(※写真はイメージです/PIXTA)

不動産価格の上昇やコロナ禍での様々な影響に、多くの収益不動産オーナーが頭を抱えています。ここでは収益不動産を守るために意識したい「走攻守」について、株式会社アレース・ファミリーオフィス代表取締役の江幡吉昭氏が解説していきます。

収益不動産の経営に、コロナが与えた「恐ろしい影響」

そして第二の難問は、収益不動産の走攻守の「攻」にあたる部分です。

 

これは賃貸ワンルームが飽和状況になっているという問題です。

 

都内に住むBさんは、木造アパートを東急線沿線で複数経営しています。このアパートは某私立大学付近の高級住宅街にあります。昨今の相続税の節税ブームに乗っかり、この駅周辺にも多くのワンルームの木造アパートが建てられていました。

 

ワンルームを建てる理由は、戸数がファミリータイプより多く取れて合計の賃料が多くなるためです。こうした背景から、首都圏ではワンルームの飽和状態が起きています。

 

そこへコロナ禍が襲ってきました。コロナ禍で一人暮らしをやめ、自宅通学に切り替える学生入居者が増えたのに伴って、空室も増えてきてしまいました。

 

実際、住民基本台帳人口移動報告によると、東京23区は転出超過(東京から出て行った人の方が多い状態)になっています。Bさんがアパートを所有するこの住宅地も、ここ10年以上は空室がなかったものの、コロナで空室が目立つようになってきました。

 

Bさんの友人のオーナーたちも「学生がたくさん入居してくれるから大丈夫」と考え、節税目的で建設したのに、新築で入った入居者が一巡しだしてからは空室が増えてきたと口々に言っています。

 

さて、収益不動産の走攻守における「守」はなんでしょうか。これはまだ表面化していませんが、借入金の問題です。

 

今までは全期間変動など、なるべく金利の安い変動金利でローンを組む不動産経営者の方が少なくなかったのですが、今後は変動金利であっても「金利が必ず安い」という保証はありません。

 

現時点では日銀が長期金利をコントロールしているため、金利上昇について特に気にする必要はありません。しかし欧米発のインフレによって、海外では金利が上昇し始めています。

 

現時点ではなかなか先を見通せないものの、30年続いたデフレが収束する可能性もゼロではなく、「ファイナンスに気を配る時代に入りつつある」と言えそうです。

次ページ「借入したほうが節税になるんでしょ?」という誤解

本連載に記載されているデータおよび各種制度の情報はいずれも執筆時点のものであり(2022年2月)、今後変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。

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