(※写真はイメージです/PIXTA)

いくら経営者が努力しても業績が上がらず、気づけば何年も「踊り場」。競合他社は業績を伸ばしているのに、自社だけが成長軌道に乗れていない。社員が突然辞めていく…。状況を打開するために外部コンサルティングの活用という選択肢がありますが、一方で、いまひとつ活かしきれないという声もあります。そこには、組織改革に伴うジレンマがありました。中小企業コンサルのプロフェッショナルが解説します。

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中小企業の課題は「仕組み」を変えても解決しない

業績の伸び悩む中小企業が組織改革のコンサルタントを雇ったが、結局効果が上がらなかったという声をよく聞きます。

 

なぜ多くの中小企業は、組織改革コンサルティングの導入に失敗してしまうのでしょうか?

 

端的な失敗の原因としてまず挙げられるのは、「仕組み」をすぐに変えようとすることです。組織改革のコンサルティングとして特に多いのが、人事制度の改善提案です。

 

あるインターネットを中心とした旅行ツアーの企画販売会社では、3年連続減収減益が続いていました。経営者は、さまざまな手を尽くして組織改革を行ってきましたが、ここ数年、離職者の歯止めがきかず、営業責任者からは毎回同じような分析と改善策が提出されるばかりでした。困り切った経営者は、外部のコンサルティング会社に組織改革の依頼をしたのです。依頼を受けたコンサルタントがこの旅行会社を分析すると、現場社員から不満の声が噴出しており、その多くはマネジメントに対する不信感でした。

 

また、営業窓口の部署とバックヤードの部署間の仲も悪く、社内の連携はうまく取れていない状態でした。そこで、このコンサルタントは「360度型人事評価制度の導入」を提案します。

 

上司が部下を評価するだけでなく、部下からも上司を評価する。また、上下関係だけではなく、部署間でも評価する。現場の意見を吸い上げ、評価の公平性を保ち、社員全体の不満を解消していく。それによって社員のモチベーションが上がり、現場の問題が自然と解決されていく――。

 

確かに理屈は通っているようですが、人事評価制度(=仕組み)の改善提案を安易に受け入れたこの旅行会社の組織改革は見事に失敗しました。結局、新たな人事制度を導入した翌年も、業績が向上することはなかったのです。

 

このようなケースは非常に多く、何の成果も得られないまま、決して安くはないコンサルティングフィーを払うことになり、振り出しに戻るという最悪のパターンです。

本当の課題は「小さくて見えづらい」

このケースでの本当の課題は「現場社員から不満の声が上がっている」ことでも「マネジメントの問題」でもありませんでした。

 

実際、筆者がコンサルティングに入って現場のヒアリングを行ったところ、営業が中心のこの会社では、旅行ツアーの手配者やツアーオペレーターに経験者が少なく、受注したツアーのほとんどでクレームが起こっていました。

 

そのため、営業部とオペレーション部の仲は険悪で、リピート客が少ないために売上も常に新規顧客が中心だったのです。

 

しかし、問題はそこではありませんでした。さらにヒアリングを深くしていくと、営業部で設定されているKPI(Key performance indicator:重要業績評価指標)に、毎月の企画本数が設定されていました。ツアー商品数が膨大なものになっており、毎回新たな手配や案内が必要となっていたのです。

 

また、社内の力関係は営業部が強く、オペレーション部のミスによって顧客のクレームが起きていたため、オペレーション部の社員のモチベーションは下がる一方でした。

 

経験者がどんどん離職していき、新たに採用した社員は素人ばかりなので、ますますサービス品質が落ちていくという悪循環が起きていたのです。

 

こうした現場の問題は、実際に業績不振に悩むその企業の内部に入り込まなくては見えてきません。細かい社内の課題を把握するには、コンサルタントも一緒に現場で汗をかいてみないと見えないことも多いのです。

 

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本記事は、山中一浩著『驚くほど業績が上がる 中小企業のための「コンサルティング」活用術』(GMC)を抜粋・再編集したものです。

驚くほど業績が上がる 中小企業のための「コンサルティング」活用術

驚くほど業績が上がる 中小企業のための「コンサルティング」活用術

山中 一浩

幻冬舎MC

会社を成長させるには、販売網や顧客基盤の拡大、事業の多角化、また優秀な人材の確保と定着など、さまざまな課題を解決していくことが必要です。 特に中堅・中小企業では、経営者自らが先頭に立って、業績向上の取り組みを…

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