日本で「Cash is Kingの時代が終わった」悲しい理由
2014年のベストセラー、『21世紀の資本』を覚えているでしょうか。
フランスの経済学者トマ・ピケティの著書であり、出版当時、日本でもかなり話題になりました。筆者も手に取ってみたところ、かなり分厚い学術書で、読むのに骨の折れる一冊だったことを記憶しています。
今回は、この本をテーマに「Cash is King(キャッシュ イズ キング)の時代が終わったのでは?」という点について解説していきます。
1.トマ・ピケティの言う「r>g」とは?
『21世紀の資本』のテーマは「r>g」という不等式です。rは資本収益率(投資のリターンと言ってもいいと思います)、gは経済成長率(国民の所得の伸び率と置き換えられます)を指しています。
r>gとは、資本収益率>経済成長率であり、「資産運用で得られる富は労働によって得られる富よりも成長が早い」ということです。つまり、運用資産を持っている人はより裕福になっていく一方、労働だけでは裕福になれないことを意味してます。
直近では、岸田文雄首相が自民党総裁選の際「金融所得課税を20%から30%に引き上げる」と言っていました。これは上記のような格差是正を意識したものと推測されます。ピケティはこの問題の解決策について、rの定義を広げて述べているのですが、今回は割愛します。
さて、r>gの話に戻ります。
皆さんご存じのとおり、日本は、経済が約30年にわたって成長をしない世の中となってしまいました。ここで一人当たりGDPの推移を見てみましょう。
2.日本は成長しているのか
1990年→2005年→2020年と15年ごとの推移です(単位はUSドル)。
日本:25,895ドル(8位)→37,819ドル(16位)→40,088ドル(24位)
日本はこの30年間で、GDP自体は徐々に増加していますが、順位を見ると大きく後退しているのがわかります。
一方のアメリカは
アメリカ:23,847ドル(10位)→44,034ドル(9位)→63,358ドル(5位)
と、30年で一人当たりGDPが2.6倍にもなっています。1990年は日本のほうが一人当たりGDPが高かったものの、大きく差をつけられてしまいました。
最後に中国を見ていきましょう。
中国:346ドル(134位)→1,751ドル(122位)→10,511ドル(62位)
中国の場合は30年間で30倍にもなっています。
相対的にみて、日本が成長していないことがよく理解できますね。このような国に居住している我々には、どうしてもr>gの不等式が当てはまってしまうのです。
日本では、「利子が付かないならタンスにでも置いておこう」と、ただ貯蓄する時代が続いていました。実際、銀行のスーパー定期は1年の利率が0.002%です。1,000万円定期に入れても「1年後の利息は200円。税金を引いたら160円」です。500ミリリットルのペットボトルのお茶が買える程度の利息しか付きません。