「働かないおじさん問題」の解決策…若手部下が「働かないおじさんの“上司”」を「動かす」方法

「働かないおじさん問題」の解決策…若手部下が「働かないおじさんの“上司”」を「動かす」方法
(※画像はイメージです/PIXTA)

「働かないおじさん問題」は社員本人だけの問題ではありません。「高い給料をもらっていながら、成果が出せない(出そうとしない)本人が悪い」「今まで放置してきた会社が悪い」「その状況に対して何も言わない(言えない)上司や人事が悪い」などと他責で済ませることなく、「自分の立場で、職場を良くするためにできることは無いか?」と自分事として取り組むほうが建設的ですし、市場価値の高い人材になれる確率も上がります。ここでは「若手社員ができるアプローチ」を中心に、「働かないおじさん問題」の解決策を見ていきましょう。

ボスマネジメントのポイント

■上司を「動かす」ために、「上司の視点」から提言

ボスマネジメントでは、「上司の視点で、抱えている課題やニーズをくみ取りながら提言をしていく」ことがポイントです。

 

自分(部下)の視点だけで「こういうことに困っています」「こうしてください」と要求するだけだと、複数の課題や緊急性の高い問題を抱えている上司にとって「動く動機付け」が持てず、優先順位が上がりません。

 

「上司としては、どんな問題が解決できると嬉しいのか」「組織を、どういう状態にしたいのか」「上司の上司は、私の上司にどんなことを期待しているのか」

 

など、「上司のニーズ(WILL)」を想像しながら、そこと「自分の希望(WILL)」を重ねる文脈を探してみましょう。

 

例えば、「働かないおじさん」直属の上司は当然、この問題を自らの課題として捉えているので、相談しやすい上司と言えるでしょう。

 

「自分としては、あの先輩にこうなってほしい」

「その状態は、上司にとっても望ましい」

「その状態は、先輩本人にとっても望ましい」

 

というゴールが共有できれば、「その実現に向けて、上司にやってほしいこと」「同僚として協力できること」「本人が努力すること」が議論できるようになります。

 

このように、相手の見ている視点や物語(ナラティブ)を意識しながら共通点や解決策を一緒に考えるコミュニケーションを、「ナラティブ・アプローチ」と呼び、その考え方を紹介した『他者と働く〜「わかりあえなさ」から始める組織論〜(NewsPicksパブリッシング)』は人事の領域で大きな話題になりました。

 

「相手(上司や働かないおじさん)にも、相手が見えている景色や物語がある」ということを意識するだけでも、組織内のコミュニケーションはずっと円滑になります。

 

■「上司=偉い」という先入観を捨てて「ロールプレイ」してみる

また、ボスマネジメントを使いながら「働かないおじさん問題」に対処する現実的な方法の一つとして、「役割分担(ロールプレイ)」が有効な場合があります。

 

残念ながら、上司はどんな無理難題でも対応できるスーパーマンではありません。「持ち味」というか「得意なスタイル」があります。そこを誤解して、「上司なんだから何でも解決すべき」と迫ってしまうと、上司自身が疲弊してしまいますし、あなたの意見を聴くのが面倒くさくなってきます。

 

部下としては、上司の「持ち味」を悪く言えば「道具」「ツール」として使いこなし、理想的な組織の状態を獲得する、ということになります。

 

部下も上司も間違いがちですが、「上司は偉い」「指示は常に上から」なわけではなく「上司は役割」「部下も役割」にすぎません。上意下達の指示命令ばかりでなく、「お互いに協力して問題を解決する」「部下が絵を描き、上司に演じてもらう」ことは不自然ではないです。

 

例えば、営業方法を変える必要があるベテラン社員に対して、新任の上司が頭ごなしに説得しても反発されるケースがありました。

 

この上司は「じっくり話を聴く」スタイルは得意でも、「エネルギッシュにチームを引っ張る」スタイルは得意ではありません。ベテラン社員も、「何で新参の上司に指導されなければいけないんだ」というプライドが邪魔をして、素直に受容しきれない様子です。

 

その際、部下から「自分は同僚の立場で、今度の会議で営業方法に関する相談を投げかけます。その際に、対象のベテラン社員にアドバイスを言ってもらい、望ましい発言があったら、上司が上手に拾って具体化させる方向に持っていってください。意見や議論が混乱し始めたら、その際は途中でサポートしてください」と、事前に上司と作戦を練ってから会議に臨む形を取りました。

 

その結果、ベテラン社員も「自分が相談されて言ったアドバイスを基に、営業方法を変えていくことになった」ため、気持ち良く協力してくれました。

 

 

このように上司とある意味で「結託する」のは、あざといように感じられるかもしれません。しかし、「それぞれが役割を演じきって成果を出す」ことが組織の存在する意味なので、対外的な活動だけでなく社内的な改善にチームプレイやそれぞれの持ち味を発揮することに、後ろめたさを覚える必要はないと考えています。

 

この事例でベテラン社員の言動が変化したのは、単に「上司と若手部下がうまく役割分担したから」だけではありません。

 

人間の根強い欲求である「承認欲求」を満たすことができた点が大きなポイントです。

 

 

難波 猛

マンパワーグループ株式会社 シニアコンサルタント

 

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※本連載は難波猛氏の著書『「働かないおじさん問題」のトリセツ』(アスコム)から一部を抜粋し、再編集したものです。

「働かないおじさん問題」のトリセツ

「働かないおじさん問題」のトリセツ

難波 猛

アスコム

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