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「働かないおじさん」を生み出す「3つの変化」
①経営環境の変化
経営合理化などを目的として「事業の選択と集中」が進むと、コア業務以外の事業や間接業務のアウトソーシングが行われることはよくあります。
その場合、該当業務に従事していた社員は「仕事がなくなる」という状態になります。日本において「仕事がなくなったから一方的に解雇」は法律上困難です。したがって、異動や転籍によって、企業からの期待役割が変わるのが一般的です。
また、コンペティターとの競争が激しくなると、企業は市場で生き残るため、どうしても戦略の先鋭化が求められます。
「より高い価値」、「より安く」、「より速く」、「より広く」、「より新しく」などの差別化を実践していく中で、社員に求められるスキルセットも変化していきます。
こうした環境の変化に際して、本人がキャッチアップできないと期待と成果にミスマッチが生じます。特に、一つの業務やスタイルに長く適応していたミドルシニア社員ほど、変化対応への負荷が高くなります。
②社会・法律の変化
社会や法律が変わることによっても、「働かないおじさん」が生まれてしまう可能性があります。例えば、過去のCMに謳われた24時間働くような、猛烈な勤務スタイルは、いまや違法性が高いでしょう。
「長く働ける体力や長時間労働を前提として成果を上げてきた」人は、それを生かせる場がなくなり、「限られた時間で成果を出す」スタイルが重視される時代になったといえます。
また、新型コロナウイルスの影響で適用する企業が増えたテレワーク・リモートワークも、上手く適応できる人・できない人が顕著に分かれました。「対面や出社を前提としたコミュニケーション」は難しくなり、「オンラインも対面も併用して適切なコミュニケーションを取り成果を出す」スタイルが今後も求められる可能性が高いです。
③働く期間の変化
少子高齢化が進む日本では、今後ますます長い期間、生涯現役で働き続けるよう、社会的圧力が強まることが予測されます。
他方、ビジネスの現場ではITのさらなる進歩により、すべての人が「新しい技術」にキャッチアップ・アップデートしていくことが求められるようになります。特に、いわゆるホワイトカラーとしての仕事人生を選ぶ場合、アプリケーションソフトやオンラインツールひとつ取っても、常に「便利な使い方」「最新のトレンド」を習得し続けることが求められます。
過去に類を見ないほど長く働く時代、自分自身をバージョンアップし続けることを諦めてしまった場合、数年で「働かないおじさん」となってしまう可能性があります。
今や「窓際族」として座れる「窓際」も消滅中
昔あった「窓際族」という言葉も、最近は耳にする機会がほぼなくなりました。決して好意的な表現ではありませんが、少なくとも以前の企業には「部下なしの閑職でも、そのままの肩書で雇用し続ける」余裕と体力があった裏返しかもしれません。
最近では、ミドルシニアの処遇に関しても、職務内容を明確に定義した「ジョブ型」の人事制度を適用する企業も増えています。
ジョブ型の場合、それぞれの専門性や強みを生かせる業務に特化できるので、経験豊富なミドルシニアが最前線で活躍できる可能性も十分考えられます。
一方では、余人を持って替え難い専門性や卓越したマネジメント能力を保有していない社員にとっては、「社内での居場所を、自分で勝ち取らないと生き残れない」というシビアさも含んでいます。
また、一時期問題になった「追い出し部屋」のように、社員から業務を取り上げる仕打ちは配転命令権の濫用やパワーハラスメントに該当し法律違反となります。
厚生労働省はパワーハラスメントを6類型に定義付けをしていますが、その中に「人間関係からの切り離し」「過小な要求」があります。
具体的には「隔離・仲間外し・無視」「業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと」とされています。
窓際や追い出し部屋に追いやって仕事をさせないのは、この「切り離し」「過小な要求」そのものであり、倫理的にも法律的にも許されない時代です。
イレギュラーやイリーガルな抜け道を考えるのではなく、企業側も本人側も「期待と成果にミスマッチが生じている状態」を真正面から受け止めて、真剣に解決策を模索することが必要だと考えています。
難波 猛
マンパワーグループ株式会社 シニアコンサルタント
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