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「働かないおじさん問題」を他人事にしてはいけない
■「デキる若手」ほどモチベーションを失い、人材流出に繋がるリスク
「働かないおじさん問題」の難しい点は、単に本人の成果が上がらない、というだけではありません。同僚や部下のモチベーションなど、「組織のモラル」に少なからず影響を与えてしまうことが、実は大きな問題なのです。
もしも、中高年のローパフォーマーに対して、経営者や上司が注意や指導をせず放置してしまうと、若手社員、特にハイパフォーマーのモチベーションを奪うことにも繋がります。
頑張っている若手社員の心理としては、明らかに成果が出ていないにもかかわらず、「自分より高いポジションや給与が与えられている」かつ「本人が改善の意欲や行動を示さない」かつ「その状態に対して、上司や組織が何もしない」のは納得いかないことでしょう。
こうした場合、「働かないおじさん」本人に対する不満以上に、その状態を放置している経営者や上司の態度への不満や不信が蓄積されていきます。
弊社では「エグジット・インタビュー」という、「会社を自己都合退職する社員へのインタビュー」というサービスを行っています。その際、「会社が期待していた、若手のホープ」が退職を選ぶ理由を聞くと、「給与の不満」以上に「成長できない危機感や停滞感」を口にする方が多いです。
「仲良し人事で、上司に気に入られたベテランが偉そうにしている」
「自分の上司は、技術や現場のことを何も分かっていないし勉強もしない」
「そういう上司やベテランを、経営陣も見てみぬふりをしている」
「こんな組織にいると、自分も将来同じようになってしまうことが怖い」
「結果、給与も安定もなくても成長できそうなスタートアップに転職する」
こうした気持ちを、最後に吐き出す若手を見てきました。
■「離職する若手・葛藤するだけの若手」も“働かないおじさん予備軍”?
こういう若手の葛藤や早期離職は、新卒一括採用・年功序列・終身雇用を前提としてきた日本型雇用システムの中で、多くの企業が抱えている状況かもしれません。
一義的には、こうした問題を解決するのは、組織をマネジメントする経営者・人事・上司の役割であると考えています。
しかし一方で、若手を含む同僚や部下が、単に問題の解決を経営者や上司任せにすることは反対です。問題の傍観者や批判者でい続けることは楽な事ですが、本人たちにとって中長期で決してプラスにならないと考えています。
「面倒な問題の解決を上に委ねる」「批判はするが行動はしない」「嫌になったら、すぐに会社を去る」というだけの人は、シビアな言い方ですが「自分で環境を改善するための変化や行動を起こしていない」点で、数年後には自身が「働かないおじさん」になってしまう危険性が高いようにも感じます。
必ずしも、「無理して会社に残れ」「上司の無能まで部下が背負え」というつもりは無いですが、「自分の立場で、職場を良くするためにできることは無いか?」という思考は、持っていた方が市場価値の高い人材になれる確率が上がります。
■「働かないおじさん問題」は「自分事」として取り組むべき問題
「働かないおじさん問題」は、相手本人だけでなく自分自身も働いている職場の問題です。
「せっかくだから、ベテラン社員が困っていることを解決してあげよう」
「自分たちが気持ちよく働ける職場環境を、自分たちで創造する経験を積もう」
「上司任せにせず自分にできることを探してみよう」
と、他責にせず自分ごととして取り組んでみると建設的ですし、「ポジションパワー(肩書の権限)ではなく組織マネジメント・メンバーマネジメント・ボスマネジメントを行う」貴重な経験になると思います。