“おまえも医者になれ”…英才教育を受けたマサキさんの「挫折」
育ってきた環境を「当たり前」と思い込んで大人になると、あとから同世代の周囲と同レベルの生活ができていないことに気がつき、自身の世間知らずを思い知らされることがあります。
気づいてから身の丈に合った生活に修正できればいいものの、修正が難しく、“あとのまつり”になってしまうことも……。
先祖代々資産家で開業医というエリート一家に生まれた大西マサキさん(仮名・現在53歳)。マサキさんの曾祖父も父も医者で、地元で評判のいい開業医です。マサキさんも幼いころから「おまえも将来は医者になれ」といわれ、幼少期から英才教育を受けてきました。
第一関門ともいえる中学受験を突破し、難関の中高一貫校に入ったマサキさんでしたが、入学してみると自分より優秀な同級生が大勢おり、自信を喪失してしまいます。マサキさんにとって、初めての挫折でした。
そんなマサキさんとは裏腹に、親は潤沢な教育費のもとで評判のいい家庭教師をつけ、「医学部合格」のために全力を注ぎます。学年が上がるにつれ、“無気力状態”となったマサキさんをどうにか合格させようと、両親はあれこれ手を尽くしたそうです。
しかし、残念ながら医学部進学は叶わず、医師の道を断念することに。一浪したマサキさんは翌年、有名私立大学に進学しました。
マサキさんの父、ハジメさん(仮名:現在82歳)は、医者になれなかった息子に一度は落胆したものの、「彼なりの人生を切り拓いてくれればいい。後継ぎがいなくなってしまったのは残念だが……自分の代で閉院することにしよう」と考え直し、息子の人生を見守る決意をしました。
息子を医者にするためにあらゆる教育を施してきたために、マサキさんの高校卒業までにかかった教育費は1,800万円程度です。しかし、現役の医師であるハジメさんの年収は、一般的な会社員の数倍あり、大西家には代々受け継いだ資産もあったため、それほど経済的なダメージは感じていませんでした。
この先の大学教育に必要な費用を800万円程度と見込んだとしても、金銭的な問題はないと考えていたそうです。
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