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介護の基本は、信じ、待ち、許すこと
私に介護のことをいろいろ教えてくれた先輩は、介護の基本は、「信じ」「待ち」「許す」ことだと説明してくれました。要介護者に対し、できると信じること、そして、できるまで待ってあげること、さらに、たとえ、できなかったとしても許してあげること。これが、介護の基本だ、と。
入居者の家族と老人ホームとの関係も同じです。老人ホーム側に対し、リクエストを言うのはいいのですが、無理なリクエストであるという自覚を持った上で、「信じ」「待ち」、そして、たとえ、できなくても「許す」という気持ちが重要だと思います。
なぜなら、多くの家族がホーム側に無理難題を言う理由は、実はホーム側に対する注文ではなく、親をホーム送りにしてしまった自分自身に対する「いら立ち」や「ふがいなさ」が原因であることが多いからです。
これだけ無理なリクエストをしてホームに納得させた、という行為をもって、自身のふがいなさを帳消しにしたい、という気持ちから、無理難題を言っているのだと私は判断しています。
したがって、私は、老人ホームの介護看護職員に対し、家族が無理難題を言っている時は、「その人たちは今、親孝行をしている真最中なのだから、黙って聞いてあげてください」と言っています。
間違っても、そのような時に「だったら出て行ってください。ほかのホームがたくさんあるじゃないですか」などとは、けっして言わないでくださいね、と。これを言ったら、無理難題を言っている家族の立つ瀬がなくなりますから。
しかし、家族のこの努力は間違いなのです。このようなことで、努力をするべきではありません。本当に努力をするところは、入居した後ではなく、家族は入居前のホーム選定で、もっと努力をしなければならないのです。