けた兵士のリハビリテーションから始まりました。時間・場所・対人関係などを認識させて、見当識を改善させます。フォルソム博士がこの方法を認知症の人にも応用し、効果を認めました。

 

認知症の人のおかれた状況を、本人に把握、理解させることにより、自己を規制して、自尊心を回復させます。この治療法の有効性を検討した試験が6施設より報告されています。それらの結果は公平な多くの報告を基にしたメタ解析でも効果が証明されました。

 

125例の認知症の人にROをしますと、認知機能も行動機能も有意に改善しました。デイサービスなどを利用する認知症の人に行われ、言語機能などが一時的に改善したとか、1年半で44%に有効であったと報告されています。

 

しかし、ROによりかえって怒り、欲求不満、抑うつが増したとの報告もあり注意が必要です。ケアにより認知症の人の症状が悪化した報告はほとんどありませんが、ROは例外的に副作用があります。そのため、ドイツや日本ではあまり行われていません。むしろ、認知症の人の間違った認識をそのまま受け入れるのが主流です。

 

技術訓練はリハビリテーションの一環として行われます。しかし、その効果は最近検討されて、有効なものもあるようです。また、認知症の人の職業継続も職種により有効なものもあります。

手芸、ゲーム、ダンス…刺激を介する精神・心理療法

グループで手芸・ゲーム・ペットと遊ぶなどレクリエーション、音楽・ダンス・美術といった刺激によって知能や行動の障害を良くしようという治療法です。これらは神経系を刺激して、神経機能を強化し、認知症の人の認知能力を引き出す可能性があります。日本でもデイサービスやデイケアで行われ、介護保険により利用する人が増えています。

 

デイサービスやデイケアの有効性は外国で検討されました。22施設入所者2867名を対象にデイサービスやケアを受けなかった人と比較されました。デイサービスやデイケアを受けた人では死亡が少なく、日常動作が保たれ、悪化の程度も軽度になると報告されています。

 

音楽療法がヨーロッパを中心に活発に行われ、日本でもよく行われています。音楽療法は食事、入浴中に現れる興奮、攻撃性、感情障害を鎮静する効果があります。

 

歩行など適度の運動やリハビリテーションが、徘徊、攻撃性、興奮を少なくするようです。リハビリテーションやマッサージを適切にすると孤独感が減って徘徊、攻撃性、興奮が低下することがあります。犬などのペットやITを備えた玩具が、認知症の人の孤立感や興奮性を減らすようです。

 

少数例ですが、明るい光が認知症の人の攻撃性、興奮や行動障害を軽くするともいわれています。

 

以上のケアは認知症の人に広く行われています。しかし、治療法の標準化は難しく、認知症の人の背景が一定せず、効果の評価尺度が複雑であるため、エビデンスに基づいた治療の有効性を証明することが困難です。しかし近年、評価法が改善され、定量的なアプローチも可能になったため、ケアに対する評価が高まり、ケアの社会への貢献度の証明が進んでいます。

ウィズコロナ時代、ケアのあり方が再検討されるように

2020年初めより、新型コロナウイルス感染症が全世界に拡大し、感染予防を目的として人と人との接触を自粛するとか規制することが世界中で行われています。その結果、認知症の人との交流が著しく減って、デイケアやデイサービスの利用も減少しています。

 

歌やダンスによる刺激を介したケアを避ける人も多くなりました。デイサービスそのものの活動も制限が多くなり、介護士にとって困難な問題が課せられています。

 

ウィズコロナの時代における刺激を介するケアのあり方が再検討されています。今のところ、オンラインによるケアやITを用いたケアの導入なども図られています。

 

しかし、認知症の人との絆をどのように保つかなど、ソフト面での配慮も必要になるようです。今後、さらに叡智をしぼって、取り組むべき課題と思われます。

 

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中村重信

京都市出身、1963年京都大学医学部卒。1990~2002年広島大学医学部内科学第三教授、2002年~広島大学名誉教授/洛和会京都新薬開発支援センター所長(現在顧問)。2005年~公益社団法人「認知症の人と家族の会」顧問。主な著書:ぼけの診療室(紀伊国屋書店、1990)、痴呆疾患の診療ガイドライン(ワールドプランニング、2003)、老年医学への招待(南山堂、2010)、私たちは認知症にどう立ち向かっていけばよいのだろうか(南山堂、2013)受賞:日本認知症ケア学会・読売認知症ケア賞「功労賞」(2017)

 

梶川博

広島県広島市出身。1957年修道高等学校卒業、1963年京都大学医学部卒。1964聖路加国際病院でインタ−ン修了、医師国家試験合格、アメリカ合衆国臨床医学留学のためのECFMG試験合格、1968年京都大学大学院修了(脳神経外科学)医学博士。1970年広島大学第二外科・脳神経外科(助手)、1975年大阪医科大学第一外科・脳神経外科(講師、助教授)。1976年ニューヨーク モンテフィオーレ病院神経病理学部門(平野朝雄教授)留学。1980年梶川脳神経外科病院(現医療法人翠清会・翠清会梶川病院、介護老人保健施設、地域包括支援センター)開設、現在会長。医学博士。1985年槇殿賞(広島医学会会頭表彰)、1996年日本医師会最高優功賞。日本脳神経外科学会認定専門医、日本脳卒中学会認定専門医、日本脳神経外科救急学会・日本神経学会・日本認知症学会会員、広島県難病指定医、広島県「もの忘れ・認知症相談医(オレンジドクター)、日本医師会&広島県医師会、日本医療法人協会&全日本病院協会広島県支部所属。メールアドレス hkajikawa@suiseikai.jp

 

 

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著者紹介

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本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『認知症の人が見る景色 正しい理解と寄り添う介護のために』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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