(※画像はイメージです/PIXTA)

「働かないおじさん問題」が深刻化するにつれ、多くの企業から相談が寄せられるようになったという人事コンサルタント・難波猛氏。同氏は、多数の現場を見てきた経験から、「働かないおじさん」と呼ばれている社員でも、「不真面目でリアルに働かない人」はあまりいないと指摘します。では、実際に「働かないおじさん」に認定されているのは、どのような人材なのでしょうか?

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実際、言葉通りの「働かないおじさん」はあまりいない

「働かないおじさん」というと、どのような人物像を思い描くでしょうか?

 

●「バレないようにパソコンのゲームで一日中遊んでいる」

●「喫煙所でタバコを吸いながら雑談ばかりして、席にはほとんどいない」

●「朝から晩まで新聞や雑誌を隅から隅まで読んで過ごしている」

●「腕組みをして聴いたふりをしながら、会議で居眠りしている」

●「PCやOA機器が使えず、若い人に操作をお願いしている」

 

こういう「不真面目でリアルに働いてない人」のイメージは多分にマスコミ的な虚像になりつつあります。このような人たちは、実際のコンサルティングの現場では、そんなに多く存在しません。

 

かつてはこういう人もいた(今も若干はいる)のは確かでしょう。しかし、企業側も余裕がない状況に追い込まれた現在、こうした「働くことをボイコットしている人」に対しては、さすがに注意・指導・懲戒・退職勧奨などの対応がなされているため、改めて相談を受ける機会はあまりありません。

リアルな「働かないおじさん」は大きく分けて6タイプ

一方、実際に相談を受けることが多いのは、以下のような社員に関するものです(現実は複合的な要因で発生しますが、問題を整理するために類型化します)。

 

【タイプ① 期待している成果が出ない(成果のミスマッチ)】

期待未満の成果が続いてしまっている状態です。人間的には良い人で言われたことを真面目に取り組んでいるが、仕事に対する創意工夫や自主的な学習が足りず、単に与えられた業務をこなしている人などが当てはまることが多いです。

 

【タイプ② 仕事への意欲が不足している(意欲のミスマッチ)】

周囲から見て、やる気が無いと感じられる状態です。特に、役職定年や定年再雇用などで役割や処遇が変化した場合に起こりやすいです。「肩書や給与が下がったので、その分だけ働く」という意図的な場合もあれば、「第一線ではなくなったので、あまり目立つと後輩や若手の邪魔をしてしまう」という遠慮から、意欲が下がって見える場合もあります。

 

【タイプ③ 本人が良かれと思ってやっている言動がズレている(期待のミスマッチ)】

やる気はあるが、ピントが合っていない状態です。プレイヤーとしては優秀だったのに、管理職になって仕事を人に任せたりチームで成果を出したりすることができず、自分の力で解決しようとして部下の動きを止めてしまう人などが、このタイプに分類されます。

 

【タイプ④ 成功体験が邪魔して話が伝わらない(コミュニケーションコストの問題)】

以前はエース社員として活躍していたものの、考え方や意見が次第に最新の環境や手法と合わなくなり、そのことに本人が気付けない状態です。会社やチームが新しいことを始めようとすると過去の経験から否定的な意見を出して会議を白けさせたり新しいやり方に反発したりする人もいます。本人も上司も自分の成功体験に自信があるほど、コミュニケーションが感情的になったり対立的になったりする場合があります。

 

【タイプ⑤ 年上部下・年下上司が、お互い遠慮してしまう(心理的コストの問題)】

上司と部下の年齢や勤続年数が逆転している状態について、最近は相談が増えています。どちらの言い分も一理ある場合など、お互いに遠慮して最終的な行動や結論が中途半端になったりします。現在の上司にとって元上司だったり部署の大先輩だったりするケースもあるため、上司・部下双方がなかなか腹を割った話がしにくい場合があります。

 

【タイプ⑥ 改善や変化をするのに時間がかかる(時間的コストの問題)】

長年の行動が習慣化されていて、改善に時間がかかる、または改善してもすぐに元に戻ってしまう状態です。注意・指導を行った時はひとまず改善するのですが、本質的な納得や行動変容まで至っていない場合、時間が経つとまたもとに戻ってしまうため、忙しい上司ほど「この人には言っても無駄だ」と短絡的に判断しがちです。

「働かない」のではなく「働けない」ことが問題

これらの社員は、決して悪意を持って「働かない」わけではありません。また、勤労意欲がないわけでもなく、本人としては、真面目にコツコツやっているし、また、今までそれなりに頑張って働いてきた、成功してきたという自負を持ち合わせている人も多いでしょう。

 

本人としては意欲を持って働いているけれど、周囲の期待に対して十分な成果が出せなくなってしまっているため、「あの人は働いていない」という評価になってしまっているのです。つまり、「働かない」のではなく「働けない」のです。

 

本人に悪意があるわけではない分、企業側も対応に苦慮することが多いようです。

 

 

以上の話から分かるとおり、企業から活性化を依頼されるような「働かないおじさん」は、まったく働いていない(あるいは意図的にサボっている)わけではありません。働いてはいるものの、周囲の期待する役割と成果や行動にギャップが生じてしまっている。その原因は、本人ではなく、上司・会社・人事・同僚など周囲の関わり方にある場合もあります。

 

もちろん会社の期待に応えられていないのは、ミドルシニアに限った話ではなく、若手社員にも起こりえる現象です。

 

しかし、ミドルシニアの場合、若手より報酬が高く、より責任や影響力のあるポジションに就いているケースが多いため、「働かない」場合の企業の損失が(若手よりも)ずっと大きくなります。これが「『働かないおじさん』問題」が表面化してきた理由と考えられます。

 

 

難波 猛

マンパワーグループ株式会社 シニアコンサルタント

 

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※本連載は難波猛氏の著書『「働かないおじさん問題」のトリセツ』(アスコム)から一部を抜粋し、再編集したものです。

「働かないおじさん問題」のトリセツ

「働かないおじさん問題」のトリセツ

難波 猛

アスコム

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